ゼロウェイストな買い物の心がけー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第56回目となる今回は、「ゼロウェイストな買い物の心がけ」です。

「買い物のごみ」は難易度が高い

麻子:今月は「買い物の心がけ」について話してみましょう。

雄一郎:ゼロウェイストやプラスチックフリーなど、「ごみやプラスチックを減らそう!」となった時、よく言われるのが「買い物のごみを何とかしないと!」ということ。

麻子:でも、買い物のごみを減らすのって、難易度が高いよね? 「やっぱり減らせなかった、失敗!」となっている人、わりに多い印象…。

雄一郎:そうだね。量り売りや裸売りが広がっている欧米ならともかく、日本は基本的にほぼすべての商品がプラパッケージ済みだし…。それを避けるのはなかなか難しい。

僕が思うに、「ごみを減らす」の中でも、「買い物のごみ」のはかなり難易度が高い部類に入る気がする。どうせやるなら、まずは「簡単に減らせるところから」スタートするのをおすすめしたいです。

麻子:たとえば、ラップをなくしてみるとか、「使い捨て製品」を「リユースできる製品」に変えたり、「長持ちする製品」に変えたり。

雄一郎:そういったことは、「自分の決断ひとつ」で変えられる。でも、買い物のパッケージごみは、自分の決断だけでは何ともならなかったりするから。

麻子:とは言え、買い物のごみを減らすのももちろん大事。そんな中で私たちが日頃から工夫していること、心がけていることについてお話ししてみましょう!

あきらめず、無理せず、「できること」を

麻子:まず一番気を付けていることは、完璧にできないからと言って、できる工夫まで手放してしまわないこと。「できる範囲でできることをする」ということ。

雄一郎:一般には「難しい」と思われがちな「マイ容器」だけど、もちろん日本では使える場は限られるけど、それでも「まったく使えない」わけじゃないものね。

麻子:うちはパン屋さんに竹かごを持っていくことが多いよね。あとは、肉屋さんにガラスジャーを、魚屋さんにはバットをクーラーボックスに入れたものを持参することが多い。

竹かごにふきんをかける。小さな容器とちがって、パンの「サイズ」に左右されないので便利です

雄一郎:いわゆる「個人商店」と言われるお店では、まだまだマイ容器で買い物をさせてもらえる余地が残っている。

麻子:スーパーに行けば1回で済むところ、個人商店に「わざわざ足を伸ばす」のは大変だったりもするから、うちも「毎回必ず」ではなく、「行ける時だけ」ではあるけど。ガソリンの問題だってあるしね。でも、個人商店は「地元経済の応援」にもなるし、商品の質がいいお店もあるので、「マイ容器のため」ばかりでなく、行く価値があると感じてます。

雄一郎:もちろん、個人商店でも、マイ容器を出すと「エッ?」と戸惑われたり、断られることもあるけど。ただ、小規模なお店ほど、「店主やスタッフさんの裁量次第」という感じで、マイ容器の意味などをきちんと理解してくれるお店も一定数ある。

麻子:大規模店は毎回レジのスタッフさんが違うから、マイ容器を出すたびに「一か八か!」みたいになりがちだけど、行きつけの小規模店なら、いつもおなじみのスタッフさんで「はい~マイ容器ですね~」みたいな安心感があってうれしいです。

行きつけの肉屋さんではいつもこのガラスジャーで買い物。もはや「顔パス」なので説明の必要もなし

簡単にできることも

雄一郎:あと、99%パッケージ済みのスーパーの商品も、すべてが同じようにパッケージされているわけではないので、うちは過剰包装や個包装のものは極力買わないようにしてます。それだけでも、ごみの量はずいぶんちがってくるよね。

麻子:子どもがどうしてもほしがるものはたまには買うけどね。以前に比べれば、包装もだいぶ改善されてきた気はするけど、それでも「わ、すごい過剰包装!」と感じる商品はある。「ノー!」の気持ちで、選ばないようにしています。

雄一郎:「レジでの過剰包装」もある。豆腐や魚のパックをレジに持っていくと、さっと薄いビニール袋に入れられてしまう。全然要らないのに! 

麻子:「よかれと思って」の日本の過剰包装の文化ですね…

雄一郎:あれも同じく「ノー!」。断らなければ、お店はいつまでも入れ続け、お客さんはいつまでも受け取り続け、ループが止まらないので、丁重にお断りします。

麻子:レジの人は動きが効率的で、あっという間に入れてしまうから、断る「タイミング」が勝負を分ける(笑)。順番が回ってきた瞬間に宣言しますー「袋はいりません、薄いビニール袋もいりません。全部このままでお願いします」。

雄一郎:「そんなの大変」と思う人もいるかもしれないけど、1円もかからない。自分の頭の中で「言おう!」と決意すればいいだけなので、ある意味簡単です。誰もやらないと、何も変わらない。だから、ほんの少しでも、変化の波を作り出せたらいいなと思っています。

究極の解決策は?

麻子:最後に、忘れてはいけないのがこれ、「買わない」(笑)。買わなければ、パッケージごみは絶対に出ない。意外にシンプルな解決策。

雄一郎:もちろん、「買わないと困るもの」には通用しないけど。でも、意外に「絶対に必要なわけではないもの」をたくさん買っている現代人。「買い物の必要性そのものを見直す」というのは本質的な解決策に思えます。

麻子:買わなければ、お店に足を運ぶ手間も、選ぶ手間も、開封する手間も、パッケージごみを捨てる手間もゼロ。お金もかからない。

雄一郎:意外にいいことばっかり。「モノがある=良い」という固定観念がどうしてもあるけれど、とらわれない軽やかさを味方につけていきたいですね。

麻子:あと、何だかんだ言いつつも、「ごみがすべてじゃない」という視点も大切かも。商品自体の価値だったり、エシカル度だったり、それを使うことの意味だったり、「買い物」にはいろんな側面がある。ごみを減らすことはもちろん大事。でも、それが簡単ではない場合、「トータルで見て価値ある選択をできているかどうか」。私は「自分なりに納得できればOK」としています。とにかく無理をしない、完璧を求めない、そしてあきらめない。

雄一郎:思い通りにいかないのが現実。その中ではやっぱり、「できる範囲でできることをする」。いい意味で肩の力を抜くことが求められる気がしますね。

菓子パンや総菜パンを買う際は、下にアルミ皿などを敷いた方が洗いやすいです


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola