食料の輸入による環境負荷を把握できる「フードマイレージ」。食料自給率が低い日本では、このフードマイレージの高さが問題となっているのを知っていますか。この記事では、フードマイレージの計算方法や世界と日本の現状、フードマイレージを減らすための食事選びのポイントなどを紹介します。
フードマイレージとは
フードマイレージとは、食べ物を意味する「Food(フード)」と走行・飛行距離を意味する「Milage(マイレージ)」という言葉を組み合わせた造語で、食料の輸送による環境負荷を数値化したものです。
1994年にイギリスの消費活動家が提唱した「Food Miles(フードマイルズ)運動」を参考に、2001年に農林水産省の農林水産政策研究所によって提唱されました。
フードマイレージの計算方法
フードマイレージは、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせて計算され、単位は「t・km(トン・キロメートル)」で表されます。
- フードマイレージ=食料の輸送量(t)×輸送距離(km)
たとえば、5トンの食料を2000km離れた場所から輸送した場合、フードマイレージは「10,000 t・km」となります。
フードマイレージの留意点とは?
フードマイレージは計算方法がわかりやすく、食料の輸入によってどの程度の環境負荷があるのかを可視化しやすい一方で、いくつかの留意点も存在します。
輸送方法による環境負荷の違いが考慮されていない
フードマイレージを用いる場合の留意点のひとつとして、輸送方法によって環境負荷が異なることが挙げられます。フードマイレージの算出方法は、輸送量に輸送距離を掛け合わせるだけであるため、どのような輸送方法を利用しているかは考慮されていません。例えば、船と大型トラックでは輸送にかかるエネルギーが異なります。
国土交通省の「運輸部門における二酸化炭素排出量(令和6年4月26日更新)」によると、輸送機関ごとの二酸化炭素排出量(貨物)は以下のようになっています。
- 自家用貨物車:1136(g-CO2 / t・km)
営業用貨物車:208
船舶:43
鉄道:20
このように、輸送方法によってCO2の排出量は異なるため、一概にフードマイレージの数値が大きいからといって環境への負荷も大きくなるとは言えない点には注意が必要です。
食料の生産や消費、廃棄などの環境負荷は含まれない
フードマイレージには、食料の生産・加工・消費・廃棄による環境負荷は含まれていません。
例えば、日本ではビニールハウスや暖房を利用しなければ作れない作物の場合、温暖な国から船で輸送すれば、環境負荷が小さくなる可能性もあるのです。そのため、全体の環境負荷を把握するには、原材料の調達・製造・加工・流通・販売・廃棄にわたる製品のライフサイクル全体を対象に評価を行う「カーボンフットプリント」の方が適していると言えます。
フードマイレージ 世界と比較した際の日本の現状
画像は、流通経済大学から引用。
2001年に計測された結果を見てみると、食料輸入総量は約5,800万tで、フードマイレージは約9,000億t・kmでした。これは、多くの食料を輸入に依存していると言われる韓国やアメリカよりも3倍ほど高い数値となっています。
その後、2010年と2016年にも計測され、年々フードマイレージは緩やかに減っているものの、他国と比べるとまだまだ数値が高いのが現状です。
では、なぜ日本は他国と比べてフードマイレージの数値が大きいのか。それは、食料自給率が低く、食料の多くを輸入に頼っていることが挙げられます。さらに、日本は島国であるため、諸外国と比べると食料を遠隔地から輸入していることが多く、輸送距離がどうしても長くなってしまうことがフードマイレージに影響していると考えられるでしょう。
フードマイレージが高いことの問題点
世界的にもフードマイレージの高さがトップクラスとされている日本ですが、数値が高いとどのような問題があるのでしょうか。
まず1つ目は、食料を輸送することによる環境負荷の問題です。フードマイレージの数値だけでは実際の環境負荷は評価できないものの、遠くの産地から食料を輸入することは、少なからず地球温暖化や環境汚染の原因になると考えられます。
また、最近では感染症の世界的な流行による物流の混乱や、戦争などの国際情勢によって穀物や肥料価格の高騰が起きていることから、海外からの輸入に頼るばかりでは食料供給に支障をきたす可能性もあるのです。そのためフードマイレージは、食料の安定供給を考えていくうえでも重要な指標であると言えます。
フードマイレージを減らそう!持続可能な食事選びのポイントとは?
輸送による環境負荷の低減や持続可能な食料供給を実現するには、フードマイレージを減らすことが欠かせません。ここからは、フードマイレージを減らすために意識したいポイントを紹介します。
フードマイレージを意識する
まずは、フードマイレージを意識して食事選びをすることが大切です。自分が食べている食材がどこで採れたものなのかを知ることで、食に関する環境負荷についてより深く考えるきっかけにもなるでしょう。
国産の食材を選ぶ
積極的に国産の食材を選ぶことで、フードマイレージの削減に貢献できます。日本で生産できるものは、できる限り国産のものを選ぶようにしましょう。
食材宅配や生協では、国産の食材を積極的に取り扱っているところもあります。忙しくて買い物を負担に感じている方は、おすすめのサービスです。
地産地消を意識する
地産地消を意識することも重要なポイントです。住んでいる地域で生産された農産物や畜産物を購入することで、食料の輸送距離が短くなり、フードマイレージの削減に大きく貢献できます。また輸送の距離が短い分、新鮮で美味しい食材を調達できることは消費者にとってもメリットです。
地元産の食材が手に入りにくい場合は、なるべく近隣地域で作られたものを購入するように意識するとよいでしょう。
食料自給率の高い食品を意識して使う
フードマイレージを減らすには、食料自給率の高い食品を使用するのも有効です。日本で食料自給率が最も高いのはお米です。そのため、積極的にお米を食べることを意識してみてください。
また、小麦粉の代わりに米粉を使うのもおすすめです。天ぷら粉の代用やお菓子作りなど、さまざまな料理に活用できます。
家庭菜園を取り入れる
家庭菜園を取り入れることで、フードマイレージの削減につながります。家庭菜園と聞くとハードルが高く感じる方もいるかと思いますが、プランターなどを利用すれば誰でも気軽にはじめることが可能です。
レタスやハーブ類など、比較的簡単に栽培できる葉物野菜からはじめてみましょう。
フードマイレージを意識して買い物をしよう!
この記事では、フードマイレージについて解説しました。日本は世界と比べてもフードマイレージの高さがトップクラスです。食料の輸送による環境負荷を減らし、今後も安定的に食料を供給するには、消費者である私たちもフードマイレージを意識した生活を送ることが求められます。今回紹介したポイントを参考に、ぜひ取り組みやすいものからはじめてみてください。
【関連ページ】「日本の食料自給率」の現状は?課題や改善のための取り組みを紹介
【関連ページ】気候変動と食料生産のつながりを知ろう!日々の食生活で行える取り組みを紹介
【関連ページ】サステナブルな食について考える
【参照ページ】農林水産政策研究所 「食料の総輸入量・距離 (フード・マイレージ)と その環境に及ぼす負荷に関する考察」
【参照ページ】流通経済大学「フード・マイレージの現代的意味」
【参照ページ】 国土交通省:運輸部門における二酸化炭素排出量
角家小百合
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