タイは観光地として世界中の人を魅了する国のひとつ。日本からは飛行機で6時間程度とさほど遠くないこともあり、日本人からも大変人気です。
甘さと酸味がクセになるスパイシーなタイ料理をはじめ、日本の寺社とは異なるカラフルで個性的なワット(お寺)や、山岳地帯から海辺のリゾートまで豊かな自然があり、「マイペンラーイ(大丈夫)!」と声をかけてくれる、おおらかで温かい人々が暮らす魅力的な国といえます。
そんなタイのゼロウェイスト事情はどのようなものでしょうか。今回は2006年よりタイを何度も訪れ、これまでに合計1年ほど滞在している筆者が旅人目線でリサーチし、現地の人にヒアリングしたことや行ってみた場所などを紹介します。
タイとごみの課題
2020年のタイの廃棄物総排出量は4,400万トン。今年発表された2021年の廃棄物は4,095万トン(※1)であり、タイの人口が日本人の約半数にあたる6,609万人(2022年)であることを考慮すると、廃棄物の量は決して少なくありません。
もともと外食文化のあるタイでは、コロナ禍以降にフードデリバリーが急増。コロナ禍が明けた今でも、ドリンク一杯をコンビニなどからデリバリーしてもらう人も。それくらいフード宅配サービスが身近になっているのです。天候が不安定なときや体調が優れないときには助けられることもありますが、その都度ごみを出しているという意識は持っていたいものです。
またタイでは、リサイクルに関する教育や啓発活動がまだまだ行き届いておらず、多くの人々が廃棄物の適切な分別方法やリサイクルの知識を持っていないのが現状だとか。実際、現地のタイ人にごみの捨て方を確認しても気にしていない人が多く、分別もプラスチックや瓶類と一般ごみを分ける程度。それすら一緒に回収されることがあり、システムが徹底されていない印象です。実際、リサイクル技術がニーズに追いついていないという現状もあるそうです。
毎日回収されるもの
現在私が滞在している、タイ・チェンマイのサービスアパートメントでの分別は、一般のごみと瓶やプラスチックの2種類。分別の種類が少なく、いつでも好きなときに敷地内のごみ回収ボックスに捨てています。そのボックスはアパートが自治体にお金を払い使わせてもらっており、捨てられたごみは週に数回、回収してくれるとのこと。
また一軒家の場合もそれぞれが自治体にお金を払い、受け取った回収ボックスを使います。日本のようにごみ袋をまとめて出しておく回収場所は見つけられなかったので、各自でボックスを出しておくようです。
確かに筆者が滞在しているアパートメントでも、夕方4時頃になると清掃スタッフがリサイクルやお金になるものをより分けている人を見かけます。こうした作業で得られる金額はわかりませんが、個人の収入になることがモチベーションにもつながるのでしょう。
旅人・ローカル問わずおすすめしたい循環型スポット
余分なごみをなるべく出さずに循環型の仕組みを応援したいという想いで、筆者が訪れたスポットや店舗を紹介します。個人的にとても気に入って、繰り返し訪れている場所ばかり!きっと楽しんでもらえるはずです。
◆プラごみを減らし、循環を目指すマーケット
チェンマイにはローカルや観光客が訪れるマーケット(市場)が、市街地・郊外問わず点在しています。ローカル向けの多くは食料品を売るブースや、調理してその場で提供する飲食ブースが並ぶ、活気のある市場です。さらに、観光客向けのブースは手頃で多様なお土産を購入できる店が中心です。近年はハンドクラフトやオーガニックの食材を使ったマーケットも増えつつあります。特に注目したいのが、旧市街より車で5分ほどのところにある「Jing Jai Market(通称JJ Market)」や、チェンマイの最先端とも称されるニマンヘミン界隈から車で10分ほどの距離に位置する「Baan Kang Wat(バーン・カーン・ワット)」の2つ。
行くのであれば、なるべくこのような自然環境に配慮したマーケットを積極的に選び、現地のゼロウェイストに参加してみてはいかがでしょうか。
◆古着ショップ
長期滞在の旅人が多いことも手伝ってか、タイには古着ショップも少なくありません。そこにはローカルブランドというよりも、日本でもよく見かけるプチプラファッションの「ZARA」や「H&M」、そして「ユニクロ」などが。チェンマイで中長期間を過ごした海外の人たちが置いていった衣類だと推測できます。個人的にはなるべくファストファッションを買わないようにしていますが、こちらではマーケットで販売されているローカルの衣類よりも、作りが丈夫で持ちがいいものもあるため、ケースバイケースで着用しています。おすすめの古着ショップは、特に大きくアクセスも良好な旧市街にある「Love70s」。こちらは店名通り、70年代のいかにも古着といったテイストの服が多め。かわいいワンピースやシャツなどの掘り出し物もありますので、ぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。また、空港近くのモール「セントラルプラザ」では常設しているのか、行くたびに古着の販売を見かけます。入り口辺りから別のスペースまで、かなり広い場所を確保しています。コンサバティブで着回しやすいラインナップがお好みであれば、断然こちらがおすすめです。
「Love70s」
「Tiger」 ※旧市街よりアクセスのいいピン川沿いの店舗
「Reused Clothing」
◆量り売りショップ
チェンマイにおいて、量り売りショップはまだ一般的ではありません。私が見つけたのは、JJマーケット内にあるスーパーマーケット「TOP GREEN」内や、古着販売もしている「セントラルプラザ」内にある、洗剤やソープ系の量り売りスペース。容器を持参、もしくは購入して詰めるスタイルですが、旅行者には少々ハードルが高めです。長期滞在する際にはぜひ選択肢のひとつにしてみてください。
◆「Free Bird Cafe」
ニマンヘミンにあるヴィーガンカフェレストラン。ゼロウェイストな暮らしを支えるアイテムから中古品、古着の販売までを行う循環型ショップを兼ね備え、飲食代などの支払金額は一部ミャンマーの難民救済へと送られます。毎週水曜日に開催される女性向けのランチ会や音楽イベントなど、さまざまな催し物が開かれていて、飲食以外でも訪れたくなります。
【公式フェイスブック】Free Bird Cafe
◆「neo食堂(通称aeeen)」
発酵食品を専門に扱う、ヴィーガンレストラン「neo食堂」。ゼロウェイストは謳わずとも、食材を工夫して使い切るなどして、なるべくごみを出さない調理や運営をしているため、飲食をするだけで循環型の食生活を実践できます。調味料から麺類まですべて手作りがモットーで、心と体が喜ぶ食事を楽しめる一軒としておすすめです。【関連記事】大阪の“おかん”が夫婦で営む「neo食堂」、北タイから食や循環型社会の大切さを発信する
旅人としてチェンマイで過ごすなかで見えてきたごみ事情、そしてゼロウェイストな選択のためにできることを紹介しました。
これらの課題には政府や自治体も力を入れていますが、まだまだ一般には浸透していないようなので、今後はさらなる変化が期待できそうです。
※2023年9月現在のチェンマイの情報です
(※1)タイの廃棄物管理、再利用率向上の背景と今後の動向
(※2)【関連情報】一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について
mia
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