正直に書いたラベルが、いちばん選ばれなかった——消費者庁「環境ラベル実態調査」を読む

詰め替え用のボディソープを手に取ったら、パウチの隅に小さなマークがありました。「この包装材料は再生プラスチックを使用しています」。隣には、何も書かれていない同じような商品。値段はほとんど変わりません。

——たぶん、こっちにしておこう。

そう決めた瞬間、私たちの頭の中では、実はけっこう大胆なことが起きています。消費者庁が2026年8月20日に公表した「環境ラベルに関する実態調査報告書」は、その中身を数字で見せてくれる調査でした。

書いていないことを、私たちが埋めている

調査では、一般消費者1,000人に環境ラベルのサンプルを見せて、それをどう受け取るかを尋ねています。使われたサンプルのひとつが、まさにこの詰め替え用ボディソープのパウチでした。

詰め替え用ボディソープのパウチに貼られたラベル。「この包装材料は再生プラスチックを使用しています」とあるが、使用割合の数値は書かれていない

調査で示されたサンプル(実在の商品ではありません)。使用割合は書かれていない。
出典:消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書」(令和8年8月20日公表)

「この包装材料は再生プラスチックを使用しています」。このラベルを見せて、再生プラスチックがどのくらい使われていると思うか聞いたところ、約7割(73.0%)が「50%程度以上」と答えました。いちばん多かったのは「100%だと思う」で、3割強にのぼります。

お弁当の容器に「プラスチックから紙に切り替えました」と書かれたラベルでは、もっとはっきりしています。削減率を「50%程度以上」と受け取った人が約8割(80.1%)。「100%だと思う」と答えた人だけで、ちょうど半数(50.6%)でした。

ここで大事なのは、これらのラベルに数字が書かれていなかった、ということです。「再生プラスチックを使用」「削減」としか書かれていないものを見て、私たちは半分以上、あるいは全部だろう、と読んだわけです。

そして、数字が書かれていないラベルは、決して例外ではありませんでした。

調べたラベル 数値が明確 明確でない
原材料に再生素材・バイオマス素材などの使用をうたうもの(62種類) 33種類 29種類
石油由来プラスチックなどの削減をうたうもの(25種類) 10種類 15種類
消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書」より作成

削減率にいたっては、6割が数字なしで「削減しました」と伝えていたことになります。

誰も嘘をついてはいません。ただ空欄があって、その空欄を私たちが、かなり気前よく埋めていた。それだけのことです。

「自社基準です」と書いたら、信頼が下がった

では、企業が空欄を埋めればいいのでしょうか。この調査でいちばん考えさせられたのは、その先の結果でした。

同じ「GREEN」マークの3パターン。左からX機関認証、A社の自己基準に基づく、説明なしの無地

出典:消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書」(令和8年8月20日公表)

消費者庁は、同じ「GREEN」というマークを3パターン用意して、どれが信頼できるかを尋ねています。「X機関認証」(X機関は独立した第三者機関だと注記あり)、「A社の自己基準に基づく」(A社は商品を売っている会社)、そして何の説明もない無地の「GREEN」。

ラベルの表示 「最も信頼できる」と答えた人
「X機関認証」(独立した第三者機関) 62.2%
「A社の自己基準に基づく」(売っている会社の基準) 9.6%
「GREEN」の文字のみ(説明なし) 28.2%
消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書」より作成(各ラベルにつき単一回答、N=1,000)

第三者機関の認証が強いのは、想像どおりです。気になるのは下の2つ。「これは当社が決めた基準です」と正直に書いたラベルより、何も書いていないラベルのほうが、信頼を集めていました。

これは売り場での行動そのものではなく、サンプルを見たときの印象を聞いた結果です。それでも、ちょっと不穏な構図が見えてきます。

説明を書かなければ、見た人が勝手に高く見積もってくれる。正直に「自社基準です」と書けば、かえって値踏みされる。数字を入れれば、書いていない競合より小さく見えてしまう。——曖昧なままのほうが、売り場では有利なのかもしれない。

実際、集められた環境ラベル139種類のうち4割強にあたる59種類は、「エコ」「グリーン」といった文字や自然のイラストだけで、説明が添えられていませんでした。

調査ではもうひとつ、トイレットペーパーのパッケージに「ECO」の文字と地球を抱えるようなイラストだけが入ったラベルも見せています。何を訴えていると思うか尋ねたところ、半数以上(55.1%)が「何かしら環境に配慮したエコなものだと思う」と答えました。説明が書かれていなければ、それ以上は読み取りようがありません。

企業側に聞き取ったところでは、悪意というより、どこまで書けばいいのかの基準がないまま来てしまった、という事情が浮かびます。

実は25年前にも、ほとんど同じ指摘がありました。2001年、公正取引委員会が環境配慮をうたう広告表示を調べ、対象範囲があいまい、割合が書かれていない、「エコ」とだけ書かれている——といった問題を整理しています。SDGsという言葉が広まるより、ずっと前のことです。

この25年で、エコバッグを持ち歩くのは当たり前になり、買い物の場はネットにも広がりました。それでも、書かれていない部分の扱いだけは、そのままです。

空欄を埋めるのを、やめてみる

消費者庁は今回、企業側に対して、環境配慮が及ぶ範囲や使用割合・削減率が一部にとどまる場合は、全体だと誤解されない表示にする必要がある、という考え方を示しました。表示のルールは、これから少しずつ変わっていくはずです。

ただ、もしこの状況が「曖昧なほうが選ばれる」ことで続いてきたのなら、変化をいちばん早めるのは、選ぶ側が空欄を埋めるのをやめることだと思うのです。

買い物のときに見たいのは、3つだけです。

  1. 数字が書いてあるか。「再生素材使用」ではなく「再生素材○%使用」。書いていないときは「たくさん」という意味ではなく、単に分からない、という意味です。
  2. 何が対象か。鉛筆のパッケージに森のマークがあったとき、それは鉛筆の木のことなのか、外装の紙のことなのか。ラベルが包装に貼られているときは、対象が包装だけということもあります。
  3. 誰が認証しているか。「認証」の二文字で止まらずに、どこの機関かまで見る。QRコードやURLで基準にたどり着けるラベルなら、その分だけ手間をかけているということです。

これは、環境ラベルを疑うための作法ではありません。むしろ逆で、ちゃんと数字を書いて、認証元を明かしている企業を、そうでない企業と区別して選ぶための作法です。

「再生素材50%使用」と書かれた商品と、葉っぱのマークだけの商品が並んでいたら、数字が書いてあるほうを選ぶ。読む人が高く見積もってくれることを当てにしなくても、正直に書いたほうが売れる。そういう売り場になったら、いちばんいいですよね。

次に「エコ」の文字を見かけたら、ほんの少しだけ立ち止まって、書かれていないことを想像で埋めていないか、確かめてみてください。


参考:消費者庁表示対策課「環境ラベルに関する実態調査報告書」(令和8年8月20日公表)

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Life Hugger 編集部

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