埋めても消えなかったコップが教えてくれた、エコ表示の読み方

スーパーや通販で使い捨ての紙皿やカップを選ぶとき、「生分解性」「土に還る」と書かれたほうを、少し高くても手に取る。そんな選び方をしたことはないでしょうか。

どうせ捨てるものだけれど、土に還るのなら。そう思って払うあの数十円は、まぎれもなく善意の出費です。

では、その善意は最後にどこへ着地しているのでしょうか。それを確かめるために、実際に「生分解性」表示のカップを土に埋め、7か月後に掘り返してみた人たちがいます。

7か月後、コップはほとんど元の形のままだった

国際環境NGOグリーンピースのイスラエル支部は、トウモロコシ澱粉やサトウキビ、木材でできた「生分解性」表示の使い捨て食器——皿、碗、カトラリー、ストロー、ベーキングペーパー、カップなど約10点を購入しました。そして2025年11月から2026年6月にかけて、国内3か所のコミュニティガーデンの土の中に埋め、経過を確認。その結果を2026年9月に公表しています。

結果は、はっきりと明暗が分かれました。木製のフォークや紙製のベーキングペーパーは姿を消しました。一方で、イタリアのILIP社製PLAカップやサトウキビ由来の碗は、分解を約束する表示があったにもかかわらず、当局の認証も裏付けもないまま、ほぼそのままの状態で残っていたといいます。

7か月。季節がふたつ変わる時間です。家庭の生ゴミなら、とうに土に混ざっているはずの長さでもあります。

「消えた」ほうも、還ったとは限らない

ただし、グリーンピースは「消えた=良い結果」とも言い切っていません。

同団体が引用する、グリーンピース・タイとブラパー大学の共同調査「Beyond the Label」。アジア市場で売られる「生分解性」表示の商品11点を、海洋を模した環境・実際の海水・土中埋設という3つの条件で半年近く検証したところ、表示どおりに分解した製品は一つもありませんでした。「バイオプラスチック」と表示されたストローにいたっては、重さの98%がそのまま残っていたといいます。

そして、見た目が消えた製品についても、分解したのではなく、目に見えないほど細かいマイクロプラスチックに砕けた可能性が指摘されています。

つまり土の中で起きていたのは、「還る」か「残る」かの二択ではありませんでした。そこには三つ目の道——「見えなくなるだけ」があったのです。

「分解する」は、条件を言わなければ何も約束していない

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。

グリーンピースの調査によれば、イスラエルには「生分解性」「バイオプラスチック」という表示についての義務的な基準も、それを取り締まる規制機関も存在しません。つまり、科学的な裏付けがなくても、メーカーが自由にそう書けてしまう状態にあります。

今回見つかったPure社製のフォークは、通常のポリスチレン樹脂に「d2w」という添加剤を加えたもので、「自然環境で分解する」とうたわれていました。けれどこの添加剤の役割は、プラスチックを消し去ることではなく、より小さな粒子=マイクロプラスチックに砕くことにあります。アイルランドの裁判所は「分解を早める効果は認められない」と判断しており、EUでは同種の添加剤の使用が禁止されています。

さらにやっかいなのは、食品衛生を保証するFDAマークや、品質・環境マネジメントの認証であるSGSマークが、あたかも「分解性のお墨付き」であるかのように使われていたケースがあったことです。本来、どちらも分解するかどうかとは無関係の認証です。

ここまで見てくると、この問題の形が少しはっきりしてきます。「分解する」という言葉そのものは、必ずしも嘘とは限りません。ただ、どんな条件で、どのくらいの時間をかけて、最後に何になるのかを、その一語は語っていないのです。

私たちが「生分解性」と聞いて思い浮かべるのは、庭の土や家庭のコンポストです。けれど製品の側が想定しているのは、多くの場合、高温と湿度を保ち続ける産業用のコンポスト施設。同じ一語で、まるで違う場所の話をしている。ラベルとの行き違いは、たいていこの隙間で起きています。

日本の売り場で、私たちが確かめられること

今回の調査は、あくまでイスラエル国内での話です。日本の「生分解性」表示の規制状況について、この調査は直接触れていません。

ただ、日本の売り場にも、確かめられる手がかりはあります。1989年に設立された民間団体・日本バイオプラスチック協会(JBPA)は「生分解性プラ識別表示制度」を運営していて、ISO規格の試験基準と環境適合性の審査基準を満たした製品に「生分解性プラマーク」の使用を認めています。対象となる用途には、皿やコップ、フォークといった食器類も含まれています。海については別に「海洋生分解性プラ識別表示制度」が設けられています。

注目したいのは、この制度が材料を登録するリストの中で、「生分解性」と「コンポスト化可能」を別の分類として扱っていることです。専門家の世界では、分解することコンポストで処理できることは、もともと別々の話。売り場のラベルだけが、その区別を省略してしまうことがある、ということでもあります。

もっとも、こうしたマークは法律で義務づけられたものではなく、あくまで任意の認証です。マークがないから違法、という話ではありません。だから読み方としては、「マークがある=第三者に確かめられている/ない=自分では確かめようがない」くらいの温度がちょうどよいと思います。

そしてこの「確かめようがなさ」は、生分解性に限った話ではないようです。消費者庁が2026年8月に公表した実態調査では、139種類の環境ラベルのうち4割強が「エコ」「グリーン」といった言葉やイラストだけで、具体的な説明を欠いていました。第三者機関による認証ラベルを「最も信頼できる」と答えた人が62.2%だったのに対し、企業の自己基準によるラベルでは9.6%。誰が確かめたのかで、受け止め方はこれほど変わります。

正直に書いたラベルが、いちばん選ばれなかった——消費者庁「環境ラベル実態調査」を読む

グリーンピースが呼びかけているのも、特別なことではありません。

  • 表示を鵜呑みにせず、公的に認められた基準(産業用コンポスト規格など)に基づくマークがあるかを見る
  • 「どこで分解するのか」まで書かれているかを確かめる
  • 「エコ」表示があっても、使い捨てそのものより、繰り返し使えるものを優先する
  • 誤解を招く表示を見つけたら、販売元や関係機関に伝える

使い捨てを選ぶ日は、誰にでもあります。来客のとき、屋外で食べるとき、洗い物まで手が回らない日の夕食。それ自体を責める話ではありません。

ただ、棚の前で一度だけ、「これ、どこで分解するんだろう」と思えるかどうか。その小さな問いが、ラベルに書かれていない部分を見る目になってくれます。7か月待って掘り返さなくても、私たちはその問いのほうを、持ち帰ることができます。


【参照記事】

The following two tabs change content below.

Life Hugger 編集部

Life Hugger(ライフハガー)は暮らしを楽しむヒントを紹介するウェブマガジンです。消費や暮らしをサステナブルな方向へと変えていきたいと考えている人に向け、サステナブルなライフスタイル、丁寧な暮らし、子育て、農と緑、健康、家事、レジャーなどに関する情報を紹介しています。
InstagramTwitter