【京都・パン好き必見】ロスパンを美味しくお得に!「パン夜市めぐる」を取材

パン夜市

パン職人の1日は夜明け前に始まり、多くのパン屋では、朝7時から8時には焼きたてのパンが店頭に並びます。しかし、ほとんどのパン屋は夕方6時から7時には閉店し、その日に販売されなかったパンは廃棄されてしまいます。

この問題に取り組む「パン夜市めぐる」は、そんなパンを買取り、それを人々に届けることを目的としています。主催者である田村泰雅さんと村田麻実さんから、お話を伺いました。

「パン夜市めぐる」とは?


「パン夜市めぐる」は2023年10月に始まった、夕方から開催されるパンの販売会です。

1つ目の会場、京都北区にある京納豆「藤原食品」の4代目代表・藤原さんから店舗スペース活用について相談があり、とんとん拍子で2023年10月に第1回目の開催が決まりました。さらに、2024年2月からは亀岡市でもスタート。どちらも、毎回完売となり、盛況です。

田村さんはカメラマンとしてパンとパン職人を撮影し続け、新聞の連載企画でも約2年半にわたって、毎日取材し記事を執筆していました。田村さんがこれまでに築いたつながりから、京都の約10店舗のパン屋がこの取り組みに参加しています。

村田さんは「参加しているパン屋さんは、ほとんどが国産小麦や厳選した素材にこだわり、手作りでパンを製造しています。私たちは、皆さんに安心して楽しんでもらえるパンを提供したいと考えています。」と話します。

パンをピックアップ


パン夜市めぐるで販売されるパンは、品質を維持するため、冷凍庫で保管されています。パン夜市めぐるの開催日当日に解凍され、店舗で袋詰めし、食品表示ラベルを付けた後、メンバーが各店舗からパンを集めて、会場に運びます。※安全にお届けするために、季節によって販売方法を変更することがあります。

パン夜市めぐる、スタート!

パン夜市めぐるを盛り上げる飾りつけをしたり、パンを陳列したりして、開催時刻を待ちます。


それぞれのお店が作るパンのセットは、少し割引された価格がついています。さらに、異なる7~8店のパンを購入できることも大きな魅力の一つです。毎回準備される約150セットは、すぐに完売します。

パン屋のファンになってほしい


パン夜市めぐるでは、持ち帰ったパンを焼き直すための方法を記したメモを渡しています。

「ただロスになるパンを救うだけでなく、おいしくパンを食べていただき、パン屋さんのファンになってもらえるような、そういう風につながっていけたらいいなと思います。」

パン夜市めぐるの取り組みのはじまりは?


パン夜市めぐるのメンバーは、カメラマン、古民家オーナー、デザイナー、会社員のパン好きの4人です。

きっかけとなったのは、パン屋で働いている知り合いから打ち明けられた「材料にこだわってイチから一生懸命に作っているパンが、どうしても残ってしまう日がある」という相談です。「パン好きとして、これはなんとかしたいと思いました」と田村さん。

数か月間アイデアを出し合う中で、村田さんが東京でロスになったパンを預かり販売する「夜のパン屋さん」という取組みに出会い、田村さんが話を聞きに足を運びました。それが現在のパン夜市めぐるにつながったと言います。

さらに「パン夜市めぐる」という屋号は台湾を訪れた際にとても印象的だった「夜市」と、パンを循環させる「めぐる」という2つの言葉から来ています。

パン夜市めぐるへの想い

2023年10月にスタートしたパン夜市めぐる。

「統計を取ってみたら、昨年10月のスタートから3月半ばまでに、2556パンのレスキューに成功しました」と、嬉しそうな田村さん。

手ごたえを感じており、別のエリアでも開催できないか検討しているそうです。

パン夜市めぐるのスタート時に参加したパン屋は、「余り物だけど大丈夫かな」と不安を抱えていたと言います。

しかし、来てくれたお客さんは全く気にしていない様子で、「夕方に閉店してしまうお店のパンを夜に購入できるのはありがたい。仕事帰りに立ち寄れるのでとても嬉しい」という声や「パン夜市めぐるで好みのパン屋さんを見つけ、後日昼間の営業時間に買いに行った」等、嬉しい報告が届いているといいます。

さらに、イベントが続くにつれて、パン屋からも良い報告がありました。「徐々に売れ残りへの心配が減り、思いのままパンを焼けるようになった」という感想が寄せられています。

「パン屋さんが作りたいもの作ってほしい!といつも願っているので、その後押しができてうれしいです」と田村さん。

また、パン以外にもレスキューの可能性を感じており、洋菓子屋さんのシフォンケーキを販売するなども試しているそうです。

さらに、売上の一部を能登半島地震の被災地域への義援金として送金したり、夜市の開催地域で使うなど、地域や社会に良い形で循環するよう心掛けているそうです。

一方で、店外の販売だからこその悩みもあります。

「パン屋さんでは、お客さんが直接パンをトレーに取り、会計時に包装することが多いのですが、製造者でもなく、販売所も異なるパン夜市めぐるでは同じ方法がとれません。プラスチック包装や食品表示ラベルシールを貼るなど、ゴミや手間などが増えてしまっているので、ゼロウェイストの推進と衛生管理を両立させながら、環境への負担を減らす方法を見つけたい。」と田村さん。

プラスチックごみゼロ宣言をする亀岡市は出店条件に、食品販売においてもプラスチックの使用を抑えることを推奨しています。すでに一部のパン屋は、繰り返し使えるジップロックを使う、生分解性の袋に切り替えるなど、試行錯誤しているそうです。

編集後記

取材の最後にお話しいただいたのは、「言葉選び」のことでした。

「私たちは、一途にパンを焼き、販売している人たちの顔を知っています。彼らから預かった大切なパンを扱う際には、「売れ残り」等、きっとこう言われたくないだろうな、と思うようなネガティブな言葉を避け、ポジティブな言葉を使うように心がけています。」と村田さん。

もし、この取り組みに共感し、誰かに話したり、やってみようと思う人がいれば、この感覚は忘れずに持っていてほしいと言います。

取材を通じて、田村さんと村田さんのパンに対する深い愛情を強く感じ取ることができました。「もったいないパンを再循環させる」という彼らの取り組みは、シンプルながらも今後のパンや食品との関わり方に対する大きなヒントになりそうです。

このイベントは毎月2回開催されているので、興味のある方はぜひ、おいしいパンを買いに行ってみてください。

【参照サイト】「パン夜市めぐる」インスタグラム
【関連ページ】【食品ロス削減】rebake(リベイク)
【関連ページ】プラスチック製レジ袋がない市!ごみ削減に取り組む京都府亀岡市をレポート

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牛嶋麻里子

福岡出身。フェアトレードを仕事にしてみようと思い立ち、2018年からは京都へ移住。アパレルのゼロウェイストや生産背景について学び、よりエシカルな選択ができる社会を目指して働いています。 プライベートでは、チョコレートのおもしろさとカカオの課題から目が離せなくなり、ひとりでフィリピンのカカオ畑に行ってみたり、チョコレート検定プロフェッショナルを取得してみたり。