京都市のごみの量は1960年ごろから急速に増加し、ピーク時の2000年には82万トンにまで達しました。このままではごみ処理にかかる費用が莫大になってしまうことや、最終処分場の延命化を図りたいことなどから、京都市はさまざまな取り組みをスタート。結果として約20年でゴミの量を半減させることに成功しました。その背景にはどのような施策があったのでしょうか?
京都市のごみの量はピーク時の約49%減
京都市のごみの量は2000年に82万トンとピークを迎えましたが、2020年には38.5万トンに半減しました。食品ロスの量も9.6万トン(2000年)から、5.7万トン(2020年)に。さらにごみの処理費用は367億円(2000年)から205億円(2018年)と162億円削減できました。ごみ関連の数値を大幅にダウンさせ、着実に成果を挙げたことで多くの自治体などから京都市の取り組みに注目が集まっています。
京都市のゴミの減量化に対するこれまでの取り組み
人口140万人を超える大都市でありながら大きな成果を挙げることができた背景には、どのような取り組みがあったのでしょうか。ごみの量がピークに達した2000年以降の施策に注目してみましょう。
2003年「京都市循環型社会推進基本計画〜京のごみ戦略21〜」
2003年に「京都市循環型社会推進基本計画〜京のごみ戦略21〜」を市が策定しました。この計画ではゴミ処理中心型から、ごみをコントロールする循環管理型への施策へ舵が切られ、ごみの発生抑制や再利用、ごみの分別品目やリサイクルの拡大、廃棄物の適正な処理対策が柱とされました。
2015年「新・京都市ごみ半減プラン 京都市循環型社会推進基本計画(2015-2020)」
次に2015年、「新・京都市ごみ半減プラン」が策定。「2R(リデュース・リユース)の促進」と「分別・リサイクルの促進」の2本の柱とした新たなゴミ処理の仕組みが整えられました。とくに注目すべき点として、2Rの促進として全国初の食品ロス削減目標を掲げたことがが挙げられます。
2021年「京(みやこ)資源めぐるプラン 京都市循環型社会推進基本計画(2021-2030」
そして2021年、「京(みやこ)資源めぐるプラン」が策定されました。大きく変貌する国内外の情勢を踏まえ、「持続可能な社会づくり」を目指すとしています。今回の施策でも食品ロス削減が大きく掲げられ、全国をリードする「食品ロス削減のまち」の実現にチャレンジしています。
さらなるゴミの減量を目指す「食品ロスプロジェクト」
京都市では家庭から出る生ゴミの詳細な調査を隔年で行っています。その中には多くの手付かず食品や食べ残しなどの食品ロスが含まれていることから、市は施策の中でも食品ロスの削減に力を入れています。そこでここでは市の食品ロスプロジェクトにフォーカスしてみましょう。
ピーク時には9.6万トン発生していた食品ロスを5.7万トンまで減らすことができましたが、市はさらに2030年までに4.6万トンとする目標を掲げています。具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか。注目したい取り組みをピックアップしてみました。
市民や事業者への啓発
市では市民や事業者へ向け、食品ロス削減のさまざまな啓発活動を行っています。身近でできる取り組みや、野菜の皮や芯などを活用したレシピを紹介したり、飲食店での食べ残しの持ち帰りガイドラインを定めたりしており、市の食品ロス削減を呼びかけるホームページで都度公開しています。
また、事業者に対しては、たとえばスーパーやコンビニエンスストアなどで定められている商品の販売期限を、賞味期限・消費期限の範囲内で以前よりも延長して販売するよう啓発する取り組みや、フードバンクへの寄付、飲食店においては宴会などでの食べ残しを減らす「30・10(サーティ・テン)運動」などを啓発しています。
食べ残しゼロ推進店認定制度
飲食店や宿泊施設などにおける食品ロスを削減しようと、市は「食べ残しゼロ推進店舗」の認定制度も実施しています。認定を受けるには「食材を使い切る工夫」や「食べ残しを出さない工夫」など8つの項目のうち2つ以上実践していることが条件です(飲食店・宿泊施設の場合)。
2020年度末現在、認定された店舗は約1,700にのぼり、この取り組みが大きく広がっています。認定店舗はステッカーを提示し、決められた取り組みを実践することはもちろん、取り組み内容について積極的に発信していくことも求められます。
一般企業との連携
大手食品メーカー「ミツカン」と2020年8月に「食品ロス削減に資する取組の連携に関する協定」を締結し、連携して食の循環を目指す活動も行っています。
具体的な取り組みとしては、京都の野菜を無駄なくおいしく食べきる「もったい鍋」(鍋メニュー)や「もったい菜漬け」(ピクルス)などのレシピ創作、キャンペーンや、ふだんあまり食べない部分まで使った「ZENB PASTE」の京都野菜版の開発などです。
さらに2021年9月には人気ベーカリー「メゾンカイザー」を運営する株式会社ブーランジェリーエリックカイザージャポンとも連携し、捨てられがちな野菜のヘタや皮の部分をできるだけ使ったピクルスサンドの販売やレシピブックの配布も行われ、好評を博しました。
生ごみ堆肥化を目指す「ごみカフェKYOTO」プロジェクト
京都市は、生ごみを堆肥化することによって、焼却時に排出されるCO2削減を目指しています。コンポスト初心者がマンションのベランダで簡単に実践できる、電気不使用のバッグ型のLFCコンポストを普及して、生ごみの堆肥化を目指しています。また、できた堆肥の回収、堆肥を活用して野菜を育てる等の食循環のコミュニティ拠点づくりも行っています。
祇園祭ごみゼロ大作戦
日本三大祭のひとつ祇園祭では、多くの夜店・屋台が立ち並び、プラスチック容器ごみの量は増える一方で、環境負荷が大きくかかっていました。2014年、日本初の試みとして、約21万食分の使い捨て食器をリユース食器に切り替える活動を展開し、60トンだった燃やすごみを34トンにまで減量させることが出来ました。また、祭りを重ねるごとに、さらなるごみの削減に成功しています。
京都市は持続可能な循環型の都市へ
京都市では数々の取り組みを通してゴミの量を大きく減らし、さらに新たな施策を通して時代に即した循環型都市へと徐々にシフトしています。行政だけでなく、市民や事業者も一体となり、さまざまな角度から取り組むことで大きな成果を挙げてきました。市の活動を参考に、自分たちにもできることはないか考えてみませんか?
【参照サイト】京都市のごみ減量の取組について
【参照サイト】京都市情報館
【参照サイト】みんなで取り組もう!京都市食品ロスゼロプロジェクト
【参照サイト】京都市ごみ減量・リサイクル総合情報サイト 京都こごみネット
【参照サイト】SDGs先進都市 京都で、10月9, 10日にキックオフ! 生ごみ堆肥化でCO²排出量削減をめざす「ごみカフェKYOTO」プロジェクト(実証実験)を開始します。
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