海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第17回目となる今回は、ゼロウェイストのデメリット後編です。
プレゼントや手みやげは?
雄一郎:前編では家族内でのむずかしさについて話しました。後編では、対外的な人間関係の中で感じるむずかしさについても話してみたいと思います。
麻子:手みやげをいただく時に、気を使わせてしまっていると感じて、心苦しく思うことがあります。うちがゼロウェイストやプラスチックフリーを意識していることを知って、申し訳なさそうに「プラスチック包装なんですけど…」と差し出してくださったりして、「気を使わせてしまってごめんなさい!!」みたいなやりとりに必ずなります…
プレゼントやおみやげは、モノ自体よりもその「気持ち」がうれしいですね。我が家がゴミを減らしているとは言っても、パスタとか買って、普通にパッケージごみは出ているし…。こちらのつもりとは裏腹に、緊張を強いてしまっていると思うと本当に申し訳なくて。
雄一郎:うちが普段買わないようなデパートのお菓子をいただいたりすると、子どもたちがすごく喜んだりして、実は結構うれしい気持ちも大きいよね。
麻子:そう!「買ったお菓子」は貴重なので、わたしだってうれしい(笑)。でも、くださる側からすれば不安に思ってしまいますよね…。「かといって手みやげなしというわけにもいかない」というお気持ちもあると思うし。私だって『ゼロ・ウェイスト・ホーム』のベア・ジョンソンさんのお宅訪問なんてことがもしあったらすごく悩んでしまうと思う。「本だったら紙だからいいかな?あ、でもモノ自体がぜんぜん喜ばれないかも!」とか。「ゼロウェイスト」とはいってもけっこう幅はありますからね。我が家はその意味では全然ストイックではないです。
雄一郎:一方で、すごく前向きに工夫して、わが家向けにごみの出にくい贈り物を選んでくださる方もいて、そういう広がりはうれしいなとも感じます。以前新聞紙で作った素敵な袋に自家製の焼き菓子をそのまま入れてくれた人がいて、これは感激しましたね。しかもその袋の形がすごく良くて。「その袋の作り方、教えてください!」とお願いしました(作り方はこちら)。たのしんでくださっていることが伝わってきたりもする。どちらのタイプの贈り物もうれしい。
ストレスや窮屈さは?
麻子:よくある悩みとして、学校や職場、買い物などでストレスが増えるというのがありますよね。特に最初のころ。「減らそう!」と前向きになった時に、買えるものがあまりに少なくて愕然としたり、学校からごみになるものがいろいろ入ってきてイライラしてしまうというパターン…。
雄一郎:「せっかくいいことをしようとしているのに思い通りにいかない」ことで、周囲に対して批判的な気持ちになってしまうというのはよくわかります。カリフォルニアやヨーロッパなんかだと、量り売りのお店がいっぱいあったり、学校や職場でも多様な選択が尊重される雰囲気だったり、ずいぶん状況が違う。日本はその辺はずいぶん窮屈で、そういう意味では、これは「環境要因」という部分も大きいですよね。
麻子:ミラクルな解決策はないけれど、やっぱり、一気に減らそうと無理するのではなく、簡単にできることから一歩ずつ、たのしめる範囲で進めていく。前向きさを失わずに済む範囲で取り組んでいく、ということに尽きるかな?
雄一郎:そう。バイブル『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の著者ベア・ジョンソンでさえ、ほぼ完璧に実践しているようでいて、やっぱりいろいろ社会の中で妥協点を見出だしながらやっているわけです。たとえば、「手みやげのワインは受け取ることにする」とかね。そういう意味では、これは多かれ少なかれ、万人にとってのテーマでもあります。
麻子:原点に立ち戻ってみれば、「ごみを減らすこと」それ自体が人生の最終目標ではないですよね、もちろん。よりよい未来のために、ごみは少しでも減らしたいところだけれど、「幸せに生きる」「心地よく生きる」ことがなくなってしまったら、「よりよい未来」も本末転倒になってしまう。
雄一郎:実際、自分個人のごみをどれだけ減らしたところで、地球レベルで見れば、その効果はほとんど誤差以下に過ぎないわけで。そういう意味では、本当に大切なのは、「少しでも減らす」ことの物理的な結果よりも、各人がそれぞれ「願う世界」に向かって前向きに進んでいくという、社会全体としての方向性のような気がします。
麻子:そうですね、「願う社会」にむかって少しづつ進んでいくこと。思い通りにいかない時、「今の時点ではできることが限られる」ということを受け入れて、その中でも簡単に楽しくできることを続けていく。楽しくて、心地よければ自然に続けていける。たぶん、そういうことが大きなうねりを生み出して、社会は変わっていくんじゃないかな。
支出や手間の問題は?
麻子:「支出が増える」とか、「手間がかかって無理」という声もわりによく聞きます。
雄一郎:支出については、逆に「モノを減らす」ことで、意外にクリアできる気がします。現代人はそもそもモノを買いすぎだと思うので。買うモノの数や種類を減らせば、その分、割高なエコ商品にも予算が回せることになる。よりよい支出の形に近づけると思います。
麻子:あとは無理してまで買わない、というのも大切。そもそも値段と価値は比例しないし、買い物は経済力、必要性、切迫度など、いろいろな要素のバランスの中に成り立つものだと思うんです。先ほどの話の繰り返しになりますけど、ごみはやっぱり「たくさんの大切な問題のひとつ」でしかない。値段が高すぎると感じるモノを無理してまで買う必要はないし、自分ができる範囲の中でできることをすればいいだけ。うちだって、「高すぎて買えない」ということはもちろんあります。
雄一郎:高すぎて買えなくても、「そういう商品が存在するんだ」ということを「知っている」「検討した」というだけでも大きな価値だと思う。地球上にそういうことを何も知らない人間ばかりが存在するのと、知っている人が一定数いるのとでは大きな違いですよね。それを肯定的に受け止めればいいのかな、と思います。
麻子:手間も同じこと。つい「こうあるべき」「こうありたい」と思ってしまうけれど、現実はそんなにシンプルではない。生き方もそれぞれ、困難もそれぞれ。そもそもゼロウェイストには、絶対の正解があるわけでも、義務があるわけでもありません。無理する必要なんてまったくないわけで。「やりたいからやる」くらいがちょうどいい。
雄一郎:逆に「完璧にできる人」しかゼロウェイストをやらなかったら、やる人が少なすぎて、お先真っ暗ですよね(笑)。「みんなができる範囲のことをする」っていうのは、本当に大切だし、理にかなってる。
麻子:ゼロウェイストは本来、自由でクリエイティブな世界。多くの人が、幸せを第一に、自分流に「笑顔のゼロウェイスト」を意識していけたら、すごく面白い社会になっていくと思います!
【⬇︎前編はこちら】
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服部雄一郎 服部麻子
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