当連載では南米エクアドル在住の和田彩子さんに、現地の暮らしで見つけたゼロウェイストを綴っていただきます。遠い国の話ですが、私たちが幸せに暮らすためのヒントがあるはず。今回のテーマは「わらの家」です。
和田彩子さんのプロフィール
ナマケモノ倶楽部および株式会社ウィンドファームのエクアドルスタッフ。1999年にエクアドルをめぐるエコツアーに参加し、現地の自然とそれを守ろうとしている人々に感銘を受け2002年より長期滞在中。エクアドルでの環境保全やフェアトレードの取り組みを伝える傍ら、家族で「有機農園クリキンディ」を営みながら、手作りの暮らしを模索中。三児の母。
わらの家とは
こんにちは、和田彩子です。私はこれまでに2種類の、わらの家を自分たちの手で作りました。1種類目は、ここの先住民族に伝わってきた伝統的な方式で作るわらの家です。この方式で東屋(屋根をふいただけの簡素な小屋)を作りました。2種類目は「ストローベイルハウス」というわらのブロックを使ってつくるわらの家で、この方式で自宅(母屋)を作りました。
今回は、最初に作った東屋ができるまでをお伝えします。
我が家の東屋
我が家には、敷地内に以下の2つの東屋があります。
- 収穫したものを洗って、市(マーケット)に出すための選別をする時に使っています。ここでワークショップを開催することもあります。
- 岩を軸にした東屋です。ハンモックとか吊り下げて、リラックスとかする場所にしたかったのですが、風がビュービュー当たるのでそこにいられず……。今は薪の置き場になっています。
今回は、収穫したものを洗ったり選別したりするための東屋ができるまでを、お伝えします。
まずは木材を準備!
使用する木材は、以下のメリットがあるので近隣に生えている木を使うことにしました。
- 近場の木を自分たちで切ることで、月のカレンダーに合わせて切ることができる(新月のちょっと前が一番引力が強く、よって、木にある水分が下に引っ張られているため、木の水分が満月時と比べて少なく、腐りにくい&虫がつきにくい)
- 輸送コストおよびCO2排出量を減らせる
- 同じ気候で育った木なので、家を建てるところの環境に適応しやすい
- 地域の木材を地産地消することで、地域の経済に貢献できる
- 皮や枝などを燃料として使える
- 売られている木材はどこで採取されたのかわからない。近隣の二次林から木を買うことで、原生林から伐採された木を使うことを避けることができる
なかなか建築に取り掛かれなかったため(汗)、木は、切った後に3年ほどかけて乾燥させました。その後、木材を「チョチョス(ルピナス)」というあくの強い豆を洗った水につけて防虫対策をしました。
木の枠を組み、屋根にわらを積み上げる
いよいよ建築へ。わらの屋根は、ここコタカチの先住民族の伝統的な家屋で使われていました。ただ、今ではほとんどトタンや瓦に変わっています。義父が「なんとなく覚えている」というので、東屋でわらを使ってみることにしました。
まずは木の枠を組み、いろいよわらの出番です。わらは、環境省から許可を得たうえで、保護区に自生している野生の草(無料)をとってきました。下から屋根をふいていきます。
東屋が完成!
こうして、東屋が完成! 作るのは大変だったけれど、楽しかったです。
ただ、わらの屋根は10年後に朽ちて穴があいてきたタイミングで瓦に変えました。夫のルーツの文化を考えて維持していたのですが、私たちのライフスタイルに合わなかったというのが、その理由です。
わらの屋根は、屋根の下で常に薪をたいて熱で乾燥させ、けむりでいぶせば30〜40年もつと言われています。そして一般的に、先住民族の人々は現在も薪をたいて調理することが多いです。そのため、わらの屋根は彼らの生活様式に合っています。
一方で、私たちはガスレンジで調理をするので、屋根の下でたき火でもしないかぎり薪を燃やすことはありません。そのため、私たちの今の暮らし方では、わらの屋根を維持するのが難しくなり、瓦にしたのです。
とはいえ、わらの屋根への挑戦に後悔はありません。人と自然が共存する社会をつくるためのデザイン手法である「パーマカルチャー」では、そこにある全ての要素、環境、エネルギーを理解しなければなりません。この東屋の屋根を通して、その意味を初めて体感できたように思います。ちなみに、おろしたわらは畑のマルチに使いました。まさに「無駄なし」です。
次回は、我が家の水回り(お風呂・コンポストトイレ)の工夫をお伝えします。お楽しみに!
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曽我 美穂
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