【鹿児島県 大崎町】リサイクル率NO1の町 鹿児島県大崎町

大崎町

鹿児島県の東部に位置し、13,000人ほどが住む大崎町。畜産業や農業、水産業など一次産業が盛んなこの小さな町は、リサイクル率日本一を12年連続で達成しています。全国のリサイクル率の平均は20%ほどですが、大崎町はなんと80%以上! この取り組みが認められ、2018年には「ジャパンSDGsアワード」官房長官賞を受賞、2019年には「SDGs未来都市」に選定されるなど、同町は全国から大きな注目を集めています。

今回は大崎町が取り組むリサイクル事業をテーマに、その背景や具体的な試み、成果などについてみていきましょう!

埋め立て処分場の延命がきっかけにリサクルシステムがスタート

大崎町がリサイクルに力を入れるようになったのは1998年。1990年に整備し、近隣の自治体と共同で運営していたごみの埋め立て処分場が、予定よりも早く満杯になると予測されたためです。焼却炉や新規処分場の建設も検討されましたが、いずれも住民への負担が大きいとのことで断念。今ある処分場の延命のため、リサイクルシステムがスタートしました。

ごみを27品目に分別する「大崎リサイクルシステム」

1998年、リサイクル開始当初は、カン・ビン・ペットボトルの分別のみでしたが、徐々に細分化されていきました。現在は空き缶やリターナブルビン、茶色ビンや無色透明ビン、段ボール、新聞紙・チラシ、生ゴミ、一般ゴ…と27品目に分別が行われています。

資源ゴミは月に一度回収され、再資源化のために処理されたり、一部は有料で売却されたりします。生ゴミは大崎有機工場に持ち込まれ、完全堆肥化。それ以外は一般ゴミとして、埋め立て処分場に運び込まれます。また、「菜の花エコプロジェクト」として、廃油を回収し、ディーゼルエンジン代替燃料やエコ石けん「そおぷ」を作る取り組みも開始されました。

この「大崎リサイクルシステム」は焼却に頼らないため、低コストな点が大きな特徴です。二酸化炭素の発生も抑えられ、環境に優しいというメリットも。また、排出するゴミ袋には名前を書き、自分のゴミとして責任を持つことも求められています。

住民・行政・企業がそれぞれの役割を担う

分別は町内の各地区にある「衛生自治会」が主導して行っており、住民主体でリサイクルに取り組んでいます。行政は仕組みを作り、企業が収集し、リサイクルを行います。スムーズな運用の裏側には、住民、行政、企業がそれぞれに役割を担い、構築された信頼関係がありました。

住民にとって、27品目に分別することはもはや当たり前の生活習慣となっています。とはいえ、取り組みを始める当初には、町の職員が住民たちに理解を求めるための住民説明会が繰り返し行われました。結果としてゴミ問題を自分たちの問題として住民が捉えるようになり、話し合いの末に住民主導でのこのシステムがスタートしたのです。

「大崎リサイクルシステム」が町にもたらしたもの

大崎町のこの取り組みは単にリサイクル率が日本一というだけではありません。取り組みが定着したことで、次のようなさまざまな成果が町にもたらされました。

当初より50年ほど長く埋め立て処分場が運用可能に

そもそもの目的であった埋め立て処分場の延命化を達成し、なんと当初よりも50年ほど長く運用できることになりました。1998年度では4,382トンだったゴミの埋め立て処分量は、2018年度には670トンに。実に80%以上の埋め立てゴミの減量化に成功したのです。

ゴミ処理費用が減り、町や住民へ還元されることに

埋め立てゴミの量が大きく減ったことで、ゴミ処理にかかる費用も減少しました。一人当たりにかかるゴミ処理事業経費の全国平均が15,500円であるのに対し、大崎町では7,700円。全国平均の半額以下でゴミの処理が行われているのです。年間で1億円ほどが節約され、これらは町の福祉や教育などの分野に還元されています。

さらに、資源ゴミの一部は売却され、2017年度には800万円ほどの益金が発生。分別をスタートしてから発生した益金は1億3,800万円を超え、故郷の活性化を担う人材を育てるための奨学金制度もつくられました。

町のリサイクルセンターで40名の雇用を創出できることに

同町にあるリサイクルセンターでは近隣自治体も合わせ、全部で10万人分の資源ゴミを取り扱い、さらに40名ほどの雇用も生まれています。ゴミの分別に取り組むことで、新たな雇用や経済効果も生み出しました。

2021年に「大崎町SDGs推進協議会」を設立

大崎町

これまで同町が積み重ねてきたリサイクルの取り組みをさらに発展させるべく、2021年に企業や団体とともに「大崎町SDGs推進協議会」が設立されました。これまでの取り組みをベースに循環型社会をつくることを目的としています。

まずは持続可能な未来をつくるための「OSAKINI プロジェクト」がスタート。「研究・開発」、「人材育成」、「情報発信」の3つの柱で、2030年までに使い捨て容器の完全撤廃や脱プラスチックの実現など、SDGs目標12「つかう責任、つくる責任」の達成を目指しています。

また、2030年に、『サーキュラー(循環型)ヴィレッジ』をつくるという目標もあります。ゴミ分別で培ったリサイクルの仕組みに、脱プラの取り組みを加えて、すべてのものがリユース、リサイクルされて循環する町をつくることを目指しています。

リサイクルの町から、循環型社会へ

リサイクル率日本一を誇る鹿児島・大崎町。その背景にはゴミ問題を自分たちの問題として考える住民たちの自主的な取り組みなどがありました。今後はさらに仕組みを発展させ、大崎町SDGs推進協議会とともに持続可能な社会づくりに取り組んでいくことを目標としています。

リサイクルの町としてだけでなく、すべてのものが循環するサーキュラーヴィレッジ構想の実践へ。大崎町は新たなフェーズへ進みつつあります。私たち一人ひとりも、同町の取り組みから学べることは多いはず。「自分のゴミに責任を持つ」ことを念頭に、改めてゴミの出し方を見直し、リサイクルやゼロウェイストへの意識を高めていく必要があるのではないでしょうか。

【参照サイト】ごみ・リサイクル・環境|鹿児島県大崎町
【参照サイト】大崎町 ごみ分別の手引き 令和2年度4月版
【参照サイト】ゴミ分別で8割超をリサイクル 鹿児島県大崎町が目指す循環型社会:朝日新聞デジタル
【参照サイト】OSAKINI プロジェクト

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