先進国の中ではとくに低いとされている日本の食料自給率。この記事では、日本の食料自給率の算出方法や現状、課題などについて解説します。食料自給率を上げるためにできる取り組みも紹介するので、未来の食のためにできることからはじめてみましょう。
食料自給率とは
食料自給率とは、国内で供給された食料のうち、国内で生産された食料の割合を指す指標です。国全体で見たときに、私たちが消費した食料に対して国産のものがどれくらいかを表しています。
日本の食料自給率について
日本の食料自給率を示す方法としては、単純に重量で計算を行う「品目別自給率」と、食料全体について共通のものさしで単位を揃えて計算を行う「総合食料自給率」の2種類があります。
- 2022年度(令和4年度)日本食料自給率
カロリーベース食料自給率:38%
生産額ベース食料自給率:58%
品目別自給率
品目別自給率は、農産物や畜産物など品目ごとに自給率を重量ベースで算出します。また、品目別自給率には、畜産に使用される飼料や農産物の種子などで使用された重量も含まれます。
品目別自給率の計算方法は以下の通りです。
- 品目別自給率=国内生産量÷国内消費仕向量
なお、国内消費仕向量は1年間に国内で消費された食料の量を表したもので、「国内消費仕向量=国内生産量+輸入量-輸出量-在庫の増加量(又は+在庫の減少量)」で算出されます。
例として、2022年度の小麦の品目別自給率を見てみましょう。
- 99.4万トン÷646.9万トン=15%
国内生産量が99.4万トン、国内消費仕向量が646.9万トンで、品目別自給率は15%となります。
総合食料自給率
画像は、農林水産省から引用。
総合食料自給率は、食料全体について単位を揃えて計算を行い、2種類の食料自給率を算出しています。
個別の品目の自給率であれば、国内生産量と国内消費量を単純に割り算して算出可能です。しかし、異なる品目を合計して食料全体の自給率を計算するには、単純に合計しても意味のある数値は得られません。
そのため日本では、人間が体を動かすのに必要な栄養素であるエネルギー量に着目してカロリーに換算する「カロリーベース」と、経済的な価値に着目して金額に換算する方法「生産額ベース」の2つの計算方法によって、食料自給率を算出しています。
カロリーベースでは、米や小麦といった重量当たりのカロリーが高い品目が数値に影響しやすく、生産額ベースでは値段が高い品目のほうが数値に影響するのが特徴です。
カロリーベースの計算方法
- カロリーベースの総合食料自給率=1人1日あたりの国産供給熱量÷1人1日あたりの供給熱量
2022年度のカロリーベース総合食料自給率を計算してみると、1人1日当たり国産供給熱量が850kcal、1人1日当たり供給熱量が2,260kcalで、自給率は38%となっています。
生産額ベースの計算方法
- 生産額ベースの総合食料自給率=食料の国内生産額÷食料の国内消費仕向額
2022年度は食料の国内生産額が10.3兆円、食料の国内消費仕向額17.7兆円で、自給率は58%となっています。
自給率の推移
画像は、農林水産省から引用。
農水省が発表しているグラフを見てみると、1965年(昭和40年)は生産額ベースで86%、カロリーベースで73%でした。そこから徐々に低下し続け、2000年以降はほぼ横ばいの状態が続き、2022年は生産額ベースで58%、カロリーベースで38%となっています。
これは、自給率の高いお米の消費が減った一方で、自給率の低いお肉や小麦などの消費が増えていることが原因とされています。
食料自給率の課題
農水省は2030年までに生産額ベースで75%、カロリーベースで45%まで上げるという目標を掲げています。しかし、日本では生産者の高齢化や跡継ぎ問題があり、食料自給率を上げるのは簡単なことではありません。
また、私たちの食を支えている小麦や大豆の自給率の低さも問題です。これらは消費量が大幅に増えたことから、国内の農地で生産するのには限界があります。
国内での生産を増やすために、米の生産を行っていた田んぼを活用して小麦や大豆を作る取り組みも進められていますが、小麦や大豆は湿気を嫌う作物のため、農地の改良を行わなくてはなりません。また、梅雨のある日本の気候では、期待する品質や収量を確保することは難しいとされているのです。
このように、生産者不足や気候の問題など、食料自給率を上げるにはさまざまな課題を解決していく必要があります。
なぜ食料自給率を上げる必要があるのか
食料は私たちが生きるために必要不可欠なものです。一方で、食料の生産は天候に大きく左右されるため、異常気象などによって生産量が著しく低下する可能性があります。
また、輸入ばかりに頼っている国では、輸出国で大幅な生産量の減少が起きた際に価格が急激に高騰したり、輸入できる量が減少したりするリスクがあるのです。
そのため、食料を安定的に供給していくためには、できる限り国内で食料を生産していくことが求められます。
私たちにできる、日本の食料自給率をあげる取り組み
日本の食料自給率を上げるために、私たち消費者ができることを紹介します。
旬の食べ物を食べる
旬の食べ物を積極的に取り入れることで、食料自給率の向上に貢献できます。旬の魚や農産物は、味がよいだけでなく栄養価も高いとされています。
また、旬の食べ物は市場にたくさん出回るため、比較的安く購入できるのも魅力です。
地産地消を意識し国産の食べ物を選ぶ
地産地消を意識して、国産の食べ物を選ぶことも自給率アップに有効です。パンや麺類を控えて、主食をお米にするだけでも食料自給率を上げることにつながります。
できる限りでいいので、住んでいる地域でとれたものや国内で生産された食品を手に取るように心がけてみましょう。
食べ残しを減らす
日本では多くの食料を輸入しているにも関わらず、毎年多くの食料が廃棄されています。食べ残しと自給率は一見関係ないように思えますが、食料の無駄を減らすことは輸入する食料を減らすことにもつながるのです。
米粉を活用する
どうしてもパンや麺類を控えるのが難しい場合は、米粉を使った食品を選ぶのもよいでしょう。パンや麺のほか、クッキーやケーキなどのお菓子類、天ぷら粉の代用品としても使用されています。
小麦粉よりも油の吸収が少なくヘルシーで、グルテンも含まれていないため、健康を気にする人にもおすすめです。
まとめ
本記事では、食料自給率についてわかりやすく解説しました。食料自給率を上げるには、単に生産を増やすだけでなく、消費者が積極的に国産の食べ物を選択することが大切です。国際情勢の影響などによって、万が一食料の輸入ができなくなったときに困らないためにも、身近なところから少しずつ始めていきましょう。
【参照サイト】:農林水産省「知るから始める「食料自給率のはなし」
【参照サイト】:農林水産省「日本の食料自給率」
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角家小百合
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