実用性×ゼロ・ウェイストを実現している、アイルランドでの暮らし【後編】【世界のゼロ・ウェイスト】

リペアショップ

当連載ではエコライターの曽我 美穂が海外在住の方に、その土地ならではのゼロ・ウェイストな試みを伺っています。今回は【前編】に続き、アイルランド在住の相馬さんに、現地の暮らしで見つけたゼロ・ウェイストを紹介していただきました。

相馬素美さんのプロフィール

相馬素美1996年横浜生まれ。大学時代はクラシック音楽を学び、2021年からハーチ株式会社で編集者として働く。2023年6月からアイルランドに語学留学し、現地での取材活動などを行う。趣味はおいしいヴィーガンカフェ探し。好きな食べものはチョコレート。

身近にある、ゼロ・ウェイストにつながるショップ

アイルランドには、ゼロ・ウェイストにつながるショップがたくさんあります。今回は、私が日常的に通っているショップやサービスを中心に紹介します。

チャリティ団体のセカンドハンドショップが定着

セカンドハンドショップ_外観

ダブリンには、社会的活動を行う非営利団体が運営するチャリティセカンドハンドショップがたくさんあります。

こういったお店を利用することは生活の一部となっているようで、店内はいつ見ても老若男女問わずたくさんの人でにぎわっています。私もよく訪れるのですが、状態の良い洋服やバッグ、アクセサリー小物、本、食器、家具などがかなり安価に手に入るので、気に入っています。洋服や靴の相場は8〜20ユーロで、特に洋服類を中心に扱うショップが多い印象です。売り上げは、運営団体が支援している人たちへ寄付されます。寒くなってきたので、私もトップスの上に着られる質の良いポンチョを購入したのですが、今でもお気に入りです。

なお、運営団体の規模は「Oxfam(オックスファム)」といった世界規模で活動する非営利団体から、アイルランド国内に根付いた活動を行っている団体までさまざまです。団体の活動内容も、癌患者やダウン症患者といった特定の方へのサポートから環境保護まで多様です。
セカンドハンドショップ内観
今回私が訪れた「VINCENT’S」はキリスト教の理念に基づき、経済的に困窮している子どもからお年寄りまでの幅広い年代の方たちに、さまざまなサポートを提供している非営利団体「The Society of St Vincent de Paul」によって運営されています。

食器類の棚

食器類は状態の良いものが多く、値段も1ユーロからととても手頃。ワイングラス、お皿、ミルクピッチャーなど、なんでも手に入ります。

靴の棚

ブーツやスニーカー、パンプスまで、多様な種類の靴を置いています。

アクセサリー

アクセサリーや腕時計、カトラリーなども豊富です。

服

状態が良い服もたくさんあります!

ダブリンは家賃や食費(外食)が高いので、手頃な洋服が買えると本当に助かります。特に数回しか着ないことが多いパーティー用ドレスは、どのお店に行ってもよく見かけます。

アンティークショップやヴィンテージの洋服ショップ、古本市なども街中でよく見かけます。チャリティショップに比べると少し価格帯は高めの印象ですが、インテリア系の骨董品など、面白いものが手に入ります。

なかでも面白いと感じたのは、ヴィンテージ服を重さで買える「キログラム」ショップ!ここでは1着ごとの値札がついておらず、1キロ30ユーロと決まっています。1着だけの時にも、かなりお得な値段で購入可能です。

電子機器のリペアショップが一般的

リペアショップ
電子機器のシェアリング、リペアショップ、セカンドハンドショップも街中で頻繁に見かけます。

写真を撮らせていただいた「Laptoplab and Back from the Future」は、パソコンを中心としたリペアショップ。ここでは電子機器の修理はもちろん、リファービッシュ(修理)した中古PCの販売も行っています。同店の方にお聞きしたところ、「サーキュラーエコノミーの推進に貢献できていることをうれしく思っている」とのことでした!

また、日本にいたときは、例えばプリンターが壊れた時に修理しようとしても、新品を購入するよりもコストが高くなるので「それなら新品に買い替えよう」ということが実家で頻繁に起こっていました。しかし、アイルランドでは「修理代が新品購入よりも高くなることは基本的にはない」とのことでした。そのため、リペアショップは私たちにとって頼れる存在となっています。

リペアショップ

このお店はアイルランド国内に数店舗を展開中!

ダブリンは今ハウジングクライシス(住宅の不足によって起こる価格の高騰)が大きな社会問題となっていて、家賃の高さが生活コストを押し上げています。そのため、必要なものを修理して長く使う、なるべく手頃な値段で買う、といったことができると本当に助かります。

セカンドハンドショップやリペアショップは、生活者の大事なインフラだと感じています。

アプリで簡単&便利!自転車のシェアリングシステム

Bleeper自転車
地下鉄がなく電車の本数が少ないダブリンでは、多くの人がバスを利用しています。街中では、通勤や通学に自転車を使う人もよく見かけます。また、公共交通機関と自転車を使いたい人向けに、自転車のシェアリングシステムがいくつかあるのです。

Bleeper自転車
私も「Bleeper」というサービスを使っています。使い方は簡単!アプリをダウンロードして支払い情報を登録。街中でBleeperの自転車を見つけたら、車体についているQRコードをアプリでスキャンしてロック解除。乗り終わったら街の自転車置き場に停めて写真をアップロードしたら終了です。

Bleeperはサービス圏内であれば、どの自転車置き場に停めても良いのが魅力。終了と同時にメールで請求書が送られてきて、料金は自動で引き落とされます。料金は10分で1.3ユーロ弱(200円程度)。バスは渋滞に巻き込まれることも多く、街中の移動は自転車の方が速いこともあるので、よく使っています。便利で私のまわりでも使っている人がたくさんいます。

サステナブルなショップが、より身近に

アイルランドで暮らしていて、街中の目立つところにリペアやセカンドハンドのショップがあることで、日本で暮らしていた時よりもそれらを選ぶ選択肢が身近になったように感じます。また、日本と比べてごみが出るきっかけが少なく、パッケージも少ないため、開封する手間も省けて一石二鳥だなと感じることも。石けんやカードなど、日本ではきちんと包装されていることが当たり前なものも、意外とパッケージなしでも大丈夫なのだな、と気付かされました。ここでの暮らしの中の気づきを、自分の生活に生かしていきたいです。


【関聯ページ】実用性×ゼロ・ウェイストを実現している、アイルランドでの暮らし【前編】【世界のゼロ・ウェイスト】
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曽我 美穂

曽我 美穂(そが みほ)。2008年にエコライター・エディター・翻訳者として独立。雑誌やウェブサイトで編集、撮影、執筆、翻訳などをおこなっている。主なテーマはエコな暮らしやSDGs、環境問題。私生活では2009年生まれの娘と2012年生まれの息子の二児の母でもある。現在、富山県在住。個人サイト:https://sogamiho.mystrikingly.com/