生ゴミを減らすために買い物・調理・後片付けでできる4つのこと

有田千幸のキッチン

なぜ生ゴミは出るのか。どうしたら減らせるのか。本記事では国際薬膳師の筆者が、日ごろ食材の購入、調理、後片づけの際に心がけていることについて紹介。どうすれば生ゴミ問題に無理なく向き合えるのかについて考えてみました。

「使えるものは使い切る」の意味

私が小学生だったころ、カレーをつくろうと人参の皮を剥いていると祖母にいわれたことがあります。

「人参の皮はね、食べられるんよ?」

野菜の皮は剥くもの。そうとばかり思っていた当時の私にとって祖母のこのひと言はとても印象的でした。

刺身のツマを処分しようとした父といい合いになったり、熟れ過ぎてしまったトマトを畑にこまめに採りに行きジュースにしたり、多少の賞味期限切れなんてものともせずとにかく食べられるものは最後までいただいていた祖母。子どものときは正直、「またおばあちゃんやってるな〜」くらいにしか思っていませんでしたが、今なら無駄を出さないということを大切にしていたその気持ちがよくわかる気がします。

そして私も使えるものはできるだけ使い切りたいという思いの芽生えから、食材の扱いに関してはとりわけ4つのことを心がけるようにしています。

台所に立つ祖母

台所に立つ祖母。Photo by Chiyuki Arita

1 必要な分だけ買う

いちばんはやはり買い過ぎないこと。日々忙しく過ごしていると、食品を多めにストックしておく方が便利なこともあります。そのため、特売などを見かけるとついつい後先考えずに購入してしまう時も確かにあります。しかしその積み重ねが結果として無駄な食品ストックの処分に繋がり、罪悪感を抱くことも少なくありません。

特に生鮮食品は使う分だけを購入することで、使い切れなかった、いつの間にか賞味期限が切れてしまったということも減ります。そして、結果としてその方が安くつくこともあります。

私が買い過ぎを防ぐためにまず習慣づけたのは、出かける前に冷蔵庫の中身をチェックし、「今日は冷蔵庫に何と何がある」とメモすること。食材を使い切れないことが増えてきたときにはぜひ一度試してみてください。

2 皮や芯も食べるつもりで選ぶ

野菜や果物などの農作物を購入するときに気をつけたいのは農薬を使用しているかどうかということ。可能であれば自然農法や有機農法で栽培されたものを選ぶことで、安心して皮や芯まで無駄なく使え、野菜を洗う水の量や生ゴミを減らすことにつながります。

もちろんすべてではなくても、皮を剥く手間を減らしたいじゃがいも(芽や緑の部分は取り除きます)や南瓜だけは自然または有機栽培のものを選です。野菜を中心に、自然農法や有機農法のものを選んでみてください。

皮や芯を食べられるという目で野菜を見ると、子どもの頃に私が捨てようとした人参の皮のように、本当はまだ使えるのに「ずっとそうやってきたから」という理由で捨ててしまっている野菜の可食部があるかもしれません。

たとえば、長芋も火を通していただくのであれば、軽く洗った後に髭をコンロで炙り取り除けさえすれば皮ごと楽しめます。玉葱の茶色い皮は、出汁やソースを取るときに入れて少し煮ることで風味豊かにしてくれます(最後は鍋から取り出します)。

薬膳の観点からいうと、蓮根に至っては藕節(グウセツ)と呼ばれる節の部分にも蓮根本体と同じく、止血や流れの悪くなった状態を改善するなどの効能があるとされているので、せっかくだったら皮や節も一緒に調理して余すことなくいただきたいものです。

すべては考え方やアレンジ次第。そう思えるようになれば、工夫してチャレンジすることがおもしろくなるはずです。

3 状態が気になる野菜は細かくして使う

私がよく行くオーガニックスーパーでは「モッタイナイコーナー」と呼ばれる箱があり、その中には形が歪でいたり、ベストな状態の時期を過ぎてしまった食材が置いてあります。日によって空っぽのこともあれば豊富な日もあり、私は買い物をするとき必ずこの箱をチェックします。

