「生ゴミが消える」「生ゴミを入れても土量が増えない」そんな声が注目を集める生ゴミ処理機「キエーロ」。本記事ではキエーロ生活を実践する、グラフィックデザイナーの金谷麻衣さんのリアルな体験談を取材。キエーロを取り入れたきっかけ、始め方と使い方、また始める前に知っておきたいポイントなどについても伺いました。
教えてくれる人
金谷 麻衣 (かねや まい)
多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業後、広告制作会社勤務を経て、アパレルやインテリアメーカーのインハウスグラフィックデザイナーに。のちにフリーランスへ転身。祖母が花屋を営んでいたこともあり、小さいころから植物好き。現在は更地だった自宅の裏山を開墾し、季節の植物や野菜を育てている。キエーロ歴3年。趣味は陶芸とキャンプ。Instagram @_life_is_flowers_
キエーロを始めたきっかけは自邸を建てることになったこと、そして大の釣り好き夫の存在
5年前に家を建てた際、これまで気になっていた家の中のことをいろいろ解消するにあたり、特にしっかりと取り組んでいきたいと思ったのが生ゴミの処理問題でした。夫が月に2〜3度は魚船に乗るほどの大の釣り好きで、魚のアラや骨などの処理は永遠の課題なのかなと思っていました。特に気温が高い夏場はビニールを何重にしても臭いが出ます。「生ゴミの日まで待ってられない!」というのが正直なところでした。(金谷さん、以下同様)
そこでなんとかこの生ゴミを気持ちよく処理する方法はないかと調べていたところ、キエーロの存在を知りました。家の設計後「ベランダdeキエーロ」のことを知り、置けるスペースも確保できました。
“キエーロ” でいろいろ調べていたら辿り着いたのが葉山町を拠点にキエーロの製造・販売をされているキエーロ伝道師の松本信夫さん。それまで私が見たことがあったコンポスト容器は緑や薄黄色のプラスチック製のものばかりで、「ちょっと存在感がありすぎるな」と思っていたんです。その点、松本さんの販売されているキエーロは木製で無駄のないデザイン。気に入ったのですぐにメールでコンタクトを取り、置く場所についてなどの詳細を相談しました。
キエーロは行政から助成金をもらえることを松本さんに教えてもらったので、すぐに購入に踏み切りました。発注してから2か月ほどで松本さんご自身がキエーロを家まで届けてくれ、設置もしてくれました(このときは在庫が切れていたので少し待ちました)。
キエーロを設置する場合、庭がある人はそのまま土の上に直置きできる底なしタイプの木枠型「バクテリアdeキエーロ」を使うことができます。また都市で生活を送る人は、マンションのベランダなどにも置ける木箱タイプ「ベランダdeキエーロ」の方が便利。土の量が増えることもないので堆肥の活用にも困りません。わが家の裏庭には段々畑があるので、最初は土への直置きタイプをすすめていただきましたが、斜面の上まで毎日ゴミ捨てに行くとなると私が挫折する可能性があるかもしれないとも思い、最終的に玄関裏に置ける底がついている木箱タイプにしました。こういうものって続くかどうかも重要な課題ですよね。ということで、私は予めハードルを下げておきました。
HOW TO USE キエーロ
1. 生ゴミを集めておき、溜まったら細かく刻む
生ゴミは土との接地面積が多いほど分解が早いため、大きめのキャベツの芯などは細かく刻んでおきます。専用ブレンダーをひとつ用意しておくと便利ですね。生ゴミであれば大概なんでも入れることができますが、玉葱やとうもろこしの皮、雑草、花の茎など水分量の少ないものや繊維質なものは分解が非常に遅いので基本は入れない方がよいかもしれません。
私は迷ったら入れてみて分解するかどうか実験してみています。筋っぽいものは形があまり変わらないまま干からびていくイメージです。
2. 穴を掘り生ゴミをキエーロへ投入する
