ダーニングのやり方、靴下の穴をお玉と毛糸で繕う夜の手しごと

チェック柄のシャツに白いボタンを針と糸で縫い付ける手元

11月に入り、衣替えでしまっていたウールの靴下を引き出しの奥から出したら、かかとがうっすら透けていた。一冬よく履いた一足ほど、気に入っているぶん捨てる手が止まります。「直したいけれど、裁縫は苦手」「専用の道具をそろえないとできないのでは」と、そのまま引き出しに戻してしまう人も多いはずです。

ダーニングは、穴の上に縦糸を渡し、そこへ横糸を一本おきにくぐらせて、小さな布を織るように塞ぐ繕い方です。この記事では、お玉や電球、みかんといった家にあるものを台にして今夜から始められる手順と、色の違う糸で「繕った跡を楽しむ」アイデアを紹介します。

1. 穴のあいた靴下を、もう一度履ける一足に

靴下は、衣類の中でもとくに早く傷みやすいもののひとつです。かかとやつま先は歩くたびに靴の中でこすれ、まず生地が薄くなり、やがて糸が切れて穴になります。裏を返せば、傷むのは一部分だけで、ほかの部分はまだまだ元気なことがほとんどです。

ダーニングは、その傷んだ一部分だけを糸で織り直す方法です。穴を縫い縮めて閉じるのではなく、穴の上に新しい布地をつくるので、生地がつれにくく、履いたときにかかとが引っ張られる感じも出にくいのが特徴です。もともとは靴下やセーターを長く着るための家庭の手しごととして広く行われてきました。

寒くなって靴下やニットを毎日のように使う今の時期は、穴に気づくタイミングでもあります。気づいたその夜に手を動かせれば、捨てるか迷う時間そのものが、一足と付き合い直す時間に変わります。

2. 道具は家にあるもので足ります

手芸店には「ダーニングマッシュルーム」と呼ばれる、きのこ形の木の台も並んでいますが、なくても始められます。必要なのは次の4つだけです。

  • 台になる丸いもの:お玉、切れた電球、みかんなど。穴の裏側に当てて、生地をピンと張るために使います。
  • 毛糸:靴下と同じくらいか、少し細めのもの。ウールの靴下なら、ウール系の毛糸がなじみます。編み物の余り糸で十分です。
  • とじ針:毛糸が通る、穴の大きな針。先が丸いものだと、渡した糸を割らずにくぐらせやすくなります。
  • はさみ:糸を切るだけなので、いつものもので大丈夫です。

台の選び方とちょっとした注意

いちばん使いやすいのはお玉です。丸くふくらんだ裏側をかかとに当てると、靴下のカーブにぴったり沿い、柄を持てるので手元も安定します。電球はガラスの面がなめらかで針が滑りやすい反面、割れる心配があるので、使い終わった切れた電球を、力を入れすぎずに支えてください。みかんはやわらかいので、指先くらいの小さな穴にちょうどよい台になります。どれを使う場合も、靴下の口を輪ゴムやヘアゴムで軽く留めておくと、作業中に台がずれにくくなります。

3. 縦糸を渡して、横糸をくぐらせる手順

手順は「範囲を決める」「縦糸を渡す」「横糸を織る」「糸を始末する」の4段階です。小さな穴なら、テレビを見ながらでも一晩で仕上がります。

  1. 台を入れて、穴を平らに張る
    靴下の中にお玉を入れ、穴がふくらみのいちばん高いところに来るように合わせます。生地がたるまず、引っ張りすぎてもいない状態が目安です。
  2. 繕う範囲を決める
    穴のまわりの、生地がしっかりしているところまで一回り広く範囲をとります。穴の周辺で薄くなっている部分も、ここで一緒に含めておくと、すぐ隣にまた穴があくのを防げます。玉結びはせず、糸端を少し残して始めます。
  3. 縦糸を渡す
    範囲の端で生地を小さくすくい、穴の上は糸を渡すだけにして、反対側の生地をまた小さくすくいます。折り返しては隣に平行に糸を渡し、隙間ができないように範囲の端まで並べていきます。
  4. 横糸をくぐらせる
    向きを90度変え、渡した縦糸を一本おきに「上・下・上・下」とくぐらせます。端まで行ったら生地を小さくすくって折り返し、次の段は前の段と上下を逆にします。とじ針の頭のほうから通すと、縦糸を割りにくくなります。
  5. 目を詰める
    数段進むごとに、針先で横糸をそっと寄せて詰めます。織り目が詰まるほど、丈夫で穴の目立たない仕上がりになります。
  6. 糸を始末する
    最後は裏側に糸を出し、繕った部分の裏の糸に何度かくぐらせてから切ります。始めに残しておいた糸端も同じように処理します。

