1.5℃目標とは・意味

1.5℃目標とは、世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて1.5℃に抑えることをめざす国際的な目標です。気候変動対策の国際的な枠組みであるパリ協定に「2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」と書かれたことから、気候変動のニュースでよく使われる言葉になりました。

このページでは、何と比べての1.5℃なのか、2℃とどう違うのか、目標と今の排出量の差を表す「排出ギャップ」とは何かを解説します。電気・食・移動・ものの選び方といった暮らしの選択とのつながりもあわせて紹介します。

1.5℃目標とは

1.5℃目標とは、地球全体の平均気温の上昇幅を、産業革命前の水準から1.5℃までに抑えようとする目標です。石炭や石油を大量に使い始める前の時代を基準にして、そこから何℃上がったかで気候変動がどこまで進んだかを測ります。

パリ協定は、気温上昇を「2℃より十分低く」保つことを目標にし、さらに「1.5℃に抑える努力を追求する」と定めています。いまでは1.5℃が、国や企業が気候変動対策を考えるときの共通の目安になっています。

「1.5℃」は今日の気温のことではない

ここでいう1.5℃は、ある日のある街の気温の話ではありません。世界中の陸と海の気温を平均し、さらに長い期間でならしたときの上昇幅です。季節や天気で上下する体感の気温とは別物で、地球全体の「平熱」が少しずつ上がっていく様子に近いといえます。そのため、ある年の世界の平均気温が一時的に1.5℃を超えても、それだけで目標が破られたことにはなりません。長い期間の平均で判断するのが基本です。

2℃目標との違い

2℃目標と1.5℃目標の差はわずか0.5℃ですが、地球全体の平均で見た0.5℃は小さな差ではありません。気温が上がるほど、猛暑や大雨といった極端な気象、海面の上昇、生きものがすめる場所の変化などの影響が強くなります。上昇を1.5℃に抑えられれば、2℃まで上がった場合よりもこうした影響やリスクを小さくできます。そのため、より安全な目標として1.5℃が重視されるようになりました。

カーボンニュートラルとの違い

一緒に語られることの多い「カーボンニュートラル」は、温室効果ガスの排出量から森林などが吸収する量を差し引いて、実質ゼロにすることです。1.5℃目標が「気温の上昇をどこまでに抑えるか」というゴールなのに対し、カーボンニュートラルは「そのために排出をどうするか」という手段の目標です。気温の上昇を止めるには排出を実質ゼロにする必要があるため、この2つはセットで語られます。

1.5℃目標と「炭素予算」の考え方

二酸化炭素は一度大気中に出ると長くとどまり、少しずつたまっていきます。そのため気温がどこまで上がるかは、その年の排出量よりも、これまでに出してきた量の合計(累積排出量)で大きく決まります。

この性質から、「1.5℃に抑えるなら、あとどれだけ排出してよいか」という残りの枠を考えることができます。これを「カーボンバジェット(炭素予算)」と呼びます。家計の予算と同じで、毎年たくさん使えば早く尽き、使う量を少しずつ減らせば長くもちます。1.5℃目標がよく「時間との勝負」といわれるのは、この枠に限りがあるからです。

排出ギャップとは

排出ギャップとは、1.5℃や2℃に抑えるために必要な排出量と、各国の削減目標や今の政策から見込まれる排出量との「差」のことです。パリ協定のもとで、各国はそれぞれ温室効果ガスの削減目標を立てています。その目標をすべて足し合わせた見通しと、気温上昇を抑えるために必要な道筋とを比べ、どれだけ離れているかを表すのが排出ギャップです。

この差が大きいほど、目標までの距離は遠くなります。気候変動のニュースで「1.5℃が遠のいている」と伝えられるときは、たいていこのギャップが縮まっていないことを指しています。

排出ギャップを読むときの3つの視点

  • ギャップは「目標の高さ」と「実際の行動」の両方で決まります。目標を引き上げても、実行が追いつかなければ差は縮まりません。
  • 1年ごとの増減に一喜一憂するよりも、差が縮まる方向に進んでいるかどうかを見るほうが、流れをつかみやすくなります。
  • 国や企業の目標を見るときは、「いつまでに、どれだけ減らすか」と、そのための具体的な取り組みがそろっているかがポイントです。

排出ギャップは国どうしの話に見えますが、排出のもとをたどると、電気をつくる、ものをつくって運ぶ、食べものを育てる、人が移動するといった、毎日の暮らしを支える活動に行き着きます。

暮らしの中の1.5℃目標

1.5℃目標は、ひとつの家庭の努力で達成できるものではありません。それでも、何を選ぶかの積み重ねは、企業のサービスや社会の仕組みを変える力になります。完璧を目指すより、続けやすいところから始めるほうが長続きします。

電気の選び方を見直す

家庭から出る温室効果ガスの多くは、電気やガスなどのエネルギーを使うことから生まれています。省エネ家電への買い替えや使い方の工夫に加えて、再生可能エネルギーを中心にした電気料金プランを選ぶ方法もあります。プランを比べるときは、「再エネ100%」が電源そのものを再生可能エネルギーでまかなっているのか、非化石証書を組み合わせた「実質」再エネなのかを見ておくと、納得して選べます。家でできる工夫は、家庭でできる省エネアクションをまとめたコラムで紹介しています。

食べ方と食品ロスを見直す

食べものは、育てる・運ぶ・保存する・調理するそれぞれの段階でエネルギーを使います。食べきれる量だけ買う、旬のものや近くで採れたものを選ぶ、肉に偏らない献立を週に何回か取り入れる。こうした工夫は、食費や毎日の献立の悩みを軽くすることにもつながります。捨てる食品を減らすことは、それをつくるために使ったエネルギーを無駄にしないことでもあります。

移動の手段を選ぶ

近い距離は歩くか自転車にする、公共交通を使う、車を使うときは用事をまとめる。移動の手段を選ぶことも、ひとつの選択です。運動不足の解消や、家族とゆっくり話す時間が生まれるといった、うれしいおまけもついてきます。

ものを長く使い、循環させる

新しいものをつくるときには、材料をとって加工し、届けるまでに多くのエネルギーがかかります。手持ちのものを修理して長く使う、使わなくなったものを譲ったり売ったりして次の人につなぐ、必要なものは中古も選択肢に入れる。こうした「循環」の選択は、ごみを減らすだけでなく、新しくつくる分の排出を減らすことにもつながります。ごみを出さない暮らしの考え方は、ゼロウェイストのガイドにまとめています。

1.5℃という数字は、遠い国際会議の話に聞こえるかもしれません。でもその中身は、「地球の平熱をこれ以上上げすぎないための約束」です。ひとつの家庭でできることは小さくても、毎日の選択を少しずつ変えていけば、未来の暮らしに余白を残すことにつながります。できることから、ひとつずつ始めてみてください。

1.5℃目標に関するコラム

1.5℃目標に関するニュース

サステナブルなライフスタイルに関わる用語