チェンマイで暮らすように旅をしていると、「ものは壊れたらその都度直して使うもの」という考えが当たり前のように沁みついていると実感します。今回はタイのチェンマイにて、筆者が実際に経験したゼロ・ウェイストにつながる話、そしてチェンマイ在住の日本人にヒアリングした興味深い活動や話を紹介します。
滞在先のアパートにいる“なんでも屋”さん
私が滞在しているサービスアパートメントでは、なにかあるたびに「うちの“なんでも屋”、“修理屋”をよこすよ」と呼んでくれるのですが、それはいつも館内にいるスタッフのひとり。何ヶ月もの滞在中、何度も彼にお世話になっています。
トラブルはいずれも排水管関連で、この間も排水管から水が漏れて気になったため、来てもらいました。まず確認してから必要な道具を取りに行き、直してくれたのですが、その次の瞬間に水が盛大に噴き出し、結局排水管の一部を新品に取り換えてくれることに。今ではなんの問題もなく使えています。
その後も、ゲストのチェックアウトのたびに彼がバタバタしていたのでオーナーに聞いたところ、「一ヶ所壊れて直したら次はあっち、という具合に修理が続いているのよ、特にエアコン!」と笑っていました。
服の穴も簡単オシャレに!
服・靴下の穴やほつれを簡単にかわいく修復できる「ダーニング」という手法が日本では注目を浴びており、ワークショップなども開催されています。
チェンマイでは穴は開いたまま、やぶれたところもあまり気にしないという大らかな人が多いよう。決して簡単に捨てるのではなく、穴が開いても着続けている人がほとんどです。
そんななか、ある時にとてもかわいい修復を目にしました。筆者はチェンマイでバイクタクシーをよく利用するのですが、そのドライバーのジャケットの肩のあたりに穴が開いていて、その下から生地をあてているのが視界に入ったのです。かなり大きな穴だったため、生地の面積も大きめ。そして、その生地がとても可愛いくて印象に残っています。
こんなふうに素敵に変身するのであれば、穴が開いたり、ほつれたりすることすら楽しみに変わりそうだと感じます。
「日々の修理は頼りになる存在に頼む」|neo食堂(通称 Aeeen)
以前取材させてもらった「neo食堂」のオーナー夫婦のひとり、恵子さんからもおもしろい話を聞かせてもらいました。
【関連ページ】大阪の“おかん”が夫婦で営む「neo食堂」、北タイから食や循環型社会の大切さを発信する
それは町に必ずひとりはいる修理屋さんの話。「頼れる修理屋のおじさん(誰か)が町にひとりはいるよ」と。「例えば、電化製品なら私たちが『エジソン』と呼んでいるおじさんがいて、いつも頼っている」のだそうです。さらにチェンマイ暮らしには欠かせないバイクや車。オーナー夫婦も車、バイク、サイドカーをつけたものを持っているそうですが、それらの乗り物は、また別のバイク好きの青年のいる修理店へ持って行きます。「私たちのボロボロのバイクを見て『またこれ?もう買い換えたら』と笑いながら、それでもさまざまな工夫をして乗れるようにしてくれるのよ」と、恵子さんも笑っていました。今家にあるバイクはいたるところに結束バンドが巻かれているのだそう。日本では考えにくいですよね。
彼女たちのやり取りを想像すると、思わずクスッと笑ってしまいます。このように頼れる職人さんがたくさんいるため、なにかがあればまず彼らに相談しているのです。そういう存在が身近にたくさんあることが暮らしを豊かにしてくれるのだと、彼女の話を聞いて感じました。日本の中古食器を、美しい照明にアップサイクル|アムリタ
チェンマイの旧市街にて、かつてマクロビオティックランチを提供していたカフェ「アムリタガーデン」の店主マキコさんの興味深い活動を紹介します。そのひとつが、セカンドハンドの日本製のガラス食器をアップサイクルしたランプ作りです。物と長く付き合うのは自然なこと
タイ人にとって、物を長く使うのはとても自然なこと。「笑い話になりますが」と、マキコさんが教えてくれたタイ人と国際結婚した人たちの共通の困りごとは、「タイ人の捨てない癖・なんでも拾ってくる癖・収集癖」だとか!
