地球環境や資源問題を語るとき、まっ先に話題にあがりやすいのが「自動車」だ。燃料に使われるガソリンは二酸化炭素を排出し、大気汚染や温暖化の原因の1つとなっている。しかし、自動車による環境負荷は燃料エンジンによるものだけではない。廃棄された自動車本体の処理もまだまだ課題が残っている分野とされている。
株式会社旭リサーチセンターが公開した「自動車リサイクルの現状」によると、使用済み自動車の再資源化等に関する法律「自動車リサイクル法」が2005年に施行されてから、自動車由来のごみ処分量は2005年度の15万トンから2016年には1万トンまで大きく減少している。
画像出典:自動車リサイクルの現状(株式会社旭リサーチセンター)
しかし、金属類や有用部品は燃料やその他の材料としてリサイクルされている一方で、エアバッグ類は新品未使用であっても新しい自動車に再度取り付けることは禁止されている。車に取り付けられながらも、一度も出番がなかったエアバッグは、とても強度が高い特殊な素材を使用しているためこれまで焼却処分するしかなかった。
本記事で紹介する「MA-1ジャケット」は、廃棄自動車から取り出した新品同様のエアバッグ素材を加工したサステナブルアイテム。きれいなまま役目を終えたエアバッグが、今度はアパレルに生まれ変わってユーザーの身を守ってくれる。
MA-1ジャケットは、エアバッグ素材がリサイクルされずにいた原因でもある「強度」を上手く活用したことで、耐久性と保温性に優れたジャケットへと生まれ変わった。使い込んだ革のような独特な質感とミリタリーデザインで、作業着のほかにも、アウトドアで活躍しそうだ。着こなしによっては、タウンユースもできそうな一着に仕上がっている。
アクセントとして縫い付けられたタグとワッペンは、グッドデザイン賞など多数の受賞歴をもつクリエイティブディレクター佐藤あかつき氏のデザインだ。佐藤氏は、「コンセプトは普段使いできるアップサイクルです。職場の外でも着ることができ、家族にも「かっこいいね」と言われるようなデザインを目指しました。」とコメントしている。今後順次一般販売を予定している。
「MA-1ジャケット」は、行き場を失っていたエアバッグに新たな活躍の場を与える試みとして画期的である。廃棄自動車のリサイクル率100%を目指し、今後も注目していきたい活動だ。
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斉藤雄二
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