【京都】『ゼロ・ウェイスト・ホーム』翻訳者・服部さんが体験!GOOD NATURE HOTEL KYOTO宿泊レポート

「循環やサステナビリティを意識したホテル」として、オープン当初から様々な媒体で紹介されてきた京都の「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」。5周年を迎えた今冬、やっと実際に宿泊してみるチャンスに恵まれました。どんなホテルなのか、取り組み内容についてもインタビューさせていただいので、詳しくご紹介したいと思います。(服部雄一郎)

どんなホテル?

京都市中心部、四条河原町に位置するGOOD NATURE HOTEL KYOTOは、高島屋に隣接し、京阪グループが運営する比較的規模の大きな宿泊施設です。

環境に配慮した建物を評価する「LEED認証」(シルバーランク)と、利用者のウェルビーイングに配慮した建物を評価する「WELL認証」(ゴールドランク)を同時取得した数少ないホテルとして知られます。ホテル版評価基準による同時取得は世界初とのこと。

フロント脇でひときわ目を引くのが、こちらの「大緑化壁」。京都の植生を再現するテイカカズラによるもので、CO2吸収を目指す建物内の壁面緑化としては国内最大級だそうです。

自然素材が効果的に配された空間が印象的で、ぐるりと見渡すと随所にユニークな工夫が施されていることがわかります。

剥き出しの間伐材が生かされたエレベーターホール

ちょうど5周年記念展示(2024年11-12月)でこんな”ボタニカルライト”も

図書コーナーにはわが家の本が…! ありがとうございます!

さまざまな環境配慮の取り組みについては、無料のガイドツアーでコンシェルジュの方に詳しく説明していただくことができます(宿泊者限定)。せっかくの機会なのに必ずしも希望者は多くないのか、今回はマンツーマンでガイドしていただき、質問もいろいろさせていただけて贅沢な時間でした。

取り組み内容は、生ごみ堆肥化の循環の創出、地産地消やヴィーガン対応、再エネ100%化、客室へのマイボトルやマイバッグの設置、環境にも配慮した植物由来のシャンプー類など多岐にわたります。最近はホテル業界全体で環境配慮の意識が進んでいるとは思いますが、取り組みのきめ細やかさや厚みの点で、やはり環境意識の高いホテルの代名詞のように名前が語られるだけのことはあると感じました。

5周年記念展示では環境配慮の取り組みの全容がわかりやすくパネル展示されていました

こうしたディスプレイに使われる植物も、鉢植えやドライを活用し、ごみになりにくい工夫を凝らしているとのこと

客室の様子

客室の中はこんな雰囲気です。

心地よい無垢のフローリング。スリッパも用意されていましたが、これだけ気持ちのよいフローリングであれば、敢えて履かずに“木のよさ”をたのしむのもありだと思いました。

ちなみに、スリッパはこんな風に用意されていたので思わず開封してしまったのですが、質はよいものでしたが使い捨てタイプのものでした。上記のとおり、結果的には「履かなくてもいいな」と思ったため、ちょっともったいないことをしてしまいました(持ち帰って今後の外出時に使いまわしたいと思います)。

室内の備品も、自然素材が多く取り入れられていて、平均的なホテルとは一味ちがう風情が感じられます。

ウェルカムドリンクやスイーツに「オーガニック」や「フェアトレード」や「アップサイクル」の要素が取り入れられているのも好印象です。ささやかな配慮とは言え、しっかり全方位に意識が向いていないと抜け落ちがちな部分だからです。

好きな月ヶ瀬のお茶があったのは個人的にポイントが高い!

欠けた茶碗が金継ぎして使われ、「プラスの価値」として打ち出されているのもとてもよいと思いました。“効率性”だけ考えれば、きっと新品に入れ替えていく方が遥かにラクでしょうから…。

金継ぎされたポット

パネル展示の中にも金継ぎが言及されています

客室入り口には、滞在期間中に“マイバッグ”として自由に使用できるように布製の買い物袋が。

さらに、“マイボトル”として使用できるようにステンレスボトルも置かれています。各階で給水して使うことにより、ペットボトルを削減することができます。

これらの買い物袋やステンレスボトルは、フロント横の売店で購入することもでき、おみやげとしても人気だそうです。

“マイボトル”の横には、アルミボトルのミネラルウォーターも置かれていました。

数年前まではペットボトルだったところがアップグレードされていますが、環境の点から言えば、こちらも希望者だけに配ったり、リユース可能な形で提供できると、さらなるレベルアップが望めるでしょうか。

