海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第23回目となる今回は、サステイナブルな寒さ対策の後編です。
冬の小さな心がけ
雄一郎:前編では、暖房についてお話ししました。後編では、暖房以外のさまざまな寒さ対策についてお話ししてみたいと思います。
麻子:まずは、1円もかからない「生活の習慣」。
雄一郎:僕は、冬は夕方5時には雨戸やシャッターを全部閉めて、冷気がなるべく家の中に入らないようにしています。雨戸を閉めることで、室内との間に「空気の層」ができ、断熱効果が出るので。そして、朝はしっかり雨戸を開けて、あたたかい日の光をめいっぱい取り込む!
麻子:「日の光を生かす」はわが家の鉄則ですね。日光さえあれば、ほとんどの寒さは吹き飛びます。晴れた朝などは、冷え切った室内よりも、日の当たった外の方がよほどポカポカあたたかいということもしばしば。そんな時は、わざわざ室内をあたためようとせずに、外に出て洗濯物を干したり、庭仕事をする方が効率がいい。
雄一郎:本当にそう。僕は「ちょっと寒いな…」という時は、食器洗いをすることも多いです。お湯で手があたたまるから。洗い物も片付いて、一石二鳥。「寒い時に、あたたかい家事」は、生産性もあって好きです。
あとはオーブン! オーブンを使うと部屋があたたまるので、オーブンも暖房器具のひとつと見立てて、寒い時をねらってケーキやスコーンを焼いてみたり、せっかくだから長時間加熱するメレンゲを焼いてみたり(笑)。
麻子:私はスープを作ったりする。火を使うと部屋があたたまるし、翌朝あたたかいスープがあると、子どもたちも喜ぶので。
雄一郎:たしかに、料理していると寒くない(笑)。あとはコーヒーを淹れるためにお湯を沸かしながら、食器を拭いたり。心は「ミニ暖炉のそばで食器を拭いている」ようなイメージで(笑)。
大活躍の太陽熱温水器
麻子:あと、わが家には太陽熱温水器という強い味方がいます。
雄一郎:そう、うちの太陽熱温水器は真空管式の高効率タイプで、お風呂だけでなく、台所の給湯にもつないであります。なので、ガスに頼らずに台所でお湯が使える。
麻子:もちろん、冬は温水器の温度が夏のように上がるわけではないので、無尽蔵にお湯が使えるわけではないし、「これはお湯と言うより、ぬるま湯程度だな…」ということもある。でも、たとえば、手洗いや食器洗いなんて、「ぬるま湯」で十分なんです。40℃でないと困るのはお風呂だけ。だから、温水器のお湯が使えることがすごくありがたいです。
雄一郎:「ぬるま湯で十分」なのはガス給湯器も同じで、つい設定温度を「40℃」とかにしがちですけど、手洗いや食器洗いはそんなに高い温度でなくても十分にあったかいんですよね。だから、うちはいつも「32℃」。だいぶ省エネになっているんじゃないかな。
麻子:あと、うちは給湯器は「基本OFF」にして、「使う時だけスイッチオン」にしてますね。「ぬるま湯」どころか、「水だっていい」場面も暮らしの中にたくさんあります。それなのに、ついお湯を使ってしまう…(特に子どもたち!)。だから、仕組みを変えることで、無自覚なお湯の使用を減らせたらなと考えています。
雄一郎:「仕組みづくり」は意外にパワフルですよね。「せっかく沸いたお湯は保温ポットに入れておいて活用する」とか、「お風呂はなるべくみんなが連続で入って、追い炊きを減らす」とか。この辺は「省エネ」の領域ですけど、サステナビリティということを考えた場合、寒さ対策の重要な一部だと感じます。もちろん「できる範囲」でいいと思ってますけど。
迷った挙句の「電気あんか」
麻子:湯たんぽも愛用しています。「部屋全体」を温めるより、「1か所」を集中して温められる湯たんぽは省エネ的にも理にかなっていると思うので。でも、この1年は本当に湯たんぽに振り回された1年でした…。
雄一郎:本当にね(苦笑)。うちはもともと定評あるドイツのファシーの湯たんぽを使っていたのですが、途中で、「あ、これ、ポリ塩化ビニルなんだな…」と気づいて。かなり古びて摩耗も気になっていたし、プラスチックフリーの観点からも、「金属や鋳物の湯たんぽに変えたいな」と思っていて、それがついに実現したのが去年。
麻子:知人に古いものをゆずっていただいて、ブリキと鋳物の湯たんぽのある暮らしがはじまりました。とてもうれしかったのですが、うちは長男が障碍児で…。
雄一郎:寒がりの彼にブリキの湯たんぽを使わせたら、低温やけどを2度も起こしてしまって大騒ぎ。「ブリキはプラの湯たんぽと違って、熱くなりすぎて危険なのか!」と、お湯の温度を下げてみたら、今度は本人が「ぬるくて嫌だ」と大暴れ(苦笑)。自閉傾向があるので、この辺のこだわりはなかなか厄介で。
麻子:それで、「鋳物ならブリキよりも温度の伝わり方がゆるやかかな」と思って鋳物の方を使わせてみたら、今度は床に落として割ってしまった…(涙)。
雄一郎:麻子さん、あの頃はほとんどノイローゼだったよね(笑)。
麻子:もう、我慢の限界を超えて、「こんな風に湯たんぽごときに振り回される暮らしなんておかしい!」って。ネットで調べたら、やっぱり、安全なのは「電気あんか」。「電気に頼るなんて!」と思い込んでいたけれど、電力消費量はびっくりするほど少なく、やかんでお湯を沸かすよりもむしろ省エネな側面も。息子の様々なむずかしさを考えたら、「もう、ここは腹をくくって電気あんかに乗り換えましょう!」ってね。ほとんどコメディだわ(笑)。
雄一郎:ネットで「エシカルな電気あんか」とか「エコロジカルな電気あんか」って必死に調べましたが、もちろんそんなものは見つかりませんでした。だから、エシカルじゃないと思うけど、まずまず評判のよさそうな、電力消費量も低い電気あんかを選んで購入。本当にいいよね(笑)。
麻子:いい着地点を見つけられたと感じています。つくづく、すべてはバランスです(笑)。
「憧れの気持ち」もたのしい
雄一郎:これがわが家の「今」の現状。この先はまた変わるかもしれないけど、とりあえずは満足している。
麻子:今も、友人の家に遊びに行って、薪ストーブとか、ロケットストーブとか、薪風呂とか、「本当にいいなぁ~」って。
雄一郎:僕も思う。やっぱり、それぞれのよさがあるよね。今のところ「うちには難しい」けど、でも、将来はもしかしたら!可能性は常に開いておきたいところ。あと、「火鉢」もね。「離れの小屋で使えたらいいな…」って、古いものを知人にもらってきて、「あ、でも、炭はどうやって作ればいいんだろう?」と思って、今年の冬はそのまま過ぎそう。でも、使いたいな。
麻子:「新しいものを取り入れるたのしさ」「憧れのものを見るたのしさ」も忘れないでいたいですね。「いろいろなあたたかさ」、大切に感じたいです。
【⬇︎前編はこちら】
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服部雄一郎 服部麻子
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