柔らかくふわふわのスマイリーアースのタオルは、ウガンダ産オーガニックコットン、手作りのシアバター石鹸、そして水のみから作られています。製造工程でも化学薬剤を一切使わず、環境を守りながら作られたタオルです。しかし、環境に配慮しながらのタオル作りは決して簡単なことではなかったそうです。
今回はタオル製造業界の常識を変える取り組みを行う、スマイリーアースの三代目、代表・奥龍将さんを取材しました。
環境負荷が非常に大きいといわれる繊維業界
毎日使うタオルですが、実は繊維業界は環境負荷が非常に大きい産業と言われています。タオルを選ぶ時に、その製造背景までを考えて選ぶ人は少なく、環境に負荷を与え続けてしまっているのが現状です。
スマイリーアースのある大阪府泉佐野市は、「日本タオル製造発祥の地」で、1990~2000年にかけてタオル製造にかかわる会社が1,000社はあったそうです。「道を歩けばタオルを織る音が聞こえきた」という時代、その裏でタオル作りによる工場排水が河川汚染の要因になっていました。環境省の河川水質調査で地域の河川「樫井川(かしいがわ)」が、全国最下位になったニュースを知り、家業がタオル製造である龍将さんは小学生ながらにショックを受けたそうです。
循環するタオルづくりを目指すスマイリーアースとは
そんな繊維業界の中で、環境を守りながら循環するタオルづくりを目指しているのが、スマイリーアースです。スマイリーアースは、龍将さんの父親である二代目竜一さんが、無類のアフリカ好きだったことから始まります。アフリカで出会った、ナイル川の恩恵をふんだんに受けた生命力を感じるオーガニックコットンに魅せられ、竜一さんはタオルを作ることを心に決めます。
完全一貫生産の実現に向けて
タオル製造は通常、それぞれの工程を分業体制として担い、さらにさまざまな企業との関わりのなかで成り立っています。ですが、竜一さんは「ウガンダの農家さんの努力を無駄にしたくない」と、とことん透明度の高いタオル作りに向き合うため、完全一貫生産工場をつくります。
実現するためにはまず、各工程に必要なすべての機械を手に入れる必要があります。集めたのは50年ものなどの中古品。「古い方がいじりやすく、職人のさじ加減で調整がしやすい。実は糸を撚(よ)る技術はイギリスの産業革命時代から変わらないので」と龍将さんは言います。
常識破り?糊を使わない製法
タオルは織る段階で糸が切れたり毛羽立ったりするので、コーティングの役割のある糊が必須だと考えられています。せっかく上質なオーガニックコットンを使っているのに、化学薬剤を使いたくないとの想いから試行錯誤を重ね、化学薬剤の糊不使用のタオル作りが実現しました。
ウガンダ産シアバター石鹸の開発
タオル作りには最終仕上げで洗う工程がありますが、その際に使う化学薬剤で汚染された処理水を流すことは、下水の整っていないこの界隈では、そのまま用水路に流すことを意味しました。
排水汚染を食い止めるための答えを求めてウガンダへ飛び、シアバターと出会います。そこからまた研究と試行錯誤を重ね、そのシアバターと水酸化ナトリウムだけでシンプルな石鹸を作り、洗剤の代わりに使うことに成功しました。
親子で循環するタオル作りを目指す
龍将さんが「スマイリーアース」を引き継いだのは、竜一さんがウガンダ産シアバター石鹸を使い、「自然低温シアバター精練法」で特許申請を行っていた頃。
「実は、私の大学時代は箱根駅伝に出場するほど走りに全力でした。その道で内定も決まっていたのですが、父のタオル作りへの清らかな心と情熱を見て家業を継ぐことを決意し、帰郷したのです」と龍将さん。
こうして親子二代で今までの常識を覆す、環境に優しいタオル作りが始まりました。
「私たちのやり方は、当時の同業者たちから『時代逆行』だと言われました。でもウガンダの農家さんやオーガニックコットンに出会ってしまい、愛着を感じている以上、彼らへの責任を果たしたいという想いがありました。それに次の時代へ進むためにも、タオル作りの全体のプロセスを把握し、タオル屋として本来あるべき姿を知る重要性を感じていました」(龍将さん)
スマイリーアースの循環するタオル作り
工場で使う熱源は、すべて間伐材から
工場の精練・乾燥工程で使用する熱源の100%を、家系で代々受け継がれる里山の間伐材から作るバイオマスエネルギーでまかなっています。
撚糸工程
最初は、糸を撚る工程です。この撚糸の工程を入れることで糸の強度を高め、糊を使わないタオル作りが実現しました。50年ものの旧式機械が並ぶ様子は、迫力がありますね。
整経工程
タオルは経糸(たていと)と緯糸(よこいと)、パイル糸(浮き糸)から構成されます。整経とは、主に数千もの糸を一束として巻き取っていく工程のこと。次の織機にかけていく準備段階です。
製織工程
糸を織り、タオルに形成する工程です。もともとスマイリーアース(奥繊物株式会社)はこの工程を分業として担っていました。
この後に精錬の工程、乾燥の工程など、いくつかのプロセスを経てタオルが完成します。
オーガニックコットンタオルが完成
スマイリーアースのタオルは肌触りが柔らかく、丈夫な仕上がりに。化学薬剤を使わずに、ウガンダ産のオーガニックコットンが本来持つ力を保っているからだそう。
排水を貯めているプールは自然のビオトープに
綿繊維を処理するには高濃度の化学薬剤が必要で、タオルの製造工程において環境負荷が高いものでした。そこで、水と綿のみで綿の油分や不純物を取り除く処理方法「自浄清綿法」を開発し、特許を取得。また、タオルを染色しないなど、工場から出る排水の水質を完全に無害化させることに成功しています。
そのため、工場から出る排水を貯めているプールは、メダカやヌマエビなどが自然繁殖するビオトープになっています。そのビオトープでは、ウナギの自然養殖実験も行なっています。
排水でバナナを育てる
現在、温室を建設中で、そこでビオトープに貯めている排水を使ってバナナを育てる予定だそうです。
コットンのくずも集めて商品化!
織る際に出たコットンのくずも集めて、クラフトカードにして販売しています。「ウガンダコットンに愛着があり過ぎて、すべてを活かし切りたいんですよね」と龍将さん。
タオル作りで、環境を守る
今後、スマイリーアースはタオルの町の未来像を発信する拠点として、地域の教育機関などと連携し、地域の水資源好循環化にタオル製造を通じてチャレンジしていく予定です。
「さらに自然との共生を目指すタオル工場という、新たな価値や未来ビジョンを詰め込んだ世界観を発信できる『Nature Towel Factory 自然と共生するタオル工場』を建設中です。ずっと目指しているのは、タオルの見方を変えること」だと龍将さん。
自分たちの決めた道を愚直なまでに突き進む姿や、「私たちは私たちのチャレンジをしているだけ」という龍将さんの言葉が印象に残っています。
オーガニックコットンを通して、ウガンダと日本を繋ぎながら、環境を守る。その大きなミッションを楽しそうに、そして真摯に取り組まれているのを感じました。
【参照サイト】株式会社スマイリーアース
【参照サイト】環境省_サステナブルファッション
【関連ページ】日本のゼロウェイスト宣言都市まとめ・一覧
mia
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