コーヒーかすを再利用して堆肥や肥料の材料に循環!mame-ecoの活動に密着

コーヒーかす

毎日を豊かにしてくれるコーヒー。1杯のコーヒーがカップに注がれるまでに、たくさんの人の手とエネルギーが使われています。はるばる日本に届いたコーヒー豆ですが、飲み終わった後に残った「コーヒーかす」をみなさんのご家庭やオフィスではどうしていますか?

今回は京都を拠点に、カフェや家庭から出たコーヒーかすを回収し、地域の農家とつなぐことで、堆肥として活用し循環させる「コーヒーかす再利用プロジェクト」に取り組む「mame-eco」のゲーリーさんと順子さんにお話を伺いました。

コーヒーかすとは

コーヒーかす
コーヒー豆は中南米や東南アジア、アフリカなどの、赤道に近い地域で作られています。各地で収穫後、皮をむいて乾燥させた生豆が日本まで運ばれ、焙煎所で焙煎し、挽いて粉にした後に抽出して、やっと1杯のコーヒーができあがります。そうして飲み終わった後に残るのが、コーヒーの出がらし「コーヒーかす」です。家庭では燃えるゴミとして、カフェや飲食店では産業廃棄物として捨てられています。

しかし、コーヒーかすは捨てるのがもったいないほど、十分に活用できる素材です。今回はコーヒーかすをアップサイクルする現場に密着取材。コーヒーかすを活用する事例のひとつをご紹介します。

コーヒーかすのアップサイクルに取り組む「mame-eco」とは?

mame-eco

ブルーム・ゲーリーさん(右)と順子さん(左)

mame-ecoは、京都市内でアメリカ出身のブルーム・ゲーリーさんと順子さんご夫婦を中心に、コーヒーかすの回収に協力する5名のボランティアが運営しています。さらに、集まったコーヒーかすを活用する農家の方たちがいます。回収場所は約50か所。拠点はご夫婦の暮らす京町屋のご自宅です。

名前の由来は、mameは「コーヒー豆」、日本語の「まめ」が持つ「小さな、こまめに」などのニュアンスと、ecoの組み合わせからきています。コーヒー豆でつながる、小さなエコ活動です。

夫のゲーリーさんが区役所から持ち帰ったごみ減量を呼びかけるチラシを見たことから、mame-ecoの活動は始まりました。

「ひとり一日30gのごみを減らすだけで、環境への負荷を減らせることを知りました。そこで何を減らせるだろうかと考えました」と語るゲーリーさん。

何か減らせるごみがないか探していたところ、毎日夫婦が飲むコーヒーから出る「コーヒーかす」に気が付いたのだとか。コーヒーかすは水分を含むと重くなり、1ヶ月間に夫婦2人で約4kg分も捨てていることが分かったそうです。

「海外ではコーヒーかすをガーデナーに譲ったり、コンポストに入れたりして循環させている事例があり、カフェなどでは「FREE coffee grounds(コーヒーかす ご自由にどうぞ)」と書かれていて、持ち帰ることができます。またオーストラリアでは買い取る仕組みまで整っています」(ゲーリーさん)

毎日大量に出るコーヒーかすを廃棄せずに活用できないかと考えるようになったと言います。

しかし、最初はなかなか有効活用してくれるような貰い手が見つからず、声掛けの範囲を広げるために無料のインターネット掲示板(ジモティ)を使って、コーヒーかすを活用してくれる農家さんの募集を呼びかけることに。そこでつながったのが、京都・亀岡の農家の方でした。

こうしてコーヒーかすの小さな循環が始まりました。

コーヒーかすのアップサイクルに密着!

京都市内のカフェやオフィスから回収されたコーヒーかすは、どのようにアップサイクルされるのでしょうか?回収の現場を見せていただきました。

コーヒーかすの回収

回収の様子コーヒーかす回収の様子。リユースされた袋に詰めた1週間分のコーヒーかすです。(左京区・シサム工房オフィス)

ボランティア篠原さん担当しているのはボランティアの篠原さん。「たくさんの量を集めることよりも、ちょっとのつながりが増えることが楽しい!」と、毎週近くのお店やコワーキングスペースを回り、分別してからゲーリーさんたちのもとへ届けます。

コーヒーかす大量にコーヒーかすが出るカフェなどでは、ペーパーフィルターごと一緒にバケツに溜めてもらい、回収の際には空のバケツと交換。簡単で手間の少ない方法で回収しています。

コーヒーかすを分別して保管

コーヒーかす回収したコーヒーかすからペーパーフィルターを分別。1杯分のコーヒーを入れるドリップパックタイプのフィルターには分解されにくい材料が使われていることが多いため、取り除きます。

農家の方が取りに来る

コーヒーかす

小分けにまとめられたコーヒーかすが準備されていました

回収したコーヒーかすを肥料が入っていた空袋などに詰め、定期的に取りに来られる農家の方に渡します。ここでも徹底的にリユースした袋を使っています。

コーヒーかすを集めて、農家へ渡すところまでがmame-ecoの活動です。農家の方はコーヒーかすの活用方法に詳しいので、それぞれお好きに使っていただいているそうです。

コーヒーかす堆肥の作り方コーヒーかすを使った、基本の堆肥の作り方を教えていただきました。作り方はとても簡単で、コーヒーかす、米ぬか、EM菌を混ぜて置いておくだけ。発酵が進めば「ぼかし肥料」が完成します。

コーヒーかすからは窒素を多く含む堆肥ができ、おいしい野菜が収穫できるそうです。また、イチジクの木のそばに撒くと、虫による被害が減ったとのことで、虫よけとしての効果も期待できます。

参考:伏見区の船越農園の活用方法(mame-eco HP)

コーヒーかすで育った野菜を食べてみた!

