食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、国内で生産された分がどれだけを占めるかを示す割合です。国の食卓をどこまで自分たちの生産でまかなえているかを測る指標で、カロリーベースと生産額ベースという2つの計算方法があります。
食料危機や食品の値上がりのニュースで目にすることの多い言葉ですが、毎日の買い物や献立ともつながっています。この記事では、2つの計算方法の違いと、気候変動や食品ロスとの関係、暮らしの中でできる選び方を解説します。
食料自給率とは
食料自給率とは、国内で食べられている食料のうち、国内で生産されたものが占める割合を表す指標です。「国内の生産量÷国内の消費量」という考え方で、国の食料供給をどれだけ自前でまかなえているかを測ります。お米や小麦など品目ごとに見る「品目別自給率」と、食料全体をまとめて見る「総合食料自給率」があり、ニュースで「日本の食料自給率」と言うときは、多くの場合、総合食料自給率を指しています。最新の数値は農林水産省が毎年公表しています。日本では、野菜や畜産物の金額が反映される生産額ベースの方が、カロリーベースより高く出る傾向があります。
総合食料自給率を出すには、さまざまな食料を同じ物差しにそろえなければなりません。お米とキャベツと牛肉を重さで足し合わせても、食卓の実態は見えてこないためです。そこで、熱量(カロリー)でそろえる「カロリーベース」と、金額でそろえる「生産額ベース」の2つの計算方法が使われています。
カロリーベースと生産額ベースの違い
カロリーベースは、国民が1日に摂るエネルギーのうち、国産の食料から得ているエネルギーの割合です。生きるために必要な熱量をどれだけ国内で確保できているかが分かるので、もしものときの備えを考えるための数字です。
生産額ベースは、国内で消費される食料の金額のうち、国内で生産された分の金額の割合です。カロリーは低くても価値の高い野菜や果物の生産がしっかり反映されるので、農業の経済的な力を見るのに向いています。
同じ国の食卓でも、どちらの物差しを使うかで数字は大きく変わります。たとえば野菜を国内でたくさん育てても、野菜はカロリーが低いのでカロリーベースの数字はあまり上がりませんが、生産額ベースでは存在感が大きくなります。2つの違いは次のとおりです。
| 項目 | カロリーベース | 生産額ベース |
|---|---|---|
| そろえる物差し | 熱量(カロリー) | 金額 |
| 分かること | 生きるのに必要なエネルギーをどれだけ国内でまかなえているか | 食料の経済的な価値のうち、どれだけを国内で生み出しているか |
| 大きく反映される食材 | お米、小麦、油脂、砂糖など熱量の高いもの | 野菜、果物、畜産物など単価の高いもの |
| 主な使われ方 | 非常時の備え、食料安全保障の議論 | 農業・食品産業の力を見るとき |
輸入したえさで育った肉や卵の扱い
国内の牧場で育った牛や豚、鶏の肉、卵や牛乳でも、えさ(飼料)を輸入に頼っている分は、まるごと国産とは数えません。カロリーベースでも生産額ベースでも、輸入した飼料の分を差し引いて計算します。えさが海外から届かなければ家畜を育て続けられないので、えさまで含めて国内でどれだけまかなえるかを見ているのです。
食料安全保障との違い
食料安全保障とは、すべての人が、いつでも、栄養のある食べ物を十分に手に入れられる状態を保つという考え方です。食料自給率は、その状態を考えるための指標のひとつで、イコールではありません。国内の生産に加えて、安定した輸入先や備蓄、家庭まで食べ物を届ける物流がそろって、はじめて食料安全保障が成り立ちます。
食料自給率が注目される理由
輸入に頼る食卓は、海外の出来事の影響を受けやすい
日本の食卓には、パンや麺になる小麦、豆腐やしょうゆになる大豆、家畜のえさになるとうもろこしなど、輸入に頼る食材がたくさん並んでいます。産地の不作、輸送の混乱、為替の変動などが起きると、輸入品の量や価格が揺らぎ、スーパーでの値上がりとして家計に届きます。自給率がたびたび話題になるのは、こうした海外の出来事による影響の受けやすさを表す数字だからです。
気候変動が食べ物の産地を揺らす
猛暑や干ばつ、大雨などの異常気象は、作物の収量や品質に直接影響します。気候変動でこうした極端な天候が増えると、海外の大産地の不作が国際価格に跳ね返る場面も増えていきます。とはいえ、国内の農業も天候の影響を受けるため、自給率を上げればそれで安心というわけではありません。国内の生産を守りながら、調達先を分散させておくことも欠かせません。
運ぶ距離も気候変動とつながっています。食べ物の重さに輸送距離を掛けた「フードマイレージ」は、遠くから運ばれてくる食べ物ほど大きくなり、そのぶん輸送で使うエネルギーやCO2の排出も増えていきます。
食料自給率と食品ロスのつながり
多くの食料を輸入しながら、その一部を食べきれずに捨ててしまうと、海外で作物を育てるのに使われた土地や水、運ぶためのエネルギーまで無駄にしてしまいます。家庭で買いすぎた野菜が冷蔵庫の奥で傷んでしまったり、お店で売れ残りが出たり、お正月のおせちのような行事食が時期を過ぎて行き場を失ったりと、食べ物が余ってしまう場面は暮らしのあちこちにあります。季節の食べ物を捨てずに生かす例として、おせちの食品ロスを減らす取り組みも紹介しています。
食品ロスを減らすことは、限られた食べ物を必要な人のもとへ届け、作られた食べ物を最後まで生かすことでもあります。世界の食料問題を考えるきっかけとして、世界食料デーの用語解説もあわせてご覧ください。
暮らしの中の食料自給率
食料自給率は国全体の数字ですが、その中身は一人ひとりの買い物と献立の積み重ねです。無理なく続けられる選び方を3つ紹介します。
旬の国産食材や地域の食材を選ぶ
住んでいる地域で採れたものをその地域で食べる「地産地消」は、国内の生産者を支え、運ぶ距離も短くできる選び方です。旬の野菜や果物は、季節に合った環境で育つぶん、ハウスを温めるためのエネルギーも少なく済みます。直売所や商店街の八百屋さんで「今いちばんおいしいものは何ですか」と聞いてみるだけでも、季節の移り変わりを食卓で感じられるようになります。
ご飯を中心にした献立を取り入れる
お米は国内で育てられる主食の代表です。毎食でなくても、ご飯に国産の野菜を使ったみそ汁やおかずを合わせる日を増やすと、自然と国内で育った食材を選ぶ機会が増えます。忙しい日は、炊いたご飯を冷凍しておくだけでも、ご飯中心の献立に切り替えやすくなります。
買いすぎず、最後まで使い切る
買い物の前に冷蔵庫をのぞく、皮や茎まで使えるレシピを覚える、使い切れない食材は早めに冷凍する。どれも小さな工夫ですが、食べ物を無駄にしない暮らしは、輸入や生産に頼る量を見直すことにもつながります。ごみを出さない暮らし方のヒントは、ゼロウェイストのガイドにまとめています。
自給率の数字は、一つの家庭の努力ですぐに動くものではありません。それでも、どこで育ち、どんな道のりで届いた食べ物なのかに少し目を向けるだけで、毎日の食卓が、作り手や土地とつながりながらめぐる循環の一部に見えてきます。完璧を目指さず、できることから気軽に取り入れてみてください。
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