気候変動と食料生産のつながりを知ろう!日々の食生活で行える取り組みを紹介

気候変動は人間の活動にともなう温室効果ガスの増加や、森林破壊によっても起こるとされ、近年さまざまな取り組みが見られるようになってきました。

気候変動による気温上昇や異常気象は、私たちの生活にさまざまな影響を及ぼしています。とくに食料生産への影響は深刻な問題のひとつです。日々の暮らしのなかでそれぞれが意識して取り組むことで、温室効果ガスの排出を減らし、気候変動の進行を食い止めることが可能です。今回は、気候変動の現状や食料生産とのつながりをはじめ、毎日の食生活を通して行える取り組みを紹介します。

気候変動の現状

気候変動の現状を知るうえでおさえておきたいのが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書です。IPCCは1988年に設立された組織で、世界各国の科学者が発表する論文などをまとめ報告書として公表しています。

2021年~2022年には、前回の報告書からおよそ8年ぶりに第6次報告書が発表され、地球温暖化の原因が人間の活動による影響であることは疑う余地がないと明記されました。これまでの報告書では、地球温暖化の原因が人間の活動によるものである「可能性が高い」または「非常に可能性が高い」という表現がされていましたが、最新の報告書では地球温暖化が私たち人間の活動によって引き起こされるものだと断定しています。

【参照サイト】環境省「IPCC 第6次評価報告書」

気候変動による影響とは?

気候変動によって私たちにどのような影響があるのでしょうか。IPCCの報告書では、1850年~1900年を基準とした場合、2011~2020年の世界平均気温は約1℃上昇したとされ、これまでにないほどの早さで温暖化が加速していることが記されています。

また、2023年の夏は世界的に猛暑となり、7月は観測史上最も暑い1カ月であったと世界気象機関(WMO)と欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)が発表しました。この発表に合わせて行われた会見で、国連のグテーレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と警告しています。

気象研究所などの研究グループが行った研究によると、地球温暖化が進行することで線状降水帯や50年に一度程度の大雨の頻度や強度が増加することがわかっています。実際に、日本各地で「線状降水帯」や「記録的な豪雨」という言葉を頻繁に聞くようになったと感じている方も多いのではないでしょうか。

当然、このような影響は日本だけではありません。世界中のあらゆる地域で極端な暑さや大雨、熱波による森林火災などなどが起きていて、これらは人の活動により排出された温室効果ガスが増加したことが原因と考えられています。

【参照サイト】京都大学「地球温暖化の進行に伴い、線状降水帯を含む極端降水が増加することが明らかに」

気候変動と食料生産のつながり


気候変動は、農業や畜産業など食料生産にもさまざまな影響をもたらしています。そのひとつとして、世界的な平均気温の上昇による穀物の収量の増減が挙げられ、とくに低緯度地域では今後大幅に収量が減ると予測されています。また、畜産や漁業においても気候変動の影響は無視できません。熱波による家畜の暑熱ストレスや海水温の上昇による魚種の減少など、甚大な影響を及ぼすと考えられています。

近年日本では、平均気温の上昇による米やりんごなどの果実の収量・品質の低下が指摘されていて、実際に極端な高温となった年には収量の減少が報告されました。今後気温の上昇が続けば、品質の高い米の収量が増加する地域と減少する地域の偏りが大きくなるとも予測されています。

日本は食料の多くを輸入に頼っているのが現状です。1965年には70%以上あった食料自給率(カロリーベース)が、食生活の変化などによって現在は38%ほどにまで低下しています。また、世界の人口が増えたことで食料の需要が増加しているともいわれていて、このままでは食料を安定的に供給することが難しくなるかもしれません。

【参照サイト】環境省「温暖化がもたらす 深刻な将来影響」
【参照サイト】環境省「気候変動による影響」
【参照サイト】環境省「地球規模の温暖化の影響」

温室効果ガス削減のために生活者ができること


私たちの食べ物を生産する活動によって、CO2やメタンなどの温室効果ガスが排出され、気候変動の一因となっています。ここでは、生活のなかでできる温室効果ガスの排出削減につながる取り組みを紹介します。

地産地消を心がける

地産地消を心がけることでCO2の排出削減につながります。食べ物を購入するときは、住んでいる地域でとれたものを優先的に購入しましょう。ただし、住んでいる地域や購入する食材によっては、近くで採れたものを探すのが難しいかもしれません。その場合は、なるべく国産のものを選ぶようにしてください。

生活のなかで地産地消を意識することで、食料をほかの地域へ輸送するという手間やコストを大幅に減らすことにつながります。車や飛行機を使用した輸送を減らせれば、温室効果ガスの排出や石油などの限りある資源の使用を極力抑えることができるでしょう。

私たちにとっては新鮮で栄養価の高い旬の食材を手に入れられるのもメリットのひとつです。また、輸入食品への依存を減らすことは食料安全保障の確立にもつながります。さらに、生産者の安定的な収入や地域経済の活性化など、地産地消が広まることでさまざまな効果が期待できます。

