アメリカでは生ごみをどうしてる?コンポスト事情をレポート【世界のゼロウェイスト】

街の様子

当連載ではエコライターの曽我 美穂が海外在住の方に、その土地ならではのゼロウェイストな試みをお聞きします。今回は、米国シリコンバレー在住のかまくらゆうこさんに、現地のコンポスト事情を教えていただきました!

かまくらゆうこさんのプロフィール

プロフィールカリフォルニア州シリコンバレー在住。約3年前にバルセロナで生活し、バルセロナ市がサステナブルな街づくりに取り組む都市であったため、サステナビリティへの関心を持つように。現在は働きながら、大学のサステナビリティ専攻の修士課程に在籍している。趣味は山登り。

シリコンバレーってどんなところ?

街の様子

シリコンバレーには、テック系大企業からスタートアップまで勢いのある企業が多く、IT系の仕事をしている人が多いです。Google やApple、Facebook などのテック系大企業の本社もあります。都会のイメージがあるかもしれませんが、実は広い土地に、企業や住宅街がのびのびと広がっています。

自然が豊かで、公園や自然保護地区が数多くあり、街中の公園や駐車場で野生のリスに出会うこともあります。アジア系移民も多く、LGBTQや人種の多様性を大切にするカルチャーなので、住みやすいです。

市をあげて、コンポストに取り組む!

私が住んでいるSunnyvale市は、climate action playbook(気候変動へのアクションブック)を作成し、持続可能な資源の活用を重点分野の1つに掲げています。そのため、商業施設や集合住宅での生ごみ回収の仕組みづくりを、積極的に展開しています。

市は、これまで戸建て住宅から出る生ごみを回収し、コンポストをしてきたのですが、2022年8月中旬からは、私が住んでいる集合住宅も対象になりました。

支給された保管容器・保管袋を活用!

まず、8月に市から生ごみ用の保管容器が配られました。バケツのような形で、手で持ち運べます。蓋には “FOOD SCRAPS ONLY(生ごみだけ)”という文字が。その下には、具体的にどんな生ごみがOKなのか、絵柄と説明が入っていて、分かりやすいです。

生ごみのごみ箱

こちらは、市から配られたリサイクル用の保管袋です。PAPER(紙)とCONTAINTER(容器)の言葉とイラストが載っています。英語だけでなくスペイン語、中国語も併記されており、それぞれのごみを入れる容器の写真まであります。

日本では「容器」という分類でもプラスチック、ビン、缶などに自分たちで分別して出すシステムが多いですが、こちらでは、一緒にまとめて出すシステムになっており、あとで回収業者が分別します。

リサイクル用バッグ

リサイクル用のバッグの裏側には、リサイクルの出し方と、紙と容器以外のごみ分別の方法が書かれています。左が「ごみ」、真ん中が「段ボール」、右が「生ごみ」の扱い方について。

面白いのは「段ボール」の場合は可能なら段ボール回収箱へ、不可能な時はごみとして出してもOK、さらにごみとして出した場合も業者がリサイクル対象として分別してくれる、と書かれている点。日本とはシステムが異なるんだな、と感じました。

生ごみは、毎週水曜に回収!

私のマンションの場合、生ごみは毎週水曜日に回収されるので、それまでは、各家庭の保管容器や冷蔵庫、冷凍庫に保管するように、市から言われています。

その後、回収日の前日に、マンションの各フロアにある回収容器に生ごみを入れます。その際、プラスチック袋や紙袋、他のごみを混ぜるのはNGです。

こちらが、私のマンションのごみ回収コーナー。右にあるのが、生ごみの回収容器です。
回収コーナー

蓋には、出し方に関する注意が書いてあります。
・生ごみをそのままかコンポスト可能な袋か、紙袋に入れて出す
・紙、容器、ごみ、庭仕事で出る枝や草、危険なごみは入れない
ふた

実は、導入当初は回収の仕組みがうまく回らず、長期間生ごみがごみ回収場所に放置されてしまい、コバエが発生したり、匂いが強くなってしまったりと大変でした。今は住民が慣れ、うまく回収されているので、ひと安心です。

なお、回収されたコンポストは肥料や動物飼料として使われており、再生可能エネルギーとして利用するテストも行われています。市のウェブサイトによると、これまでの生ごみのリサイクルの実績は14万トン(2021年2月時点)とのことです。

一般ごみと容器、紙は24時間いつでも出せます!

ごみ出しコーナー

その他のごみは、各フロアにある専用の扉を、ボタンを押して開き、ごみを投下するだけでOK。各ごみの回収日まではマンション内の集積場で保管されるため、住民は24時間いつでも出せます。ごみを投下後は、そのままダクトを通って一階の集積場に落下し、まとめて回収されています。

分別ルールは、下記の大きく3つです。

①紙類(紙容器、古紙、段ボールなど)
②容器類(プラスチック容器、ガラス瓶、缶類など)
③その他のごみ(①②に分類されないもの)

①②に関しては、プラスチック袋などに入れず、紙類・容器類そのもののみを廃棄しなければなりません。理由は、もしプラスチック袋などに入れて廃棄してしまうと業者に回収されないから、とのことです。

これらのごみは、市のごみ処理施設で機械や人の手により分別されます。施設で徹底的にリサイクルできるものが選ばれ、最後に残ったごみが圧縮され、埋立地に運ばれています。

市の動画がとても分かりやすいので、興味がある方は見てみてください。

ごみ出しをしやすい仕組みが成功のカギ?

日本のごみ出しでは、決まった日に、自分が分別したうえでごみを出すのが一般的ですが、シリコンバレーでは回収業者が、回収後に分別する形になっています。土地が広大なため、分別ごみを回収日ごとに回収するよりも、一か所に集めた上で施設で分別することで、効率よくリサイクルしているのではないか、と思いました。また、住民にとってもリサイクルできるものを気軽に出せる形になっているように感じます。今後も、米国ならではのリサイクルの仕組みに参加しながら、いろいろ学んでいきたいです。

【参照サイト】climate action playbook(気候変動へのアクションブック)
【関連ページ】韓国のゼロウェイストな暮らしのアイデアを現地レポート
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曽我 美穂

曽我 美穂(そが みほ)。2008年にエコライター・エディター・翻訳者として独立。雑誌やウェブサイトで編集、撮影、執筆、翻訳などをおこなっている。主なテーマはエコな暮らしやSDGs、環境問題。私生活では2009年生まれの娘と2012年生まれの息子の二児の母でもある。現在、富山県在住。個人サイト:https://sogamiho.mystrikingly.com/