紙おむつのリサイクルで新技術。ユニ・チャームが挑む、水を使わない「魔法の洗浄」とは?

紙おむつ

子育て中の方や、ご家族の介護をされている方にとって、毎日の「紙おむつ」のゴミ出しは大きな負担のひとつではないでしょうか。

水分を含んでずっしりと重くなったゴミ袋を運ぶとき、「これが全部ゴミになってしまうんだな……」と、少し心が痛む瞬間があるかもしれません。燃やすときにもたくさんのエネルギーを使う紙おむつ。もし、これがきれいに生まれ変わって、また新しいおむつとして使えるとしたら、素敵だと思いませんか?

そんな夢のような未来をぐっと引き寄せるニュースが届きました。ユニ・チャーム株式会社が、使用済みの紙おむつを「ほとんど水を使わずに」きれいに洗ってリサイクルする、新しい技術の開発に乗り出したのです。

水の使用量は50分の1!驚きの「ドライ洗浄法」とは?

2025年12月、ユニ・チャームは香川県の廃棄物処理会社「富士クリーン」と連携し、新しいリサイクル技術「ドライ洗浄法」の開発をスタートさせると発表しました。

これまでもユニ・チャームは、使用済み紙おむつを洗浄・殺菌して、再び紙おむつに生まれ変わらせる「水平リサイクル」に取り組んできました。鹿児島県志布志市などではすでに実証実験が行われていますが、これまでの方法にはひとつだけ課題がありました。それは、汚れを落とすために「たくさんの水」が必要だったことです。

そこで今回登場したのが「ドライ洗浄法」です。

ヒントになったのは、衣類の「ドライクリーニング」。水ではなく、繰り返し使える特殊な溶剤を使って洗うことで、なんと水の使用量をこれまでの約50分の1にまで減らすことができるそうです。

「場所を選ばず」リサイクルできる世界を目指して

なぜ、そこまでして「水を使わない」ことにこだわるのでしょうか?そこには、開発チームの熱い想いがあります。

これまでの「水で洗う」方法だと、どうしても大量の水が確保できる場所や、汚れた水をきれいにする大きな設備がある場所でしかリサイクル工場を作ることができませんでした。

しかし、世界には水不足に悩む地域がたくさんあります。日本国内でも、内陸部など水資源が限られる場所は少なくありません。「ドライ洗浄法」が実用化されれば、そうした地域でも紙おむつのリサイクルが可能になります。

場所を選ばず、どこでも紙おむつが資源として循環する。そんな仕組みを作ろうとしているのです。

2029年、香川県から新しい循環が始まります

このワクワクするプロジェクトは、まだ始まったばかり。これからのスケジュールは以下のようになっています。

  • 2026年:香川県にある富士クリーンの敷地内で、技術開発がスタート
  • 2028年:本格的なリサイクル工場の建設予定
  • 2029年:工場が稼働し、近隣の自治体で回収がスタート予定

まずは香川県綾川町周辺から、この新しいリサイクルの輪が広がっていく予定です。

「捨てる」が「つなぐ」に変わる日を楽しみに

今はまだ多くの自治体で「燃えるゴミ」として出すしかない紙おむつですが、数年後には「資源」として回収ボックスに入れるのが当たり前の光景になっているかもしれません。

私たちが毎日使っているものが、地球に負担をかけずにぐるぐると巡っていく。そんな心地よい暮らしの実現に向けて、企業の挑戦は続いています。私たち生活者も、こうした技術の進歩を知り、応援することで、サステナブルな未来への一歩を踏み出せるはずです。

2029年の実用化を楽しみに待ちたいですね。

【参照サイト】紙パンツ・紙おむつリサイクルの取り組み(ユニ・チャーム)

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Life Hugger 編集部

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