京都のゼロウェイスト認証ショップ「シサム工房」のごみを減らす仕組みとは

1999年創業の京都発のフェアトレードショップのシサム工房。京都、大阪、神戸、東京に直営店があり、2022年9月9日には東京・自由が丘店が9店舗目としてオープンしました。アジア生産者とフェアトレードNGOを通じてつながり、レディース・メンズ衣料やアクセサリー、雑貨、食器、コーヒーなどのオリジナルフェアトレードアイテムを作っています。また、布ナプキンや蜜蝋ラップ、環境負荷の少ない洗剤や石鹸など、暮らしに寄り添うエシカルなアイテムも揃っています。

2021年にはアパレルゼロウェイスト認証を取得しています。今回は、アパレルゼロウェイスト認証の項目に沿って、シサム工房のごみを出さない取り組みをご紹介します。

【Less Box Zero Waste】配送時に繰り返し使うことのできる資材を使用

商品を補充する社内便はもちろん、オンラインストアの配送袋や箱も、可能な限りリユースして使っています。リユース材の目印は、注意書き入りのオリジナルガムテープ。何度も繰り返し使った後は、地域の古紙回収リサイクルに出しています。

sisamリユース材の梱包

オンラインストアで一番使われているのはこの「ワンプ袋」と呼ばれる配送袋。京都の印刷所 修美社で出た印刷前の紙の包み紙「ワンプ」を材料に、京都の障害者就労継続支援B型 かしの木学園で袋の形に加工しています。紙を包み守っていた時代の、皺や切れ目などがあり、紙の歩みを想像するのも、1点物の作品を見ているようで魅力的です。

sisamワンプ袋

【Design Zero Waste】未活用資材やリサイクル可能な資材を店舗の内装や什器に活用

木のぬくもりがあふれる店内には、什器や資材等に古材・古具等を見ることができます。また、そうした什器等には木材や金属、石など再利用・資源化がしやすい天然素材が使われています。大切に手入れされた古民家に足を踏み入れたように、ほっとできる空間です。

シサム工房

時を重ねた木材や鉄の風合いの壁と、天井から吊った流木を生かしたディスプレイ

【Select Zero Waste】リサイクル素材やアップサイクル商品を積極的に取り扱い

衣類を作る際に生まれる布の切れ端やストック生地などを活用した「カケラシリーズ」や「stock(ストック)シリーズ」があります。ネパールの生地がもつ不思議な魅力が、パッチワークのように組み合わせることでさらなる楽しさが。デニムなどのポケットや袖の内側に、はぎれのプリント生地をアクセントとして使用しています。

sisamカケラポーチ

ストック生地を組み合わせて作られたカケラポーチ。一つ一つに使われている生地が異なるのでじっくりと選びたい

【Traceable Zero Waste】製品を捨てない仕組み作り

在庫の廃棄は一切行わないため、責任をもって売り切る量を発注します。そのために、全国の卸先にも協力してもらい、生産前に予約注文を受け付ける受注生産に近い形で、途上国の小さな工房に発注しています。それでも残ってしまった在庫は、翌シーズンに持ち越したり、草木染めなどのアップサイクル商品として、再び店頭に並びます。

sisam黒でつなぐ黒染めプロジェクト

8月にスタートした「黒でつなぐプロジェクト」は、京都紋付とコラボしたアップサイクルサービスで、シミや色褪せで着られなくなった洋服を、きれいな黒に染め変えてくれるサービスです。エコテックス100認証の染料を使用しており、人と地球にやさしいうえ、洗濯を繰り返しても美しい黒がつづきます。

【Choice Zero Waste】無償提供するサービス品から使い捨て品を出さない

紙袋やギフトラッピングは有料とし、繰り返して使える布製のギフトバッグや風呂敷などを使った、ゴミの出ないギフトラッピングを提案しています。また、以前はプラスチック製だったポイントカードはスマホで表示できるデジタル仕様に、チラシはSNSでの案内にシフトしました。

sisamギフトラッピング

エコバッグや巾着は、洋服よりも簡単な直線縫いだけでできるため、途上国で職業訓練を終えたばかりの女性たちの仕事になるといった、フェアトレードならではの視点が込められています。ノベルティにも対応しているため、オリジナルデザインのエコバッグなども制作できます。

【ZW Workers Zero Waste】スタッフ自身が出すごみも削減

マイボトルの推進をはじめ、スタッフがそれぞれにゴミを出さないように心掛けています。また、私用のゴミは各自で持ち帰るため、ゴミ箱も小さめです。約20名ほどが仕事をしている事務所では、以前は生ごみとして捨てていたコーヒーかすは、たい肥として循環させている「mame-eco」に、回収してもらっています。また、時々、スタッフ全員で集合し、ゴミの計量も行っています。

sisamごみの計量

ごみの計量では、内容物が何なのか全員で確認し、分別についての疑問も解決します。この計量後、事務所のごみ箱は、約1/4の大きさのものに変更しました。

【System Zero Waste】日常業務での紙や備品を削減

sisamレジ回り
日報や申請、発注書や資料など、書類の多くをデジタル化し、ペーパーレスを進めています。リユースできる掃除器具の活用や、文房具・シール類までリユースを徹底しています。「紛失すると、新しく買うことになる。無くさないことがごみを減らす一番の基本」とのことで、レジ回りやバックヤードも整理整頓を頑張っています。

【Act With You Zero Waste】ゼロウエイストを広げる仕組み作り

黒への染め替えサービスのほか、量り売りの洗剤を全店で購入することができるようになりました。

sisam量り売り洗剤

専用の容器も販売していますが、容器を持参することもできます。1回あたりの使用量が少ない高濃縮タイプのため、こまめに買い足す手間が減り、経済的です。

フェアトレードとゼロウェイストの関係は?

一見すると、フェアトレードとゼロウェイストは別の問題に見えますが、そうではありません。世界規模でモノやお金が動くいま、一部の人々が利益を上げる裏側で、途上国で暮らす人々に過酷な生き方を強いている状況は、どちらも同じ構図です。何かを生産すれば生産するほど、資源やエネルギーは消費され、水や土、大気の汚染にもつながります。

また、現在の私たちの暮らしによって、未来の人や生き物が安心して暮らせないようになってしまったら、未来の人は私たちにどんな言葉を投げかけるでしょうか。今生きている私たちが、思いやりをもって丁寧に暮らすことにこそ、明るい未来があるように感じます。

アパレル・ゼロ・ウェイスト認証のお店も、フェアトレードショップも少しずつ増えています。消費者の立場からも、そういったお店で買うことで、応援していきたいものですね。

【参照サイト】シサム工房
【参照サイト】mame-eco
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牛嶋麻里子

福岡出身。フェアトレードを仕事にしてみようと思い立ち、2018年からは京都へ移住。アパレルのゼロウェイストや生産背景について学び、よりエシカルな選択ができる社会を目指して働いています。 プライベートでは、チョコレートのおもしろさとカカオの課題から目が離せなくなり、ひとりでフィリピンのカカオ畑に行ってみたり、チョコレート検定プロフェッショナルを取得してみたり。