毎日の家事の中で、生ごみの臭い対策や、水分対策をした上で、ゴミ袋に入れて捨てに行くという一連のプロセスって、ちょっぴり面倒ですよね。また、毎日生ごみを捨てるために、水切りネットや小さなゴミ袋を使うたびに、生ごみのために、廃棄物を増やしてしまっていいのだろうかという気持ちにもなります。
生ごみを捨てずに、土の中に埋め、自然の微生物や生き物に分解させて堆肥化させる「コンポスト」の導入を考えている人も多いのではないでしょうか。コンポストは住環境や生活にごみを入れる頻度に合わせて、さまざまな方法があります。わが家では、庭に埋める方法、プランターを使う方法、そして堆肥を作らない「キエーロ」を使って生ごみを廃棄しない生活を続けています。
始める前は少し不安もありましたが、慣れてくるとこれほど簡単で快適なコンポストはない!と思えるほど。今回は、わが家が昨年の5月頃から1年間続けている「キエーロ」の設置準備から堆肥化、使う時の流れをお伝えします。
神奈川県葉山町で生まれの「キエーロ」とは?
「キエーロ」は、黒土に含まれるバクテリアの力を活かし、生ごみを分解、消滅させる生ごみ処理方法です。神奈川県の葉山町で生まれ、現在では全国の自治体や個人に広まっています。そんなキエーロの魅力は主に2つあります。
- ベランダに置けるものから、庭に設置する大きめサイズまで、家の大きさ、住まいの形態に応じてサイズが選べる。
- キエーロ内の黒土を半永久的に使い続けられるので、増え続ける堆肥に悩まされることもなく、土の入れ替えも不要!
それでは、実際にキエーロでコンポスト生活を始めるための準備から、実際の使用法まで、順を追って説明します。
まずは自宅に「キエーロ」を設置してみよう
キエーロの用意には2種類あります。1つはキエーロを購入する、という方法。キエーロは、自治体が販売していることもあるので、まず、住んでいるの自治体を調べることをおすすめします。助成金で買いやすい価格になっていることが多いので、ぜひそこから買ってください!
例えば、キエーロの考案者が住んでいる神奈川県の葉山町では、町民はキエーロを2,500円で買うことができます。これには、キエーロの中に入れる土もついてきます(2021年3月現在)。東京都の国立市では、市民ならミニ・キエーロという小型サイズの容器をたった400円で購入することが可能です(2021年3月現在)。こうなると、市販されているものを買うよりもずっとお得にキエーロを手に入れることができます。
もう1つの方法はDIYです。コロナ禍でお出かけが難しくなっていた昨年のゴールデンウイーク中、何かを作りたそうな面持ちの夫に「キエーロ、欲しいんだよね…」とつぶやきながらYouTubeのキエーロの作り方動画を見せました。すると、創作意欲に火が付いたようで、ホームセンターで木材やプラスチックのふたに使う資材、くぎなどを買い、オリジナルのキエーロを作ってくれました。土もホームセンターで黒土を5袋ほど購入。キエーロ準備にかかった費用の合計は1万円でお釣りがくる程度。家計にやさしいところもキエーロの魅力です。
「キエーロ」に生ごみを埋めてみる
わが家のキエーロは比較的大きいので、ほとんどの生ごみを入れて処理できています。料理で出たゴミは、一時的にキッチンの生ごみを容器に入れておきます。使わなくなった、ふた付きのタッパーなど、食品保存容器にコーヒーかす、茶葉、野菜くず、魚の骨などは数日間容器に入れておき、満杯になったらキエーロに埋めにいくようにしています。ただし、臭いが気になる食材は、タッパーに入れず、そのままキエーロに直行です。
今後は臭いがつきにくいと言われる、ステンレス製の容器を用意して使用する予定です。
庭に出たら生ごみのタッパーを左手に、右手にショベルを持ち、キエーロへ。20センチほどの深さの穴を掘り、中に生ごみを入れます。入れた後はしっかりと土をかけて、何も見えないようにするのがポイント。生ごみが見えていると虫や動物が寄って来てしまいます。それらを防止するために、ここだけは手を抜かず、注意を払って作業しています。
また、まだ分解途中の生ごみを掘り返してしまわないように、キエーロのどこに、いつ、生ごみを埋めたのかを把握しておく必要があります。わが家では、埋めた場所がわかるように、小さな枝を指して、できる限り同じ場所を掘らないように気をつけています。
微生物のパワーに感動!キエーロの実力とは?
キエーロは、中に黒土が入っているだけという、とてもシンプルなつくりです。黒土の中の小さな微生物がごみを分解し「ごみが消滅する」という仕組みです。生ごみはエネルギー物質や二酸化炭素などに分解されてしまうので、土の増減はほとんどありません。
分解が進んでいる場所を掘っても、見た目はただの土にしか見えませんし、臭いもしません。また、中の土は生ごみ分解後の養分を含んでいるので、プランターに移して植物を育てることも可能です。ただし、キエーロはごみを堆肥化して土を増やすことはしないので、土を使ったら、使った分の黒土を足しておきましょう。
そんな単純な仕組みですが、キエーロは驚くほどの速さでごみの分解を進めてくれます。特に暖かい時期の生ごみが消滅するスピードは、感動的!魚をさばいた後の内臓や、エビの殻、魚の骨なども、入れておくだけで、ぐんぐん分解してくれます。肉や魚など、調理や食事の後にすぐキエーロに埋められるので、キッチンの生臭さから解放されました。生ごみが分解して消える目安は、夏場は5日、冬場は2週間ほどかかる、と言われています。ただし、肉の骨は分解しないので注意が必要です。
もう1つ、特筆すべき素晴らしい点は、キエーロは半永久的に使えることです。通常のコンポストは堆肥化が進んだ後、一定期間が過ぎたら堆肥を家庭菜園などに使わなければなりません。例えば、ベランダなど限られた場所でコンポストを始めた場合、次々とできる堆肥の活用に頭を悩ませているという声も聞きます。
その点キエーロは、コンポスト後の堆肥の処理に悩むことは一切ありません!黒土にひそむバクテリアのパワーを使い、ごみを分解し消滅させるだけ。埋めるだけで、半永久的に生ごみを処理し続けることが可能です。
まとめ:生ごみストレス軽減>キエーロの手間
それまでにいくつかのコンポストに挫折してきた経験から、キエーロについても、最初は「続けられるかな…」と半信半疑でした。しかし、1年近くキエーロで生ごみを処理する生活を送ってきた今、キエーロは、超シンプルで手間いらず、ごみが消えるスピードも速い「オススメの生ごみ処理方法です!」と声を大にして言えます。
わが家では、キエーロを導入したことで「生ごみストレス」から解放され、毎日がとても快適です。また、キエーロに入れた生ごみが消えていく様子から、身近にある土の中にいる微生物パワーを目の当たりにし、家族全員で「自然ってすごいね」と、自然の力を再確認できました。
キエーロは、用意して始めるまでには少し手間がかかります。しかしながら、数日に1度、キエーロへの生ごみの投入を習慣化してしまえば、驚くほど楽に生ごみを処理できるコンポストです。
コンポストをはじめてみたけれども、面倒臭くて続かなかったという方。また、堆肥を処理するスペースがない、忙しいため管理できるか不安など、コンポストに興味はあるけれども迷っている方は、一度キエーロについてじっくり調べてみてください。生ごみが消滅する感動を、キエーロで味わってみてはいかがでしょうか。
※2021年秋に、我が家のキエーロに関する取材を受けました。分かりやすくまとめていただいているので、よかったらご覧ください!
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曽我 美穂
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