実用性×ゼロ・ウェイストを実現している、アイルランドでの暮らし【前編】【世界のゼロ・ウェイスト】

ダブリンの街並み

当連載ではエコライターの曽我 美穂が海外在住の方に、その土地ならではのゼロ・ウェイストな試みを伺っています。今回はアイルランド在住の相馬さんに、現地の暮らしで見つけたゼロ・ウェイストを教えていただきました。前編では、アイルランドで行われている多様な取り組みをお伝えします!

相馬素美さんのプロフィール

相馬素美1996年横浜生まれ。大学時代はクラシック音楽を学び、2021年からハーチ株式会社で編集者として働く。2023年6月からアイルランドに語学留学し、現地での取材活動などを行う。趣味はおいしいヴィーガンカフェ探し。好きな食べものはチョコレート。

アイルランドってどんなところ?

パブ
アイルランドは、欧州の中でも一番西に位置する、北海道と同じくらいのサイズの小さな国です。イギリスの隣のアイルランド島の、イギリス領である北アイルランドを除いた部分が国土となっています。一年を通して涼しく安定した気候であるため農業が盛んで、アイリッシュビーフや牛乳などが有名です。白い泡が印象的な黒ビール「ギネス(Guinness)」発祥の地でもあり、ライブミュージックを聴けるアイリッシュパブが国の象徴のひとつになっています。ケルト文化の遺跡や広大な自然が魅力の国でもあります。

国をあげてゼロ・ウェイストに取り組む!

ダブリンの街並み
アイルランドは、2020年に国の廃棄物マネジメント政策として、2025年に向けた「サーキュラーエコノミーアクションプラン(The Waste Action Plan for a Circular Economy)」を開始。「ラテ税」と呼ばれる使い捨てカップへの課税、ボトルや缶のデポジット制度の検討など、ゼロ・ウェイストに向けた取り組みを進めています。

実際の生活でも、街中でプラスチックのパッケージやバッグを見かける機会が日本と比べて少なく、暮らしていてプラごみが自然と溜まっていく……ということが少ないように感じます。スーパーをはじめとしたお店では、基本的に「袋をくれる」という選択肢がないので、マイバッグは必須です。特に地元スーパーの「Lidl(リドル)」や「IKEA」の大きなバッグを繰り返し使っている人をよく見かけます。

大きな駅には給水マシンが!

給水マシン
給水マシン

ダブリンには飲み物の自動販売機がほとんどないので、マイボトルを持ち歩いている人が多い印象を受けます。大きめの電車の駅には、かざすだけで水が出てくる給水マシンがあり、片手が塞がっていても使いやすいなと感じました。

プラスチックのパッケージは、全体的に少なめ

商品を買う時に気づいたのですが、日本と比べるとプラスチックのパッケージが全体的に少なめです。お店でプラスチックのストローは基本的に使われておらず、マドラーは木製のもののみです。
パッケージフリーカード
「面白いな」と感じたのは、そこかしこでパッケージなしで売られている、グリーティングカード。代わりに、封筒とカードが離れないようにするための小さなシールがついています。

リサイクルペーパー製など、環境に配慮して作られたカードには、小さなシールすらついていないものも。代わりに、メッセージカードの後ろに環境への配慮についての説明が書いてあります。

自然にインスパイアされたオーガニック化粧品

豊かな自然が美しいアイルランドでは、自然にインスパイアされたプロダクトを作る化粧品ブランドがたくさんあります。国産ブランドにはオーガニックのものが多く、そういったブランドはパッケージをなるべく少なめにしようとしています。特に石けんは、パッケージなしの状態で売られているのをよく見かけます。

アイルランド産プロダクト

左:アイルランド第二の都市コークの近くにあるInchydoneyの自然やビーチからインスピレーションを得ながらプロダクトを作っている「Inchydoney candles」の石けん。

右:イラクサ、キンポウゲ、アイビー、ローズヒップといったアイルランドの定番植物を用いてキャンドルを作る「Field Day」のキャンドル。中にシードペーパーが入っていて、キャンドルを使い終わったら瓶をコンテナにして植物を育てられます。