旬の食材を利用する

できるだけ旬の食材を利用するのもCO2の排出削減に効果的です。たとえば、トマトやキュウリなどの夏野菜と呼ばれるものが季節問わず食べられるのは、ビニールハウスの暖かい環境を利用して栽培されているからです。とくに寒い時期はビニールハウス内を暖かくするために暖房を使用し、それによってCO2が排出されます。旬の食材は新鮮で栄養価も高く、おいしくて安い価格で購入できるなどメリットがたくさんです。積極的に旬の食材を取り入れることを意識しましょう。

【参照サイト】カゴメ「野菜の栄養価と価格、旬と旬以外の時期でどれくらい違うの?」

環境保全型農業で栽培された農産物を食べる

有機農業などの環境保全型農業によって栽培された農産物を食生活に取り入れてみましょう。農業で使用される農薬や肥料など、資材の多くが化石燃料に依存しているのが現状です。有機農業による温室効果ガスの排出削減効果については、さまざまな意見がありますが、持続的に食料の安定供給を続けていくにはできるだけ化石燃料に頼らないことが重要です。近年化学肥料の価格が高騰していることもあり、化学肥料の低減や国産の資源を活用する取り組みが進んできています。消費者である私たちが有機農業などで栽培された農産物を積極的に食べることで、環境に配慮した農業に取り組む生産者がさらに増えていくでしょう。

【関連ページ】リジェネラティブ農業が注目されている理由とは?実践方法や日本での取り組み状況

計画的に買い物をする

食品ロスによる温室効果ガスの排出が深刻な問題となっています。食材が余って捨てるということをさけるためには、計画的に買い物をするのがおすすめです。事前にメニューを決めておいたり、冷蔵庫の中身をチェックしてから買出しに行くことで、食材の買いすぎを防ぐことができます。

値引きシールが貼られているものを積極的に購入する

スーパーなどの小売店では、賞味・消費期限の近い食べ物に値引きシールが貼られているものを見かけることがあると思います。すぐ使用するものであれば、このような食品を積極的に購入しましょう。もちろん、安いからといって買いすぎたり不要なものを購入するのはよくありませんが、上手く利用することで食品ロス対策に貢献できます。

【関連ページ】食品の「3分の1ルール」とは? 食品ロスを防ぐために私たちができること

認証マークのついた食品を購入する

認証マークが付いている食品を購入するのも環境負荷の低減につながります。さまざまな認証マークがありますが、代表的なものでいうとレインフォレストアライアンスなどが挙げられるでしょう。カエルのイラストが描かれたマークが印象的で、主にコーヒーやチョコレートなどの食品に表示されています。コンビニなどでも販売されているのでぜひ探してみてください。

ジビエを取り入れてみる

畜産にともなう温室効果ガスの排出は深刻な課題となっています。そのため、農作物などの獣害対策として捕獲されたシカやイノシシなどの肉を食べてみるというのもおすすめです。ジビエは鉄分が豊富で、栄養価にも優れていますが、捕獲されたもののほとんどが廃棄されてしまっているのが現状です。ネット通販などでも購入できるので、利用してみてはいかがでしょうか。

プラントベース(植物性)の食事を取り入れてみる

プラントベースの食事を日々の生活に取り入れることで、畜産による温室効果ガスの排出削減につながります。週に1回や月に1回でもOKです。無理せず取り入れてみましょう。

【関連ページ】ヴィーガンの人にも!手軽に購入できる植物性のプラントベースミート(代替肉)商品ブランド10選

家庭菜園をはじめてみる

食や環境について深く知りたいという方は、家庭菜園をはじめてみるのもよいでしょう。畑がない場合は、市民農園を借りてみたり、プランターでハーブや野菜を育ててみるのもおすすめです。少しでも食の生産に携わってみることで、その後の意識や行動の変化にもつながるはずです。

【関連ページ】できるだけごみを出さずに家庭菜園を行うには?環境に優しい野菜づくりを目指して

CSA(地域支援型農業)を利用してみる

地域支援型農業ともいわれるCSAを利用してみるのもよいかもしれません。CSAは、消費者が生産者に代金を前払いして、定期的に野菜などの農産物を受け取れる仕組みです。もともとは農産物の生産と消費をお互いに支えあうための取り組みですが、地産地消と同じような効果が得られます。また、環境に配慮した農法を実践している生産者も多く、温室効果ガスの排出削減にも貢献できるでしょう。日本ではまだまだ少ないものの、各地で実践している生産者がいるので気になる方はぜひチェックしてみてください。

食べ物の生産や流通による温室効果ガスの排出は深刻な問題のひとつです。このまま気候変動が進行し、気温が上昇したり異常気象が頻発すれば、いまのような食生活を送ることが難しくなるかもしれません。小さなことだと思うかもしれませんが、私たちが生活を見直すことで気候変動を抑えることが可能です。本記事で紹介した取り組みを参考にしていただき、日々の生活に取り入れてみてください。

【参照サイト】「日本大学商学部「地球温暖化が消費活動に及ぼす影響」
【参照サイト】農林水産省「気候変動が食料供給等に与える影響」
【関連ページ】「自然農」とは?農園アドバイザーに聞く、自由に楽しむ家庭菜園とハーブ栽培
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角家小百合

種苗会社での経験を活かして2018年にライターに転身。得意ジャンルは農業、アウトドア、食など。シンプルで自然にも自分にも優しい生活を心がけています。家庭菜園、料理、キャンプ、フィットネス、ギター、映画鑑賞が趣味の半農半ライターです。