当連載ではエコライターの曽我 美穂が海外在住の方に、その土地ならではのゼロウェイストな試みをお聞きします。今回は、オーストラリア在住の川平紗代さんに、現地の暮らしで見つけたゼロウェイストを教えていただきました。
川平紗代さんのプロフィール
学生時代を日本、インド、フィジー、オーストラリアで過ごし、現在はシドニーに落ち着く。学生時代に学んだサステナブル経営学の知識を活かし、環境分野でのエデュケーター、リサーチャー、コンテントクリエーターなど幅広く活動。現在はベイサイド市の市役所の環境課にプロジェクトオフィサーとして勤務し、レジリエンス計画やネットゼロ計画に取り組んでいる。
ごみは色別のごみ箱に分別!
オーストラリアでは、日本と同じく、ごみの分別方法が自治体ごとに異なっています。私が住んでいる地域(ニューサウスウェールズ州ウィロビー市)では、黄色と赤の分別用ごみ箱にごみを出すシステムになっています。
こちらは、私が住んでいるアパートの地下にある、ごみ集積場です。24時間いつでも出せます。
右側の黄色いごみ箱はリサイクル用で、紙、段ボール、缶、ペットボトル、瓶などをまとめて入れます。左側の赤いごみ箱は、リサイクルごみ箱の対象ではないもの、例えば、食べ残し、服、ビニール袋、発泡スチロール、おむつなどを入れます。回収後は業者がさらに分別し、下記のような流れで処理されます。
- トラックで収集されたあと、ごみ処理場へ
- バイオドラムの中で水と空気と混ざり、分別されていく(金属はリサイクルされる)
- メタンガスを発するものは電気に変換される
- 生ごみなどはもう一度処理され、コンポスト場へ送られる
- 3か月間かけてコンポスト場で処理された生ごみは、石炭採掘場の跡地を緑あふれる場所によみがえらせるプロジェクトの対象地に運ばれ、植物肥料として利用される
アパートの各階には、引き出し式のごみ箱もあり、24時間いつでも、ふたをあけてごみを捨てられます。対象は赤いごみ箱に捨てるごみです。
緑色のごみ箱も登場!
ニューサウスウェールズ州にある128の市のうち43市が、garden organic(ガーデンオーガニック=木や草花など)用のごみ箱を採用しています。写真は、友人の家のごみ箱です。
緑色のごみ箱を採用している自治体では、さらに取り組みを一歩先に進めて、緑色のごみ箱をガーデンオーガニック用だけではなく、FOGO (Food Organics and Garden Organics)用に変えているとこともあります。
FOGO用に入れられるのは、コンポストに利用できる生ごみや草、木、花など。これまでも赤のゴミ箱の中の食べ残しはコンポストできていたのですが、それを後から機械で分けていくのは効率が悪いということで、「最初から緑はコンポスト用にすればよいでは」というアイデアが出て、それが徐々にかたちになってきています。
ごみ出しは、自治体が作ったアプリでチェック!
私の勤務先のベイサイド市では、市民向けに「Waste App」というアプリを開発しました。このアプリをダウンロードして自分の住所を入れると、ごみ箱の色別の回収日を教えてもらえます。また、何がどの分別に捨てられるか、何がお金にかえられるか、などの情報も入っています。庭のガーデンコンポスト、ミミズを使ったコンポストの方法も載っており便利です。
現金がもらえる「Return and Earn」の仕組み
オーストラリアには「Return and Earn」がいろんなところにあります。ここに使用済みの瓶や缶、ペットボトルを持っていくと、その場で数を数えてもらえて、1本あたり10セント(日本円で約1円)がもらえます。
私もよく利用しているのですが、ここに行くたびに袋いっぱいのペットボトルや瓶を持ってきた人を見かけます。子連れの方も多いです。こういう場があると、子どもたちが何がリサイクルできるかを体験から学び、使用済みの瓶や缶、ペットボトルはゴミではなくリサイクルする資源で、お金の価値もあるものだと学べるのでいいな、と思っています。
「Return & Earn」は、上の写真のように機械を使って出せる場所が増えてきています。ただ、手動で数える場合もまだまだ多いです。その場合は下記のような手順で進めます。
他にもいろいろ!気軽にリサイクルに出せる場
ここでは、町を歩いていると、不要になったものをリサイクルに出せる場がたくさんあります。こちらは、服のリサイクルボックスで、いつでも自由に服を出せます。
植物園、幼稚園など、町のいたるところに、不要になった本を出すBook Postが設置されています。
こちらは、薬局にあった、空になった化粧品を出すためのボックス。回収後はリサイクルされます。
他にも、オーストラリアには「Suitcase Rummage」という、誰でも参加できるフリーマーケットがあります。スーツケースに売りたいものを詰めて会場に持っていき、運営側に2ドル(約200円)を払ってお店を出すだけの、とても簡単なシステムで古着、絵、家電、植物など何でも売れるので人気があります。
NGOと提携して進めている食品ロス対策
オーストラリアでは、食品ロス対策は、スーパーがNGO(非政府組織)と提携しておこなっていることが多いです。例えば、大手スーパーのwoolworthsは、食品廃棄をなくし必要な人に届ける活動をおこなっている、NGOのOzHarvestと提携。スーパーの賞味期限切れの商品を活用しています。
スーパーには食品の寄付コーナーがあり、お客さんもス―パーで買った商品を、寄付として置いていくことができます。また、買い物をして清算する時に「端数を四捨五入して寄付しませんか?」という表示が出てきます。
暮らしの至るところで、ゼロウェイストにつながる工夫があるオーストラリア。これからも、そんな工夫をたくさん実践していきたいです!
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曽我 美穂
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