さまざまな理由で出荷規格から外されてしまった「規格外野菜」は、そのほとんどが廃棄されてしまうという現状があります。最近では、食品ロスの観点からできるだけ規格外野菜を活用していこうという取り組みも見られるようになってきましたが、一筋縄ではいかない部分もあるようです。
そこで今回は、規格外野菜の基本的な考え方や抱えている課題をわかりやすく解説するとともに、規格外野菜の販売を行っているサービスを紹介します。
規格外野菜とは
規格外野菜とは、形がいびつであったり色が薄かったりといった理由で流通規格からはじかれた野菜のことを言います。
出荷規格については都道府県やJAなどによって細かく決められていて、産地ごとの許容範囲にも多少の違いがあります。例えば、広島県のJAが定めているトマトの出荷規格では「色・形・大きさ・腐敗の有無などのすべてが良好なものはA」、「目立たない程度の傷があるものはB」、「変形や傷が見てわかるが軽微なものはC」とされていて、それ以外のものは規格外野菜の扱いになっています。
規格から外れてしまった野菜以外にも、価格と供給の安定化を図るための出荷調整など、さまざまな理由から野菜が廃棄されてしまっているのが現状です。
年間に廃棄されている野菜の正確な量は公表されていません。しかし、農林水産省が発表している作況調査の収穫量と出荷量を比較してみると、2021年産の春野菜では約13万トン、夏秋野菜では約31万トンの野菜が出荷されずに廃棄されていることがわかります。
※参照:作況調査(野菜)| 農林水産省
最近では日本でも「食品ロス」という言葉を耳にすることが多くなってきましたが、規格外野菜をはじめとする廃棄野菜はこちらに含まれていません。
規格外野菜が抱える問題
野菜の出荷規格は、収穫した野菜を安定的に流通させるためのシステムです。とは言え、食べられるものが大量に捨てられてしまうことにもったいなさを感じる人は多いかと思います。それでも見た目の悪いものは消費者に選ばれにくく、結局売れ残ってしまうという背景から、スーパーなどの小売業者はA品を中心に取り扱っているのが現状です。
色や形が悪い規格外野菜も加工してしまえば気にならないと消費者の私たちは考えがちです。それも機械調理が多い製造業者などでは不ぞろいな野菜は扱いにくく、価格の安さや供給の安定性で輸入野菜の方が優位になってしまうという状況があります。
以上のように、規格外野菜の有効活用には課題が残るため、そのほとんどが流通されずに廃棄されてしまっているのです。
規格外野菜を購入できるサービス
フードロス削減の一環として規格外野菜を扱っているお店やサービスが増えてきています。ここでは、規格外野菜を購入できるサービスの特徴やおすすめポイントを紹介します。
ポケットマルシェ
ポケットマルシェも生産者から直接購入できる産直ECサイトです。商品について気になることがあれば、生産者に直接質問できるというのが特徴で、安心して買い物できます。規格外やワケありの商品については食べチョクよりも数が多く、価格もリーズナブルな印象です。
産直アウル
産直アウルは、農産物や海産物を生産者から直接購入できる産直ECサイトです。販売する商品の生育状況などを生産者が投稿する機能があり、買い物の際に役立てることができます。規格外野菜や訳あり品をお得に購入することができます。
食べチョク
食べチョクは農産物や海産物を生産者から直接購入することができるサービスです。いくつかある産直ECサイトの中でも商品のバリエーションが豊かで、生産者へのリスペクトやそれぞれの生産者が持つこだわりを感じられる商品ページが特徴です。
規格外品の販売以外にもサステナブルな取り組みに力を入れていて、環境に配慮した生産方法で作られた商品や、できるだけプラスチックを使用せずに梱包された商品も販売されています。
大地を守る会
食材の宅配サービスを手がける大地を守る会では「もったいナイシリーズ」として、規格外野菜をはじめお肉やパンなどの販売も行っています。有機野菜や自然食品をメインに扱っているので、オーガニックな食材を探している方にもぴったりのサービスです。
利用時には年会費がかかるので、通常の商品を半額以下で購入できる「お試しセット」から始めてみるのがおすすめです。
única(ウニカ)
ウニカは、不揃いな見た目や傷などをユニークなものとして捉え、規格外の野菜や果物などに特化したオンラインファーマーズマーケットです。商品代金の他に送料がかかるサービスが多いなか、送料無料の商品が多いところもうれしいポイント。商品についての質問ができたり、生産者それぞれの評価を見られたりするので、安心して買い物をすることができます。みためとあじはちがう店
大田市場発のみためとあじはちがう店は、規格外野菜だけを取り扱う野菜の宅配サービスです。商品は2000円と4000円のおまかせパックの2種類で、鹿の肉と野菜がブレンドされたドッグフードも販売されています。商品の内容については公式サイトにある「本日のお品書き」で確認することができます。
近所の道の駅や直売所
規格外野菜を購入するのであれば、近所にある道の駅や直売所を利用してみるのもおすすめです。新鮮でおいしい野菜を安く購入できるのはもちろんのこと、地元で生産されたものを食べることで、輸送にかかるエネルギーの削減にもつながります。
規格外品は流通させない方がいいという考え方も
規格外野菜の購入は消費者にとっては安く買えるなどのメリットがありますが、生産者にとってはうれしいことばかりではありません。
農業では安定的に食料を供給するために、天候による不作などの対策を行っています。たとえば、規格外品が出ることを見込んで需要よりも多めに生産しているものです。供給が足りているにもかかわらずに規格外野菜を流通させると過剰供給になり、野菜の価格が暴落してしまう可能性があります。そのため、規格外品の流通をよく思わない生産者もいるのが実情です。
生産者も消費者も、食べられる野菜を捨てるのは心苦しいと感じる気持ちは共通しているはずです。しかし、規格外野菜をそのまま販売するだけでは解決に至りません。
規格外野菜の廃棄を少しでも減らしていくためには、規格外野菜を使用した乾燥野菜を販売する「OYAOYA」などのように、新たな付加価値を付けて別の製品として販売する、アップサイクル化商品を購入するのも有効な手段ではないでしょうか。
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角家小百合
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