スーパーにある、電池のリサイクルボックス

リドル_電池リサイクルボックス
こちらはスーパーの「Lidl(リドル)」にある、電池リサイクルのためのボックスです。中にはいつもお客さんが持ってきた電池がたくさん入っています。日本では家電量販店にあるのが一般的ですが、普段からよく行くスーパーに電池のリサイクルボックスがあると、リサイクルに参加しやすいと思います。

実用的な量り売り店「The Soure-Bulk Foods」

お店の外観
The Source Bulk Foods」は、アイルランドに数店舗ある量り売りショップです。今回はそのうちの一つ、ダブリンいちの豊富な品揃えを誇る店舗を訪問しました。
店内の様子

置いてあったのは主に以下のものです。非常に実用的な品揃えで、生鮮食品以外の生活に必要なものがほとんど揃うように設計されているのがGOODだと感じています。

  • 食材(スパイス、小麦粉、お米、グラノーラ、レンティス、パスタ、チョコレート、紅茶、コーヒー、ドライフルーツなど)
  • エシカルグッズ(洗剤、たわし、オーブンシート、グラスストロー、マイボトルなど)
  • オーガニックプロダクト(石けん、化粧品など)
  • お店で作ったナッツバター、お店で瓶詰めした蜂蜜
  • お菓子

商品
私のイチオシは、お菓子類のコーナー。種類が豊富でとてもおいしく、しかも買いやすい値段になっています。なお、容器を忘れた場合はお店で新しい瓶を買えます。また、お客さんから寄付されたリユース瓶を使うこともできます。これを知って、私も使い終わったジャムの瓶などを持っていきました。

食に関するサステナブルな取り組みも多数!

アイルランドは、農業が盛んな国として、「食分野をいかに持続可能にしていくか」を重視している印象です。例えば、アイルランド政府の食糧庁が主導するプログラム「オリジングリーン」には、2024年1月時点で約6万1千の農家、300以上の食関連企業が参加しており、持続可能な食の生産と消費を目指しています。

国内企業のサステナブルな取り組みも盛んです。世界的に人気があるビールの「ギネス」は、今年9月にアイルランドのパブ運営者に向けた「サステナブル・パブツールキット」をリリースするなど、アイルランドを象徴するビールブランドとして、パブセクターを巻き込んでサステナビリティを牽引しようとする様子が伺えます。こちらは毎月公式サイトでコンテンツを出していく形式のものだそうで、エネルギーから始まり、水、廃棄物、コミュニティなどを含む10のキーワードが設定されています。

【参照ページ】サステナブル・パブツールキット

また、アイルランドはウィスキー産業において世界で最も古い歴史を持っており、現在も世界の5大ウイスキー産地に入るほど有名です。国内でも業界はとても大きいと認識されており、ダブリンには観光地のひとつとしてウィスキーミュージアムがあります。そんなアイルランドのウイスキー業界は、世界一のサステナブルなウイスキー蒸溜所を目指してサステナビリティロードマップをローンチしており、みんなで団結して進めていこうという意気込みが見受けられます。

実用性×ゼロ・ウェイストを実現しているアイルランドでの暮らし【後編】」では、筆者が通っているショップやサービスを中心に、現地のお店や政府の取り組みを紹介します。


【関連ページ】<実用性×ゼロ・ウェイストを実現しているアイルランドでの暮らし【後編】
【関連ページ】サステナブルが当たり前!オーストラリアの生活をレポート【世界のゼロウェイスト】
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曽我 美穂

曽我 美穂(そが みほ)。2008年にエコライター・エディター・翻訳者として独立。雑誌やウェブサイトで編集、撮影、執筆、翻訳などをおこなっている。主なテーマはエコな暮らしやSDGs、環境問題。私生活では2009年生まれの娘と2012年生まれの息子の二児の母でもある。現在、富山県在住。個人サイト:https://sogamiho.mystrikingly.com/