ネイチャーポジティブ(自然再興)とは・意味

公園の木々が色づき、どんぐりや落ち葉を拾いに出かけたくなる季節になりました。ネイチャーポジティブ(日本語では「自然再興」)とは、生物多様性の損失を止め、反転させて、自然を回復軌道に乗せることです。自然を「これ以上減らさない」だけでなく、「回復させる」ところまで目指す考え方で、日本では2030年に向けた国の目標として掲げられています。

このページでは、カーボンニュートラルとの違いや、陸と海の30%以上を守る「30by30」目標の中身を説明します。あわせて、食・服・ベランダの植物といった、毎日の暮らしとのつながりも紹介します。

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブは、英語の「Nature(自然)」と「Positive(プラスの)」を組み合わせた言葉です。環境省は日本語で「自然再興」と表し、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことと定義しています。

生物多様性とは、さまざまな生き物がいて、それぞれがつながり合っている状態のことです。森や川、海、田んぼや里山に暮らす動植物や微生物が支え合うことで、私たちが口にする食べものや、きれいな水、服の素材となる植物も育まれています。

「減らさない」から「回復させる」へ

これまでの自然保護は、開発や汚染から自然を守り、失われるスピードを緩めることが中心でした。ネイチャーポジティブは一歩先に進み、減り続けてきた自然を、以前より豊かな状態へ戻していくことを目指します。

たとえば、人の手で別の用途に使われてきた土地に草花を戻し、虫や鳥がすめる場所に育て直していく。荒れた湿地や里山に手を入れ、生き物が行き来できる環境を取り戻していく。こうした「取り戻す」動きこそが、ネイチャーポジティブらしい取り組みです。

カーボンニュートラルとの違い

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにすることを目指す考え方で、主に気候変動への対策です。一方のネイチャーポジティブは、生き物や生態系そのものの回復を目指します。

この2つは別々のものではありません。森や湿地、海草の茂る浅い海は、生き物のすみかであると同時に二酸化炭素を吸収する場所でもあります。自然を回復させることは、気候と生き物の両方に関わる取り組みです。

ネイチャーポジティブが広まった背景

ネイチャーポジティブという言葉が国際的に知られるようになったきっかけは、2021年のG7コーンウォール・サミットです。首脳コミュニケの附属文書「G7・2030年自然協約」でこの言葉が使われました。

その後、2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、2030年までの世界の目標となる「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。この枠組の2030年ミッションにも、ネイチャーポジティブの考え方が反映されています。

日本では「生物多様性国家戦略2023-2030」で、2050年に「自然と共生する社会」を実現するというビジョンに向けた「2030年ミッション」として、ネイチャーポジティブが掲げられています。自然を守る取り組みに、2030年という具体的な期限が付いたことになります。

30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標とは

ネイチャーポジティブとあわせてよく目にするのが「30by30」です。2030年までに陸と海の30%以上を、健全な生態系として効果的に保全するという目標で、昆明・モントリオール生物多様性枠組の2030年グローバルターゲットの1つです。日本はこれを、ネイチャーポジティブ実現に向けた目標の一つに位置付けています。

日本では2023年1月時点で、陸地の約20.5%、海洋の約13.3%が国立公園などの保護地域に指定されています。30%に届かせるための方法は、主に次の2つです。

  • 国立公園などの保護地域を広げ、その管理の質を高める
  • 保護地域以外で、生物多様性の保全に役立っている地域(OECM)を設定し、管理する

2つ目のOECMは、法律で指定された保護区でなくても、結果として生き物のすみかを守っている場所を保全の仲間に加える考え方です。自然を守る担い手が国や自治体だけでなく、土地を持つ企業や地域へと広がっていく点が、30by30の特徴です。

暮らしの中のネイチャーポジティブ

国や企業の目標に見えるネイチャーポジティブも、毎日の選択とつながっています。食べもの、服、住まいのまわりの小さな緑。無理なく続けられることを、ひとつ選ぶところから始められます。

食:旬のものを選び、食べきる

食べものはすべて、土や水、受粉を助ける虫といった自然の力で育っています。旬の野菜や近くの産地の食材を選ぶこと、買いすぎずに食べきることは、食べものを育てる土地や水への負担を減らすことにつながります。冷蔵庫の中身を把握してから買い物に出る、という小さな習慣からでも十分です。ごみを減らす工夫をまとめたゼロウェイストのガイドも、台所の見直しのヒントになります。

服:長く着て、手放すときは次へつなぐ

綿や麻、ウールなどの天然素材も、畑や牧草地、水といった自然から生まれます。気に入った服を手入れしながら長く着ること、着なくなった服を譲る・売るなどして次の持ち主につなぐことは、新しい素材を生み出すために使われる土地や水を抑える選択です。次に服を買うときは「何年着たいか」を考えてから選んでみてください。

庭やベランダ:小さな生き物の居場所をつくる

ベランダのプランターに花の咲くハーブを植えると、蜂や蝶が立ち寄る場所になります。落ち葉や野菜くずを土に返すコンポストは、ごみを減らしながら土の中の微生物を育てる方法です。始め方はコンポストのコラムで紹介しています。鉢ひとつ分の緑でも、虫や微生物が暮らせる場所になります。今週末は、ベランダに置く小さな鉢をひとつ選んでみてはいかがでしょうか。

【参照サイト】環境省「令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第2章第2節

【参照サイト】環境省「30by30」

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