大きめのスコップやシャベルで土に20cmほどの深めの穴を掘り、細かく刻んでおいた生ゴミを入れ、生ゴミと土をよく混ぜます。土が乾いていると分解がうまく進まないので、ゴミの量と同じくらいの水分や油分を追加します。特に気温が低い寒い季節は、油分を多めに入れると分解を助けてくれます。
3. よけておいた土を生ゴミの上に被せる
土がきちんと被さっていないと臭いが上がってきます。土を被せるときは濡れている部分が露出しないよう、生ゴミに蓋をする気持ちでしっかりと土を被せます。たとえば、20cmの穴を掘ったとしたら、上7~10cmは土を被せたいですね。
あたたかい季節は、4〜5日ほどで生ゴミが分解されます。わが家ではキエーロを3セクションに分け、週に2〜3回捨てるようにしています。なので、大体1週間後には1周まわって同じところに捨てられるようになっています。
ちょっと覚悟が必要? 虫との付き合い方
稀に虫が出るとは聞いてはいたものの、いざ土の中で蠢く小さな幼虫を見つけてしまったときにはやっぱり「ガーン……」となってしまいました。松本さんに相談したところ、この幼虫はアメリカミズアブという虫で害はないそう。むしろ分解を手伝ってくれる助っ人的存在と聞いてホッとしました。
「どうしても受け入れ難ければ、新聞紙の上に土を一度広げ、太陽光に当てて干すとよいですよ」とアドバイスをいただきましたが、土の量も多いので現実的には気にしないというのがベスト。というわけで、出てしまったら「いるな〜」と思いながらも土の中をじっくり見ないようにしています(笑)。幼虫はやがてサナギになり成虫になるのですが、成虫にまで成長できるのは200匹に1匹くらいなのだそう。実際サナギになってからは土の中にコロコロしているのを見ましたが、その後再度幼虫が大量発生することもなく時が過ぎてます。
キエーロは心の負担も減らしてくれる
生ゴミを生ゴミとして捨てていたときは、重さも量も臭いもありました。今の家は5mの擁壁の上に建っていてキッチンがあるのは2階部分。毎回3階分ほど降りてゴミ箱に行くのも、週末の生ゴミを溜めておき火曜日の生ゴミの日に捨てに行くのも考えただけで億劫。また、ゴミは濡れていると焼却に時間もかかり、その分環境にも負荷がかかります。
でもキエーロだと、生ゴミをその日のうちにキエーロに入れれば処理できて、しかも跡形もなく消すことができる。“生ゴミを自分の手で土に還せる” ということにただただ感動しかありませんでした。本当、微生物さまさまですよね。生きているだけでゴミをたくさん出してしまう現代の生活の中で、せめて生ゴミだけでも自分の手で処理することができるってとてもうれしいですし、気持ちも軽くなりました。
私のまわりにも同じような気持ちの人がいてキエーロに興味を持っていたり、実際にもう使っている友人もいたり。お互いに「このブレンダー安くていいよ」など、情報交換をし合っています。キエーロの他にも、コンポスト式や乾燥式、段ボール式など、庭があってもなくても実践できる生ゴミの処理方法はいくつかあります。自分の生活スタイルに合った処理機を探して生ゴミを土に還し、自分にも地球にも心地よい暮らしを始めてみてください。
「ゴミと気持ちよく付き合いたい」「もっと無理なくゴミを減らしたい」という思いからキエーロのある生活を始めた金谷さん。今後取り組みたいことを伺うと、「キエーロの土を庭や畑の土として活用できるのもよいなと思いました。今後はさらに堆肥を活用できるよう実は2台目の設置も視野に入れています」と話してくれました。
生ゴミを減らして、心も軽く、地球環境にも優しい暮らしをはじめたい。そんな想いをキエーロが叶えてくれるかもしれません。
【参照ページ】KIERO OFFICIAL 微生物のチカラで生ごみ消滅
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アリタ チユキ
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