新型コロナウィルスの世界的な流行以降、マスク着用は国内外問わず必須の習慣となりました。一時は品薄となったマスクも、2022年現在はさまざまな種類のものが販売されています。
一方で、新しい環境被害として懸念されているのが、「マスクごみ」です。何度も洗って使える布製マスクも販売されていますが、衛生面や利便性といった観点から、まだまだ「使い捨てマスク」のニーズは高いままとなっており、正しく処分されなかったマスクごみが、深刻な環境問題となっています。
そこで本記事では、新しい選択肢として「環境に配慮した使い捨てマスク」を紹介します。マスクごみに悩んでいた人は必見です。
従来の不織布は自然分解するまでに約450年かかる
従来の不織布マスクは、薄い紙や布を不規則に編んだ繊維のように見えます。ですがその正体はPET(ポリエチレンテレフタレート)と呼ばれるプラスチックの一種です。PETを使った使い捨て不織布マスクが街や川に捨てられたり、正しく処分されないまま残ると、一部が海に流れ着いてしまいます。
海洋プラスチックごみのリサイクル団体「Waste free oceans(WFO:ウェイスト フリー オーシャンズ)」の記事「Plastic masks take 450 years to decompose in nature」 によると、自然界に投げ出されたPET配合不織布は、自然分解するまでに約450年かかるそうです。
今回LifeHuggerでは、プラスチック素材を極力省き、環境負荷の少ない使い捨てマスクを集めました。特に次の3つの点に着目したものです。
- 不織布タイプに近い使い勝手のワンウェイタイプ
- 脱プラスチック素材
- 衛生用品としての信頼性はどうか
順番に見ていきましょう。
「ネピeco バイオマスマスク」王子ネピア
1つ目は、衛生用紙メーカーとして高いシェアを誇る王子ネピア株式会社の「ネピecoバイオマスマスク」です。
材料の不織布に植物由来の素材を80%配合し、焼却処分時に発生するCO2を、原料のサトウキビやトウモロコシの光合成によって固定・吸収するカーボンニュートラルを目指したマスクです。
3層に織り込まれた不織布はすべて植物由来原料を配合しています。鼻周りにはワイヤーが入っており、素肌と同じ弱酸性で機能面も問題ありません。
10枚ひと組としているフィルム包装袋も、一部をバイオマス資源を配合しているため、パッケージから本体まで環境に配慮した設計です。
- 購入先:ネピア
「ECOthical Mask(エコシカルマスク)」サムライワークス
サムライワークス株式会社が開発した「ECOthical Mask(エコシカルマスク)」はPLA樹脂をおもな原料としたマスクです。99%を植物由来とし、適切な環境下で微生物を使って水と二酸化炭素に分解可能なサステナブル素材とされています。
PLA樹脂そのものが弱酸性の素材なので、肌に直接触れるマスクの材料としてはぴったりでしょう。ムレにくく優しい肌触りを特徴としています。
なかにフィルターを1枚入れた3層構造。鼻周りには非金属のワイヤーを入れ、立体プリーツ形状に仕上げています。耳ひもからワイヤーまですべてPLA樹脂製です。
「INFIL(インフィル)」東洋紡糸
3つ目はマスクではありませんが、東洋紡糸工業株式会社から販売されているマスク用抗菌シート「インフィル」を紹介します。
サムライワークスのエコシカルマスクと同様に、PLA樹脂が採用されたマスク用フィルターで、抗菌性をアップさせるため4層構造です。保湿性も高く、インナーシートとしてオールシーズン活躍してくれます。
東洋紡糸はもともとカシミヤ加工で約130年もの実績をもつメーカーです。フィルターには、その技術を活かしてPLA樹脂繊維とシルクを組み合わせています。適度な硬さを持たせるため硬質繊維も配合し、長時間の着用でも快適に過ごせるでしょう。
4層すべてがシルクとPLA樹脂繊維でできているため、100%天然由来の生分解性素材です。コンポストなどで廃棄すると、微生物によって完全に分解され、最後には水とCO2になります。
「JITO(ジトー)」アルシア・シナル・アバディ
4つ目は株式会社アルシア・シナル・アバディから販売している「ジトー」です。
日本と同じ海洋国家であるインドネシアで海の汚れ・ごみ問題を解決するために開発されたジトーブランドのマスクは、特別な処理加工を施したスパンボンドポリプロピレン素材を使用しています。
生分解性試験の結果、ジトーマスクはわずか1年半ほどで完全に生分解され、従来の不織布と比較すると差は歴然です。脱プラスチックではないものの、自然に還りやすい素材の研究・開発を応用したマスクとなっています。
不織布に使用されている「疎水性スパンボンド」は、水に強くアレルギーを持っている繊細な肌にもマッチしやすいのが特徴です。不織布そのものも、「メルトブロー」加工が施されており、ウイルスや細菌、微粒子を99%までろ過します。
- 購入先:アルシア・シナル・アバディ
「Marie Bee Bloom(マリー ビー ブルーム)」
オランダのグラフィックデザイナー、マリアンヌ・デ・フロート・ポンス氏が自ら開発し、販売まで手掛けているサステナブルマスク「マリー ビー ブルーム」は、使い終わったあとに土に埋めるとそのまま芽が出てやがて花が咲くというものです。
マスクキャップ(鼻と口を覆う部分)にアスターやコレオプシス、ギリアといった花の種が埋め込まれています。キャップ部分はわら紙、紐は羊毛、紐を調節するストッパーは卵パックを使用し、ブランドロゴは生分解性インクを採用したのだそうです。紐を固定する部分は片栗粉で接着し、生分解性をより高めています。
マスクは、ポンス氏自ら制作しており、生産数に限りがあるようですが、現在はオランダやベルギー、ドイツへの配送に対応しています。
公式サイトには「地球も、ミツバチも、自然も、人も喜ぶマスク『Marie Bee Bloom』を販売します。世界に花を咲かせましょう!」というメッセージとともに、マスクのコンセプトや使用方法などもみることができます。日本国内から購入するのは難しいようですが、反響が多ければ対応してくれるかもしれませんね。
身近で使用頻度の高いものから変えてみよう
環境に配慮された次世代の使い捨てマスクを紹介してきました。
生活から完全にプラスチックを排除することは、まだまだ難しいですが、少しずつ置き換えることはできます。マスクのような身近で、登場頻度の高いアイテムから変えていくのも良い方法ではないでしょうか。
また、各メーカーが販売しているマスクの性能や開発ストーリーなどを知ると、使っている製品がどこからきて、どのように処理されていくのかといった点においても、新しい気付きがあるかもしれません。
毎日のマスクごみが気になっていた人や、環境に配慮したマスクを探していた人は、ぜひ本記事で紹介したアイテムを試してみてください。
【参照サイト】:Plastic masks take 450 years to decompose in nature
【関連リンク】:王子ネピア、不織布に植物由来の素材を80%使ったマスクの販売開始
【関連リンク】:地球にも身体にも優しい、自然素材の布マスクを使ってみよう
斉藤雄二
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