うまくいかないときに多いのは、糸を引きすぎて生地がつれてしまうことです。縦糸も横糸も「少しゆるいかな」と感じるくらいで渡すと、仕上がりが平らになり、履いたときの当たりもやわらかくなります。

4. 繕った跡を楽しむ、3つのアイデア

ダーニングは、目立たないように隠すこともできますが、あえて見せる楽しみ方もあります。暮らしに合わせて選べる3つの方法を紹介します。

アイデア1:色の違う糸で「見せる繕い」にする

グレーの靴下に辛子色、紺の靴下に生成りといったように、あえて色を変えると、繕った部分が小さなワッペンのようになります。縦糸と横糸の色を変えれば、チェックのような織り模様も生まれます。きれいに隠そうとしないぶん、多少の目のゆがみも味になるので、最初の一足にこそ向いています。費用は手持ちの余り糸があれば、新たな出費はほとんどかかりません。

アイデア2:穴があく前の「薄くなったところ」を補強する

かかとが透けて見え始めた段階でダーニングをしておくと、穴があいてから直すよりも範囲が小さく、作業も短く済みます。生地がまだ残っているので、縦糸を渡すときも土台がしっかりしています。洗濯物をたたむときに、かかとを光にかざして確かめる習慣をつけておくと、気づくのが早くなります。忙しくて一度にまとまった時間をとりにくい人に向いた方法です。

アイデア3:ニットの肘や袖口にも広げる

靴下で手順に慣れたら、セーターの肘やカーディガンの袖口の小さな穴にも同じ方法が使えます。肘ならお玉の裏、袖口ならみかんを中に入れると作業しやすくなります。ニットは目に見える場所なので、袖口の両側に同じ色の小さなダーニングを入れて、デザインとしてそろえるのも楽しいやり方です。

5. 全部をきれいに直そうとしなくていい

ダーニングは、目がそろっていなくても、多少ふくらんでいても、穴が塞がって履ければ十分です。最初から完璧を目指すより、一足仕上げてみて、次の一足で少し目を詰めてみる、くらいの気持ちで続けるほうが長く楽しめます。引き出しの中に「繕い待ち」の靴下をため込んでしまうより、気づいた一足から順に、週末の夜にひとつ、と決めておくと負担になりません。

一方で、ダーニングが向いていない場面もあります。

  • 生地全体が薄くなっている靴下:一か所を繕っても、すぐ別の場所に穴があきやすく、手間に見合わないことがあります。
  • 薄手のビジネス用ソックスやストッキング:繕った部分の厚みが靴の中で当たりやすく、毛糸での繕いには向きません。
  • 手を動かす時間をどうしてもとれない時期:無理に抱え込まず、余裕のある季節まで一度しまっておいて構いません。

直すのが難しいと感じた服は、手放し方を選ぶことも、ものを長く循環させるひとつの方法です。回収の仕組みを持つブランドの選び方は、服の回収・リサイクルに取り組むアパレルブランドの選び方にまとめています。繕うことに限らず、暮らしの中でごみを減らす工夫を広く知りたいときは、ゼロウェイストな暮らしのガイドもあわせて参考にしてみてください。

ダーニングに必要なのは、お玉と余り毛糸ととじ針、そして少しの時間だけです。縦糸を渡し、横糸を一本おきにくぐらせる。その単純な繰り返しで、引き出しに眠りかけていた一足が、もう一冬履ける靴下に戻ります。

まずは今夜、かかとが透けてきた靴下を一足だけ選んで、お玉を当ててみてください。色の違う糸で繕ったその一足を履く冬、あなたならどんな色を選びますか?

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Life Hugger 編集部

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