料理したなす

コーヒーかすを活用して野菜を育てる船越農園さんのナス。皮がつやつやしていて、ずっしりとしています。さっそく厚揚げと一緒に含め煮にしてみたのですが、皮が薄くとろける触感でえぐみもなく、おいしくいただきました。

コーヒーかす

コーヒーかすたい肥を使った野菜の販売拠点は京都府内に複数あります。

・JA京都ファーマーズマーケット たわわ朝霧(京都府亀岡市篠町野条上又30)
 王子楽遊農園(@ojirakuyu)の野菜

・じねんと市場(京都府京都市伏見区竹田青池町125)
 RE:ARTH(@kura_mush_room)のヒラタケやキクラゲ
 舩越農園(@funa.osamu)の野菜

ご近所の方や近くにお出掛けになった際には、ぜひコーヒーかすを活用して育てた新鮮な野菜を手に取ってみてください。

mame-ecoの想い

mame-eco

コーヒーかすでおいしい野菜の栽培に貢献するmame-ecoの活動は、ごみの減量だけではなく、地域のつながりや資源循環も実現していました。

今では毎月1.5トンのコーヒーかすが集まり、活用されるようになりましたが、mame-eco自体の活動が大きくなることを目指しているわけではないそうです。

「今まで捨てられていたコーヒーかすを循環させることで、みんながWin-Winになります。カフェや家庭からゴミが減り、農家はおいしい野菜ができる堆肥の材料が手に入る。小さい規模でこういう活動が広がればベストだと思います。私たちはコーヒーが大好きでよく飲みます。でも、コーヒーは異国からやってきたもので、それだけで環境に負荷がかかっています。飲んで終わりではなく、飲んだ後のことも安心して心地よくコーヒーを楽しめるように、できることに取り組んでいます」と語る順子さん。

mame-ecoの活動をそれぞれの地域でマネしたり、工夫したりして始めてみてほしいと言います。

「もしも私たちの活動を知って、自分でもなにかやってみたいと思ったら、ぜひ始めてみてください。京都だったらmame-ecoにつながるのもいいし、遠方にお住まいだったらお近くで活用したい人を探してみて、それぞれの地域の中で循環できる仕組みができるのが理想だと思っています。カフェに直接農家さんがコーヒーかすをもらいに行くようなつながりが増えていくといいなと思っています」(順子さん)

簡単に始められるエコ活動とは?

コーヒーかす乾燥させよう
また、簡単にできるごみの減量法も教えてもらいました。

「コーヒーかすを捨てる前に、庭やベランダでお日様に当てて3時間ほど乾かすだけで、ゴミの減量ができます。イラストは2杯分のコーヒーを入れたときのコーヒー豆の重量。抽出直後のコーヒー豆の重量は水分を含んでいるため、約3倍に。輸送にも焼却にも、よりエネルギーが必要となってしまいます。コーヒーかすを干していても臭ったり、虫が集まったりしないので、とても簡単に始められますよ」とゲーリーさん。

取材をしていて、ひとり暮らしの狭いベランダでコンポストに挑戦しても、堆肥を使う場所を見つけられずに行き止まりとなってしまった過去の自分を思い出しました。もしかすると、こういった経験をお持ちの方も少なくないのかもしれないと思いました。

生ごみの中でもコーヒーかすは気持ち的にもハードルが低いものなので、職場の仲間やご近所の方にも声をかけて、簡単にできそうな「乾燥させてから捨てる」ことから始めてみようと思いました。

【参照サイト】mame-eco HP
【参照サイト】mame-eco Instagram
【参照サイト】JA京都ファーマーズマーケット たわわ朝霧
【参照サイト】じねんと市場
【関連ページ】京都のゼロウェイスト認証ショップ「シサム工房」のごみを減らす仕組みとは
【関連ページ】コンポストより簡単!生ごみの臭いや量が激減する捨て方とは?

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牛嶋麻里子

福岡出身。フェアトレードを仕事にしてみようと思い立ち、2018年からは京都へ移住。アパレルのゼロウェイストや生産背景について学び、よりエシカルな選択ができる社会を目指して働いています。 プライベートでは、チョコレートのおもしろさとカカオの課題から目が離せなくなり、ひとりでフィリピンのカカオ畑に行ってみたり、チョコレート検定プロフェッショナルを取得してみたり。