使用済みカイロがキューブに変身!アップサイクルで水をきれいにするプロジェクトに参加しよう

4月も半ばを過ぎ、春ですね。

振り返れば、今年の冬も寒かった! カイロが手放せなかったという人も多いかもしれませんが、使い終わったカイロ、どうしていますか?

実は今、使用済みのカイロを集めて池や海の水をきれいにするプロジェクトが進められています。それまで捨てていたカイロを有効活用して、「ゼロウェイスト」への一歩を踏み出しませんか?

全国の学校や企業から100トン以上を回収

愛知・名古屋の西部に位置する海部郡の大治町(おおはるちょう)の一角に、大きなフレコンバッグや積み上げられた段ボールが並ぶ倉庫があります。全国各地から使い捨てカイロを集めるのは、大阪に本社を構えるGo Green Group株式会社の物流センターです。

「カイロは、北海道から沖縄まで全国から届けられます。個人の方だけでなく、学校や企業などからも寄せられ、これまでに100トン以上のカイロを回収しました」。こう話すのは、2018年にGo Green Groupを立ち上げた代表の山下崇さん。使い捨てカイロを活用した水質浄化剤「Go Green Cube(以下キューブ)」の製造をメインに事業を運営し、2021年に全国からカイロを回収する取り組みを始めました。

全国から寄せられたカイロの開封作業には地域の子どもたちも参加 ©︎Go Green Group株式会社

カイロが水質浄化剤に生まれ変わる

山下さんがカイロのリサイクル事業に取り組んだのは、東京海洋大学の佐々木剛教授の研究内容を知ったのがきっかけです。カイロに含まれる二価鉄イオンが水中に溶出すると、ヘドロに含まれる硫化水素やリン酸と結合して無害になる点に注目し、水質改善につなげていたのです。以前、コンビニオーナーとして、食品ロスの問題を感じていた山下さんは、「ゴミを使って環境が良くなるなんて!」と驚き、これを事業化できないかと考えました。

油圧プレス機でキューブをつくる山下社長 ©︎Go Green Group株式会社

佐々木教授は、Go Green Groupの取り組みに以下のようなメッセージを寄せています。「使い捨てカイロを用いたキューブの鉄炭団子は、二価鉄イオン溶出体の技術がもとになっていて、私たちの研究室で性能試験が行われています。試験の結果、硫化水素やジメチルサルファイドなどの揮発性硫黄化合物を除去し、リンを吸着し富栄養化を防ぐなどの効果が証明されています」。

佐々木教授らは、東京・品川キャンパス近くの占用許可海域にてフィールド試験を実施し、 COD(有機物を示す指標)が減少するだけでなく、多様な生物の出現をも観察。これまでのフィールド実験では、環境や生物に悪影響を及ぼす結果は出ておらず、「Go Green Cubeは環境改善につながると確信している」と言います。キューブは食物連鎖の最下層に位置する、植物性プランクトンの生育に適した環境をつくるため、水生生物にとって理想的な水環境を維持します。

キューブの効果 ©︎Go Green Group株式会社

もっと広い範囲の水環境改善に役立てたい

回収した使い捨てカイロがキューブになる過程では、中身を開ける作業を地域の子どもたちが担ったり、障害のある人も加工に携わったり、次世代の環境教育や多様な人が働ける社会づくりにもつながっています。

Go Green Groupでは、「国連海洋科学の10年」に採択された佐々木教授提唱のプロジェクトにも参画。キューブは、これまで関西を中心に、寺社仏閣や役場の池、世界遺産の古墳の濠などで利用され反響を読んでいます。

キューブを投入し、3カ月できれいになった池(大分県・圓龍寺)©︎Go Green Group株式会社

小さなスペースで始まったカイロ再利用の取り組みは今、全国に広がっていますが、今後はキューブを利用してより多くの地域の水質浄化に貢献することが目標です。

そのためには私たち一人一人の協力が不可欠です。カイロを再利用してゴミを減らし、汚れた池や川などを見つけたら、キューブできれいな水質環境づくりに挑戦してみませんか?

ちなみに筆者は、近所の共同畑の水やりに使う雨水ボックスにヘドロが溜まっているのが気になっていて、キューブを利用してきれいにできないか実験予定。また、今まで1kg単位でしか販売されていなかったキューブは、100g単位(約20粒)での販売が可能になりました。台所の流しのぬめりや臭いを抑えてくれる効果があるため、台所でも利用しています。(台所での利用方法はこちらを参照ください)

流しの臭いやぬめり対策にも活用できます

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新海 美保

新海美保(しんかい みほ)。出版社やPRコンサル企業などを経て、2014年にライター・エディターとして独立。雑誌やウェブサイト、書籍の編集、執筆、校正、撮影のほか、国際機関や企業、NPOのPRサポートも行っている。主なテーマは国際協力、防災、サステナビリティ、地方創生など。現在、長野県駒ヶ根市在住。共著『グローバル化のなかの日本再考』(葦書房)ほか