バスルームには「NEMOHEMO(ネモハモ)」というオリジナルブランドのシャンプーやリンスが置かれています。

中身が石油由来の素材不使用であるほか、ボトルの素材やリサイクルまで配慮された商品で、既にオーガニック系バスアメニティとしての評判を耳にしていたので、今回実際に使ってみることができてとてもよかったです。この辺りの細かな魅力も、ホテルとしてのクオリティを押し上げています。

朝食のビュッフェは?

今回はオプションの朝食も予約し、1Fのレストラン「ERUTAN」でビュッフェ形式の朝食をいただきました。

お米は、施設内の生ごみ処理でできた堆肥で栽培されたものが使われているということで、循環の環が生かされています。全体としては一般的な食材や料理が中心であるように感じましたが、地元野菜を一部取り入れるなどの工夫はなされているようです。

エコ視点から言えば、正直、「ビュッフェ」は食品ロスがとても出やすい形式なので好ましいとは言えません。その点についてコンシェルジュの方に突っ込んで質問させていただいたところ、残り物はまずレストランスタッフのまかないとなり、それでも残るものは全社の従業員弁当として活用されるとのこと。それ以外のものが施設地階の大型生ごみ処理機で堆肥化されているそうです。

従業員弁当は休憩室でポスター掲示もされているため、従業員の方々には広く認知されていて「人気です」ということでした。弁当箱は返却式にすることで使い捨て容器の消費も減らしているそうで、この辺りは食品ロスの出やすい「ビュッフェ形式」という制約の中で相応の工夫が重ねられていると感じました。

貴重な挑戦

朝食をしながら周囲のテーブルを見渡すと、この日はうち以外はすべて海外客のようでした。コンシェルジュの方によると、ホテル全体として、ふだんから圧倒的に海外からの滞在客が多いそうです。

フロント横のフリードリンクコーナーのお茶も個包装になっていないのはさすが!

「海外客が多い」ということで、環境配慮の取り組みも評価されやすいのかなと思いきや、意外や意外、全体的にはまだまだエコ意識からこのホテルを選ぶ方は少数派とのこと。ただ、無料アメニティの廃止に対して苦情が寄せられたりもする一方で、逆に「このホテルに滞在したことで環境配慮の重要性に気づいた」という声も寄せられているということで、難しい現状における挑戦の貴重さを実感します。

ホテルは施設の4-9Fとなっており、1-3Fには様々なショップやレストランが入っています。ショップも自然食品店に準ずる品揃えとなっていて、たのしく買い物ができました。イートインスペースも設けられていて、グラスフェッドのハンバーガーほか買ったフードをその場で食べられたり、自然派のワインを試飲することなどもできて魅力的でした。

全体として、もちろん取り組みをさらに充実させられる余地は多々あるとは思いますが(たとえば、ごみの分別!~客室内での分別は物理的に難しいと思うので、たとえば希望者がフロント脇などでゼロウェイストな分別に参加できる仕組みがあったりするとたのしそうです)、大規模なホテルとして環境配慮を前面に打ち出すという先駆的な試みの価値はまがいようもありません。

壁に配された言葉もいいシンボルになっていると感じました

ホテルの環境対策は全国的な流れとは言え、まだまだ「プラスチックストローの廃止」「LEDへの切り替え」などの散発的な取り組みを「社会的責任」としてアピールするにとどまるケースがほとんどです。そんな中、GOOD NATURE HOTELは取り組みの多彩さにおいて、さらにそれらを「プラスの価値=魅力」として前面に打ち出している点において、頭ひとつ抜けた存在であるように思いますし、今後の取り組みの展開をさらに応援したいなと感じます。

環境界隈では既に「よく名前の挙がるホテル」ですが、コンシェルジュの方に言わせれば、「まだまだ知られていない」とのこと。ぜひ、次の京都滞在の際、足を運んでみてはいかがでしょうか?

【関連サイト】GOOD NATURE HOTEL
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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola