ウォーターフットプリントとは、ある商品やサービスが原料の栽培・生産から製造、輸送、使用、廃棄されるまでに使われる水の量を足し合わせた指標です。蛇口から出る水だけでなく、服の素材になる綿の畑や食べ物を育てる過程で使われた「見えない水」まで数えるのが特徴です。
この記事では、よく似た言葉であるバーチャルウォーターとの違いや、数字を見るときに気をつけたい点、服や食べ物の選び方とのつながりを紹介します。
ウォーターフットプリントとは
ウォーターフットプリント(Water Footprint)は、直訳すると「水の足跡」です。ある商品が手元に届くまでに、どこで、どのような水が、どれだけ使われたかをたどり、量として表します。対象は1枚のTシャツや1杯のコーヒーといった商品だけではありません。1人の暮らし、1つの企業、1つの国の単位でも計算できます。
私たちが普段「水を使った」と感じるのは、料理や洗濯、お風呂など、家の中で蛇口をひねったときの水です。けれども実際には、着ている服や毎日の食事の裏側で、その何倍もの水が使われています。ウォーターフットプリントは、この見えにくい水を見えるようにするための考え方です。
バーチャルウォーターとの違い
よく似た言葉に「バーチャルウォーター(仮想水)」があります。バーチャルウォーターは、食料などを輸入している国が、もしその食料を自分の国で生産したとしたらどれだけの水が必要になるかを見積もった考え方です。「輸入することで、自国の水を使わずに済んでいる」という、貿易と水の関係を考えるときによく使われます。
一方、ウォーターフットプリントは、商品をつくるために実際に使われた水を、使われた場所や水の種類まで含めてとらえます。バーチャルウォーターが「仮に自国でつくったら」という見積もりなのに対し、ウォーターフットプリントは「実際にどこでどんな水が使われたか」をたどる点が違います。両者は対立する考え方ではなく、どちらも「モノの裏側にある水」に目を向けるための視点です。
カーボンフットプリントとの違い
商品のライフサイクル全体を見るという点では、温室効果ガスの排出量を数える「カーボンフットプリント」と同じ発想です。大きく違うのは、水の影響が「場所」に強く左右されることです。二酸化炭素は地球のどこで出しても同じように気候に影響しますが、水は、雨の多い地域で使うのと水不足に悩む地域で使うのとでは、環境や地域の暮らしへの影響がまったく異なります。
ウォーターフットプリントを構成する3つの水
ウォーターフットプリントでは、使われた水を性質によって3つに分けて考えます。
| 水の種類 | どんな水か | 身近な例 |
|---|---|---|
| グリーンウォーター | 雨が土にしみこみ、植物が吸い上げて使う水 | 雨水で育つ畑の作物 |
| ブルーウォーター | 川・湖・地下水などからくみ上げて使い、元の場所に戻らない水 | 農地のかんがい、工場での使用 |
| グレーウォーター | 生産の過程で出た汚れを、環境に戻せる水準まで薄めるのに必要な水の量 | 染色工場の排水、肥料が流れ出た水 |
グレーウォーターは、実際にくみ上げた水ではなく「汚れを薄めるために必要な水の量」に置き換えて数えたものです。水の量だけでなく、水を汚すことも負荷として数えられるのが、この指標の特徴です。
ウォーターフットプリントの数字を見るときの注意点
ニュースや記事では「この商品をつくるのに〇リットルの水が必要」という数字がよく紹介されます。目安として役に立つ一方で、数字だけを比べると誤解につながることもあります。
- 水の豊かさは地域で違う:同じ量の水でも、雨の多い地域で使う場合と、水が足りない地域で川や地下水をくみ上げて使う場合とでは、影響の重さが違います。そのため、地域の水不足の度合いで重みをつけて評価する方法もあります。
- 水の種類で意味が違う:雨水で育つ作物(グリーンウォーター中心)と、かんがいで育つ作物(ブルーウォーター中心)では、合計が同じでも周りの環境への影響は異なります。
- 計算の範囲と方法で数字が変わる:どの工程まで含めるか、どの産地のデータを使うかで結果は大きく変わります。異なる調査の数字をそのまま並べて比べるのは避け、同じ条件で計算したもの同士で比べるのが基本です。
数字は「どれが悪いか」を決めつけるためのものではなく、どの工程・どの地域で水が多く使われているのかを知る手がかりとして見るのが向いています。
暮らしの中のウォーターフットプリント
ウォーターフットプリントの考え方を知ると、家の蛇口以外のところでも、水との付き合い方を見直すきっかけが見つかります。無理なく取り入れやすいものを3つ紹介します。
服を長く着る、素材と産地を知る
服づくりでは、綿などの原料を育てる段階で多くの水が使われ、染色や加工の段階でも水を使い、排水も出ます。新しい服を1枚つくるたびに、こうした水が積み重なります。今ある服を手入れしながら長く着る、古着やリユースを選ぶ、買う前に素材や生産の背景を確かめるといった選択は、新しく服をつくる回数を減らすことにつながります。服との付き合い方は、サステナブルファッションのコラムでも紹介しています。
食べ物を食べきる、買いすぎない
食べ物のウォーターフットプリントには、畑や田んぼで作物を育てる水、加工や調理に使う水が含まれます。肉や乳製品のような畜産物は、家畜そのものが飲む水に加えて、飼料となる作物を育てる水も数えるため、大きくなりやすい食品です。食べずに捨ててしまうと、その食べ物をつくるために使われた水も一緒に無駄になります。必要な分だけ買う、残った食材を使い切る献立にするといった工夫は、フードロスを減らすことと同時に、見えない水の無駄を減らすことでもあります。
家の中の水の使い方を見える化する
家庭で蛇口から使う水も、ウォーターフットプリントの一部です。水道の検針票で毎月の使用量を確かめる、使用量を記録できるアプリを使うなど、まずは自分の家がどれくらい水を使っているかを知ると、シャワーの時間や洗濯の回数など、見直しやすいところが分かります。ごみを減らす暮らしの工夫と合わせて取り入れたい方は、ゼロウェイストのガイドも参考にしてください。
