当連載ではエコライターの曽我 美穂が海外在住の方に、その土地ならではのゼロウェイストな試みをお聞きします。今回は、エクアドル在住の和田彩子さんに、現地の暮らしで見つけたゼロウェイストを教えていただきました。
和田彩子さんのプロフィール
ナマケモノ倶楽部および株式会社ウィンドファームのエクアドルスタッフ。1999年にエクアドルをめぐるエコツアーに参加し、現地の自然とそれを守ろうとしている人々に感銘を受け2002年より長期滞在中。エクアドルでの環境保全やフェアトレードの取り組みを伝える傍ら、家族で「有機農園クリキンディ」を営みながら、手作りの暮らしを模索中。三児の母。
エクアドルってどんなところ?
エクアドルは南アメリカ大陸の北西部、赤道直下に位置する国で、ペルーとコロンビアと接しています。公用語はスペイン語です。国の中央をアンデス山脈が南北に走り、西には太平洋、東にはアマゾンの熱帯雨林があるので、山も川も森も海もある自然豊かな場所です。
コタカチ郡ってどんなところ?
私が住んでいるコタカチ郡は、アンデス山脈の西側にあり、文化的にも生態学的にも、非常に多様で豊かな地域です。「自然資源は換金すべき」という観点から、企業や政府から大量伐採や鉱山開発の話をたびたび持ちかけられてきましたが、そのたびに市民が立ち上がり、自然を守り続けています。
ストローベイルハウスを作って住んでいます!
私は、2002年から、エクアドル・コタカチ郡に住みながら、環境保全郡であるコタカチ郡のことや、コミュニティエコツーリズムを日本に伝えてきました。その傍ら、「スロー」をキーワードに6年半かけて、ストローベイルハウス、通称「わらの家」をDIYで作りました。完成した2013年から現在まで、家族5人でこの家に暮らしています。
ストローベイルハウスは、直方体に圧縮したわらのブロックを積んで壁をつくり、土を塗った家です。すべて自然由来の素材でできているので、環境に負荷をかけない建築として世界各地に広がっています。
ストローベイルハウスは、こんな理由で選びました。
- 遮音、断熱効果があり、温度・湿度を調節してくれる(年間を通して少し寒く、近隣でよく爆音のパーティーが行われている地域にある、わが家にぴったり)
- サステナブルな素材を使って自分たちで作れる
ただ、雨に弱いので、軒を大きめに作る必要があり、屋根がずっと大きく、重く、高くなったことは想定外でした。
トイレや非電化洗濯機を自作!
自宅には、水を使わないドライ・コンポストトイレを作って設置しました。理由は下記の2つです。
- 水不足に苦しむアンデスの村々に住んでいるので、水を使わないトイレにしたかった
- 村には下水道の設備がないので、汚水は川にそのまま流れていく。それも避けたかった
使い方は簡単。土やおがくずを排泄物の上にまくだけです。それを1年以上発酵させ、最終的には木の肥料として使っています。匂いもなく、清潔です。
日々の家電製品も、なるべく電気を使わないものにしたいと思い、15年前には古い洗濯機と自転車を組み合わせて、非電化洗濯機を自作しました。今も日常的に使っています。自転車をこぐと洗濯機が回る仕組みです。
使い心地は、ひとことで言うと楽ではないです。電気で動く自動洗濯機では、洗濯機を回している間、他のことができますが、これはずっと漕ぎ続ける必要があるので……。一方で、「水をたくさん入れれば入れるほどペダルは重くなる=水を多く使えば使うほど使用されるエネルギーは多い」ということを体感して理解することもできました。晴れた日に周囲の山々を見ながらぼーっとペダルを漕いでいると、ジムにあるフィットネスバイクで電気を作れるんじゃないかなーと思ったりします。
物々交換が当たり前!
エクアドルでは、毎月の給料が保証されている人はほんの一部です。ほとんどが非正規、あるいは日雇いの仕事や自営の農業・漁業で生計を立てています。そういった事情もあり、私の村では物々交換が日常的に行われています。普段よく交換するのは食材です。例えば、市場に出店した人が売れ残った食材をご近所にあげると、もらった家の人は、お返しとしてその人に別の食材を渡します。
我が家では、畑で採れたとうもろこし、豆、かぼちゃと、私が作ったジャムなどを物々交換しています。
ごみを出さない工夫が、少しずつ浸透中
市が主催している「Feria Naturaleza Viva」(意味:living nature=日本語にするなら「イキイキとした自然のもの」といった意味)という市では、バッグは基本的に買い物客に持参してもらう。バッグを持っていない客には、紙袋かリユースの袋で提供することになっています。
残念ながら現状、エクアドルではまだまだ「リユース」や「捨てない暮らし」が浸透しているとは言いにくい状況です。楽しく、かわいいい取り組みを通して、人々が少しずつでもごみを捨てない暮らしに関心を持てるといいなと思います。
ただ、こういう風に言い切ってしまうのもちょっと違う気がしています。というのも、農村部ではリユース、リサイクル、ゼロウェイストなんて言葉が出てくる前から、そういう考え方が当たり前でした。「近代化によって、先進国の使い捨て文化が浸透し、昔ながらのリユースの文化が廃れてきた」と言った方が、正しいかもしれません。
これからもエクアドル・コタカチ郡の日々の生活で、自分ができることを見つけながら、よりスローでサステナブルな暮らしを実践していきたいです。
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曽我 美穂
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