一見ごみのように見える、壊れた家電や家具や乗り物のパーツ…。これらはたいていの家庭の片隅で山となっているのだそうです。マキコさんをはじめ、タイで暮らす外国人からすると邪魔に感じるもの。ただ、「すぐに壊れるものの修理でも、思った以上に役に立つのです。なので必要な習慣なのかもしれないですね」と教えてくれました。
日本製の中古品は人気!?
アップサイクルのランプについてですが、工房を併設した自宅を建設する際にインテリアを探していたところ、思ったようなものがなく、自分たちで作ったのがはじまり。その際に使ったのは、日本の中古食器でした。というのも、チェンマイでは町の規模に対してセカンドハンドショップの数が多く、なかでも日本の製品を集めた日本のセカンドショップは人気とのこと。
中古食器ならではのホッとする感じ、アンティーク調の金具の雰囲気を持つその照明の仕上がりは、期待以上になりました。そしてその魅力をより多くの人に知ってもらいたく、商品化にいたりました。実際にチェンマイの人たちからの評判は上々だそう。
アップサイクルとデザイン性は共存できる
今回の取り組みで、「アップサイクルやリサイクルで、デザイン性を向上する製品作りも可能だと伝えたい」とマキコさん。意外にも同ランプは、アップサイクルの観点から生まれたのではありませんでした。彼女いわく「単純に、サステナブルな素材で格好いい照明を作りたいという想いから誕生しました。アップサイクルであろうとなかろうと、格好いいデザインの照明を作れてうれしく思っています」とのこと。それはつまり、ひとつのものをなるべく長く使いたい、そして暮らしを彩る素敵なアイテムを作りたいという想いから生まれたプロダクトなのです。そしてそれが可能だということを、アムリタのランプが照明してくれました。
アップサイクルの商品を通して
日本の中古食器をタイ・チェンマイでアップサイクルして商品化。日本人のマキコさんとタイ人の旦那さんにピッタリのプロジェクトですね。同アップサイクルランプは、チェンマイで年に一度開催される「チェンマイクラフトウィーク」というイベントで、2022年2月に初めてお披露目。その年のイベントのテーマがなんと「アップサイクル」であったことが後押しとなりました。その際、タイで多くの大手百貨店やスーパーを抱えるセントラルグループのマーケテイング担当者より声がかかり、そのご縁で今までずっと、タイ最北端の県・チェンライにあるセントラルデパートのノーザンクラフトコーナーにてディスプレイ販売されています。
ゆくゆくはチェンマイのカフェのインテリアとして普及し、さらには家庭の灯りとして世界に飛び出ていって欲しいという想いで、今はチェンマイのアップサイクルイベントやマルシェなどに出店されています。
アムリタが旧市街に復活!
そして10月24日には、旧市街にコスメと雑貨のショップ「amrita(アムリタ)」がまずはポップアップショップとしてオープン!かつて「アムリタガーデン」があった場所の近くで、アクセスもいいのでぜひ。タイ人による手作り雑貨やオゾン化オイルの購入はもちろん、実際のランプや、アップサイクルのインテリアも見ることができます。チェンマイに滞在し、肌で感じたゼロ・ウェイストな取り組み。長持ちさせるため、そして捨てないための工夫について紹介しました。チェンマイの習慣を取り入れ、個人でできること、またそのようなサービスを提供しているショップに関心を持つことも、ゼロ・ウェイストな暮らしのためにできることではないでしょうか。
【参照サイト】Aeeen
【参照サイト】upcycle|アムリタ チェンマイ
【関連ページ】タイをサステナブルに旅する!チェンマイのおすすめスポットをレポート
mia
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