2024年6月に環境省が発表した最新の数値(2022年度推計)によると、日本国内の食品ロスは472万トンとなり、前年度(2021年度)と比べて50万トンほど減少していることがわかりました。しかし、環境のためには引き続き食品ロスの削減に取り組む必要があります。この記事では、家庭系食品ロスの要因のひとつである「過剰除去」について着目し、食材を有効活用するためのポイントを紹介します。
【参考ページ】「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和4年度)の公表について | 環境省」
家庭における食品ロスの要因3つ
最新の環境省の発表では、事業系食品ロスが236万トン、家庭系の食品ロスが236万トンという内訳となっています。こうして数値を見てみると、家庭からの食品ロスがかなり多いことがわかります。
では、家庭でのどのような行動が食品ロスにつながっているのでしょうか。消費者庁が行った調査によると、家庭での食品ロスの要因は以下の3つであることがわかりました。
- 直接廃棄:26.7%
食べ残し:23.7%
過剰除去:12.8%
この調査は、消費者に対して食品ロスの要因として思い当たることをアンケートしたものです。
さらに「食材の購入及び調理を行う」グループと「食材の購入・調理ともにしない」グループで分けてみると、普段調理をしない人の50.1%が「思い当たるものはない」と回答したのに対し、頻繁に食材を購入して調理するグループは33%となり、調理をする人の方が食品ロスを発生させている自覚があるということがわかりました。
【参考ページ】「第1部 第2章 第2節(4)食品ロスの現状と削減に向けた取組 | 消費者庁」
過剰除去とは
過剰除去とは、調理の際に野菜の皮をむきすぎたり、食べられる部分まで切り落として捨ててしまうことです。家庭系食品ロスとして3番目に多い要因となっており、ごみ処理にかかるコストや環境負荷が問題となっています。
ではなぜ、私たちは過剰除去をしてしまうのでしょうか。以下で、詳しく説明していきます。
過剰除去をするわけ
過剰除去をしてしまう代表的な理由として、以下の3つが挙げられます。
品質や安全面への過剰な配慮のため
品質や安全面が気になるために、過剰に除去してしまうことがあります。例えば、食感や味に影響が出ると考え、野菜の皮や芯の部分は必ず捨てるという人は多いのではないでしょうか。そのほかにも、残留農薬を気にして厚めに皮をむいてしまうといったケースがあります。
おいしく食べる方法を知らないため
おいしく食べる方法を知らないことも、過剰に除去してしまう理由のひとつです。捨てられてしまいがちな部分は食感や味にクセがありますが、実は調理方法を工夫すれば食べられるものも多くあります。
見た目を重視するため
見た目を重視しすぎることも、食品の過剰除去につながります。具体的には、少しでも傷や変色があると、気になって必要以上に除去してしまうといったことが考えられるでしょう。また、飾り切りのために切り落とした野菜を捨ててしまうことも見た目重視によって起こる過剰除去と言えます。
捨てられがちな部分の活用法
食べられないと思って捨ててしまっていた部分であっても、実は栄養や旨みが多く含まれているものもあります。ここでは、野菜やお肉など捨てられてしまいがちな部分の栄養価や調理の際のポイントを見ていきましょう。
大根の葉
大根の葉には、βカロテンやビタミンC、葉酸などが豊富に含まれています。細かく刻んで炒めてふりかけや混ぜご飯の具材にしたり、スープやお味噌汁の具材として活用することが可能です。
たまねぎの芯
たまねぎの芯には、血液をサラサラにする効果のある硫化アリルや、ポリフェノールの一種であるケルセチンが含まれています。芯は少し硬いため、みじん切りにする料理で使うのがおすすめです。
また、購入後放置していると芽が出てしまうことがありますが、たまねぎそのものはもちろん、この芽も食べることができます。長ネギのような味と食感のため、お味噌汁などの薬味に使用すると良いでしょう。
ブロッコリーの茎
捨てられてしまいがちなブロッコリーの茎は、実はつぼみの部分よりも栄養価が高いとされており、βカロテンやビタミンCが豊富に含まれています。調理する際は、外側の皮をむいて薄くスライスし、炒め物やスープの具材として使用するのがおすすめです。
キャベツの外葉や芯
キャベツの外葉には、ビタミンCやビタミンA、血圧降下作用のあるアルギニンが豊富に含まれています。内葉よりも硬くて少しえぐみがあるため、下茹でしてロールキャベツなどの煮込み料理に使用するのがおすすめです。
また、キャベツの芯はカルシウム・カリウム・マグネシウム・リンといったミネラルのほかに、旨み成分も豊富に含まれる部分です。細切りにして炒め物にしたり、薄切りにして浅漬けにしたりするとおいしく食べられます。
セロリの葉
ビタミンや食物繊維が豊富なセロリですが、実は茎の部分よりも葉の方に多く含まれていると言われています。ハーブのような香りを活かして、スープやカレーなどの料理に使用すると良いでしょう。
きのこの軸
きのこの軸は捨てられてしまうことも多いですが、しいたけやマッシュルームの軸は食べることが可能です。細かく切って炒め物やスープに入れたりすると、歯ごたえと旨みを楽しめます。ただし、先端の石づきは硬くて食べられないため、切り落とすようにしましょう。
鶏肉の皮
鶏肉の皮にはコラーゲンやナイアシン、不飽和脂肪酸など、美容や健康にとってうれしい成分が豊富に含まれています。一口サイズに切ってフライパンでカリカリになるまで焼き、ガーリックパウダーなどで味付けするのがおすすめです。カロリーが気になる方は、茹でて薬味とポン酢で食べるのもさっぱりしておいしいですよ。
ベジブロス
ベジブロス(野菜出汁)とは、野菜やフルーツの皮や葉、切れ端などの捨てるはずのくずを活用した野菜出汁のことを言います。野菜などのくずを洗って、お鍋でお水と一緒に火にかけて作ります。時間をかけてじっくり煮出すことで、野菜の持つ「ファイトケミカル」と呼ばれる病気を予防する栄養素を摂取することができます。昆布だしやかつお出汁と同じように使うことができおすすめです。みそ汁や煮物、カレー、炊き込みごはんなどにも使えます。
【関連ページ】野菜の皮や芯~「捨てずに生かす」ベジブロスー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア
さいごに
この記事では、食品ロスの要因のひとつである過剰除去について解説しました。野菜や果物であれば、しっかりと洗うことで汚れや残留農薬の心配はなくなります。どうしても料理として使うのが難しいヘタや皮の部分はベジブロスとして活用するのがおすすめです。捨ててしまう前に、食べられない理由や他の使い道はないか考え、過剰除去による食品ロスを減らしていきましょう。
【関連ページ】リボベジに挑戦!初心者が育てやすい野菜・ハーブ5選を紹介
【関連ページ】「消費期限」と「賞味期限」とは?違いを理解して食品ロスを減らそう!
【参考ページ】消費者庁「食品ロスって何?」
【参考ページ】クレライフ「皮のむきすぎも食品ロスに?捨てられがちな部分の食べ方を紹介」
角家小百合
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