入手した食材で状態が気になるところがあれば適宜その部分を取り除いたり、細かく切ることで問題なく料理に取り入れることができます。

見切り品の箱

この日の「モッタイナイコーナー」には白葱がひと袋。翌朝ポタージュにしていただきました。 Photo by Chiyuki Arita

いちばん万能なのが、どんな食材でもおいしくいただけるポタージュ。特に、玉葱や白葱、じゃがいもや山芋が手に入ったときには必ずといっていいほどポタージュをつくります。

ベースの旨みとなる玉葱または白葱を軽く炒め、そこに皮ごと小さめに切った芋類を足し軽く煮込んだ後、まるごとブレンダーにかけるだけ。このとき、もし冷蔵庫などに野菜の端材などがあればそれも一緒に入れてしまいます。おすすめは、ケール、ほうれん草、人参などの色が鮮やかな野菜。追加で入れる野菜は1種類にしておくと味がまとまります。

形が悪かろうが状態が多少気になろうが問題なし! 最後に好みのミルク類、豆乳、オーツミルクや牛乳を入れてかき混ぜればできあがりです。

この他にも、キャベツや白菜などの葉物は粗みじんにして餃子のタネにしたり、大根などの根菜は細切りやぶつ切りにしてから乾燥させることで切り干しや漬物にしたりします。また甘めの野菜や果物はすりおろしや潰すことでパウンドケーキに入れたりジャムにしたりして活用できます。

中華風大根の漬物

ぶつ切りにしてから乾燥させた大根に紹興酒と醤油、実山椒を加えた中華風の漬物 Photo by Chiyuki Arita

水餃子

「有機春キャベツと大葉の水餃子」 Photo by Chiyuki Arita

キャベツを使った水餃子のレシピは「皮も芯も春野菜を丸ごと食べ切る!食品ロス削減にも役立つ薬膳料理レシピ」の記事で紹介しています。

キャロットケーキ

「有機人参の薬膳キャロットケーキ」 Photo by Chiyuki Arita

ケーキの材料の約半分を人参にして作るキャロットケーキのレシピは「子どももよろこぶ! おいしくて環境にやさしい、ヴィーガンスイーツづくりのススメ」の記事で紹介しています。

形を変えれば使える!」そう思えれば、もったいないコーナーはもはや「宝箱」なのです。

4 コンポストを活用する

それでもどうしても出てしまう、卵の殻や魚の骨、野菜・果物の皮や芯などの生ゴミはコンポストを利用して堆肥化するのもひとつの手。最近では、ベランダ使用できる小型のものや、臭いが漏れないようジップで閉められるトートバッグ型のものなど、都市生活でも取り入れやすいコンポストが紹介されています。

LFCコンポスト

わが家で活用しているLFCコンポスト。2020年から使用しています。 Photo by Chiyuki Arita

ざっくりいうと、堆肥化の元となる基材が入った袋にその日の生ゴミ(300g以内)を入れて軽く混ぜるだけ。それを毎日続けていけば、1.5ヶ月~2か月後には袋が理想の容量に達しそこから堆肥の熟成を行います。そこから2〜3週間ほどで栄養価の高い堆肥ができあがるというもの。

LFCコンポストに生ゴミを入れるところ

生ゴミをすぐに処理できるとシンクや排水溝まわりもすっきり。Photo by Chiyuki Arita

最近ではできた堆肥と引き換えに、野菜を購入することができるという取り組みや堆肥の使い道がないという人に向けての相談会や活用場所の提案を目にする機会も徐々に増えてきました。

マンションなど庭がない家に住む人でも、各自生ゴミを土に返す作業をベランダなどの小さいスペースで “楽しめる” のがこのLFCコンポストの魅力です。

LFCコンポストを混ぜているところ

生ゴミの分解を速め、悪臭の発生を抑えるLFCコンポスト独自の配合基材と混ぜてしまえば、夏場でも不思議と臭いが気になりません。Photo by Chiyuki Arita

生ゴミを減らすこと、それはもしかしたら「よい食材を必要な分だけ買い、無駄なく使い切る」というシンプルな行いで達成できることなのかもしれません。

今回ご紹介したなかで「これならできそう!」と思うもの一つでもあれば、それだけでも生活に取り入れてみてください。

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アリタ チユキ

外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経てライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。週一で台湾朝ごはんとヴィーガンスイーツのポップアップを開催中。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。国際薬膳師。中医薬膳師。家庭薬膳アドバイザー。ワインエキスパート。