京都府亀岡市は京都市の西隣に位置し、保津川下りやトロッコ列車の拠点として多くの人に愛されてきました。田んぼや畑が広がり、日本の原風景が残っている美しい市です。人口は約86,000人程度とそこまで大きな市ではありませんが、日本で初めて「亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例」を制定した環境政策に先進的な自治体として、日本全国にその名が知られています。この条例の施行後、亀岡市では買い物時に店舗でプラスチック製のレジ袋をもらうことができなくなりました。お金を出して購入することもできません。
この記事では、亀岡市のプラスチックごみ削減の取り組みについて、現地で取材した様子を交えながらお伝えします。
環境政策に先進的な亀岡市とは?
亀岡市環境政策課の名倉さんによると、亀岡市がプラスチックごみの削減を始めた背景には、同市の観光資源のひとつである保津川のごみ問題がありました。それまでの保津川にはペットボトルや空き缶などのごみが漂い、川沿いの木々にはビニール袋が引っかかっているなど、とても多くのごみが流れ着いていたと言います。
「保津川の川下りで、美しい自然を楽しみにきたのにごみを見せられた」
というお客さんからのクレームが発端となって2004年、保津川下りの船頭2人が川に漂着したごみを集める清掃活動を開始しました。これが、亀岡市が環境先進都市を目指す一歩となったのです。この活動は、やがてNPOや行政を巻き込んで広がっていきました。
こうしたなか、2012年に内陸部の自治体として初となる海ごみサミット「第10回海ごみサミット2012亀岡保津川会議」を開催。亀岡市は本格的に保津川や海のごみ問題に向き合うことを決定しました。
ここから亀岡市のごみ問題に対する取り組みが加速、2018年には「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」に至りました。市は2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロを目指すという目標のもと、動き出したのです。
この目標達成に向け、2019年には「世界に誇れる環境先進都市・かめおか協議会」が発足し、市内の事業者や学識経験者、NPO等と議論を重ね、プラスチックごみ削減の活動を進めてきました。
その結果、市内の店舗でのプラスチック製レジ袋有料化を皮切りに、最終的にはプラスチック製レジ袋提供禁止に踏み切りました。また、エコバッグ持参率100%を目指す取り組みを進めていくためには市民(消費者)の理解が不可欠であるという思いを共有。市民に説明会を開き、2021年1月から条例をスタートしました。今では、買い物にくるお客さんの98%がマイバッグを持参しているそうです。
市内の店舗でのプラスチック製レジ袋の提供を禁止した結果、2021年3月時点でのレジ袋の使用枚数は、条例施行前の2019年7月と比べて63万枚もの削減に成功しています。
亀岡市のプラスチックごみ削減の取り組みをレポート!
亀岡市では、市の至るところでプラスチックごみ削減に向けた取り組みを見ることができます。
プラスチック製レジ袋がない!
市内すべての小売店やコンビニエンスストアなどにおいて、プラスチック製レジ袋はもらえません。マクドナルドやスターバックスでも、必要な場合は紙袋を購入する必要があります。
無料の給水スポットがある!
ペットボトルを使わないようにするために水筒を持ち歩いても、中身を飲み切ってしまえば、結局また水分が欲しくなったときにコンビニや自動販売機などで買うしかありません。亀岡市にはさまざまなところに給水スポットがあり、持参したボトルに無料で給水できるため、プラスチックごみを削減できます。
亀岡市発のエコバッグ「HOZUBAG」の工場を訪問!
市役所の職員さんたちも持ち歩いている「HOZUBAG」。このバッグは、パラグライダーをアップサイクルして作られたものです。今回、 行き場のないパラグライダーを回収・解体する拠点「HOZUBAG FACTORY」を見せていただく機会を得ました。亀岡市はパラグライダーの聖地として知られています。そんなパラグライダーは、安全上の理由で数年ごとに交換する必要があります。飛ぶ役目を終えたパラグライダーは行き場がなく、廃棄するしかない状況が続いていました。飛ぶ役目を終えたパラグライダーを回収・解体し、エコバッグとして生まれ変わらせたのがHOZUBAGです。
「パラグライダーの生地には、軽くて丈夫という特徴があります。パソコンを入れることもできます。また、世界にひとつしかないデザインです。長く使ってもらえるよう、修理も受け付けています。」(HOZUBAG FACTORY 武田さん)
「HOZUBAGのプロジェクトは、ごみの削減だけではなく雇用の創出も同時に実現し、地域の経済活動にもつながっています。」(山内さん)
亀岡市役所にある「開かれたアトリエ」
亀岡市の市役所の地下1階に、SDGsの発信の拠点として2021年にオープンしたのが「開かれたアトリエ」です。地元の食材を使った食事が楽しめるカフェ・レストランを中心に、不要になったものを持ち込み、訪問者が無料で持ち帰り可能な「巡り堂」、「展示コーナー」「イベントスペース」などで構成されています。「亀岡市としては環境について考える機会を増やし、多くの仲間を増やしていくことを目指しています。『開かれたアトリエ』はそういう目的でも活用しています。」(名倉さん)
亀岡市の目指す未来とは?
循環を意図した仕掛けは上記にとどまることなく、民間企業との連携も加わり、さらなるごみの削減への取り組みが進められています。
タイガー魔法瓶株式会社と亀岡市は回収ボックスを設置し、使用済みステンレスボトルの回収と再資源化の取り組みを進めています。
亀岡市の目指す未来について、山内さんはこのように語ってくれました。
「亀岡市では、「ゼロエミッション計画」でごみを削減することに取り組んでいます。「それって本当にごみ?」というサブタイトルで、ごみの概念を変えていきたいと考えています。
第一弾として、この4月からごみの分別を変えました。「燃やすごみ」の名称を「燃やすしかないごみ」に、「埋立てごみ」を「埋立てるしかないごみ」に変更しました。次は生ごみの削減です。生ごみはエネルギーにも堆肥にもなるので、燃やさずに有効活用していく予定です。
コミュニティが希薄化しているので、環境をキーワードにつながりを作り、地域で循環していくシステムを作っていきたい。ごみもつながり、人もつながる。そんな未来を目指しています。」
編集後記
日常の中で、使い捨てプラスチックなどのごみを削減することや、環境問題について意見を交わすことが難しいと感じている人は多いのではないでしょうか?
今回、実際に亀岡市を訪れてみると、市のいろいろな所で環境問題に触れ、気軽に話ができる雰囲気がありました。
環境問題に取り組むためには、亀岡市が示してくれたような「行動」につながる場を作ることが求められているように感じました。
【参照サイト】京都府亀岡市ホームページ
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