よりエコロジカルな洗濯考ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第51回目となる今回は、「よりエコロジカルな洗濯考」です。

洗濯機について思うこと

麻子:前回は、洗濯の石鹸や洗剤について、わが家の遍歴をお話ししました。今回は、より洗濯の「全体」に関わる部分、洗濯機の使い方だったり、洗い方だったり、より踏み込んだ環境汚染の話をしましょうか?

雄一郎:うちは以前書いたように、もう10年来、昔ながらの二槽式洗濯機派。知人のお宅にあった古いものをゆずり受けたもの。

麻子:私の実家が今でも二槽式なので、前からなじみがあったんだよね。全自動よりもしっかり洗えるし。構造がシンプルだから、①こわれにくい ②洗濯槽にカビが生えにくい というメリットがあります。

今も大活躍の古い二槽式洗濯機。全然こわれません

雄一郎:その後、子どもたちが小学生になって、「自分で自分の服を洗ってもらおう!」ということになって。「さすがに二槽式じゃ大変かな?」と思い、全自動洗濯機を買いました。で、子どもたちはそちらを使ってるけど・・・

麻子:何だか、「洗えてる感」が足りない気がする….二槽式の方がずっときれいになるような…

雄一郎:僕も自分の服はつい古い二槽式で洗っちゃうな。全自動だと時間調整の設定なんかも面倒で。

麻子:二槽式だと、たとえば、「タオル類」と「服」を2回転、水を入れ替えずに同じ水で洗えるから節水や洗剤の使用量を結果的に減らすことにもなる。

雄一郎:そうそう、すごく便利。全自動だと、それぞれ別にフルサイクルで洗わないといけないから、急いでる時とか、逆に時間もかかるし、水がムダになるな~って思うこともある。

もちろん、子ども3人の洗濯を毎日していた時は「さすがに二槽式ではキツイ…」と思ったこともあるけど、子どもが自分の服を自分で洗ってくれるようになった今、特にホタテパウダーで「すすぎ1回」とかなら、二槽式でも結構軽々。

子どもたちはこちらの全自動洗濯機を愛用

「洗い方」について思うこと

雄一郎:二槽式でいいなと思うのは、「中が見える」から、洗濯の様子がはっきり把握できること。全自動って、ロックされて、中がどんな状態になっているのか、全然わからないから。

麻子:水の汚れ具合とか、すすぎの感じとか、途中経過が見えない。

雄一郎:それに引きかえ、二槽式は「手洗いの延長」というか、「自分の右腕」みたいな感覚で使えるのがいい。もちろん、全自動みたいに放っておけないから、手間がかかると言えばかかるんだけどね。

麻子: けど、「手洗い」に比べたら画期的にラク(笑)。

雄一郎:ほんと、そう! 実際、二槽式だと、ウールのものとかを手洗いして、脱水だけを二槽式でチャチャッとできて本当に便利。最近、大切にしたい服はなるべく洗濯機に入れたくなくて、できるだけ手洗いするようにしてるんだけど、二槽式はその強い味方。

麻子:手洗いすると、服の劣化も抑えられると思うから、その辺までトータルのバランスで考えると、意外に二槽式、強みがいっぱいあるよねと思えてきます。今は全自動が主流なのかもしれないけど、家電メーカーには二層式を作り続けてほしいですね。

雄一郎:願わくば、デザインがもっと向上するといいな…。ドラム式と同じくらい、かっこいい見かけの二槽式が登場してほしい。

服のためには手洗いを増やしたい

意識したいマイクロプラ問題

麻子:最後に、「洗濯」で忘れてはいけないのが、マイクロプラスチックと香害の問題。

雄一郎:マイクロプラスチック問題については、ここ数年でずいぶん気づきが広がったように思うけど。僕自身、「合成繊維の服の糸くずがマイクロプラスチックなんだ」ってはっきり気づいたのはまだ5~6年前くらい。最初はコペルニクス的転回くらいびっくりした。

麻子:マイクロプラスチックを流さないようにする洗濯ネットなども発売されていて、うちも使ったりしてきたけど、結局は「合成繊維のものをなるべく使わないようにする」方が話は早いかな?

雄一郎:それは感じる。うちも、これからもネットは使いたいと思ってるけど、一度、ネット自体が破れてしまってごみになったりもして。その時は「もっとシンプルに行きたいな」という気持ちになった。

麻子:子ども服なんかは、なかなか「天然繊維のみ」というわけにはいかなかったりするけど、その辺はどう?

雄一郎:「気を付けられる範囲」「できる範囲」でいいんじゃないかなと思ってます。知り合いの研究者の人から「重量から言えば、衣類のマイクロプラスチックはとても軽いので、散乱するペットボトル1個を拾った方が効果的という部分もありますよ」という話を聞き、「なるほど」と感じた。まずは「できる範囲で減らしつつ」、でも、すべてを減らすことはできないから、「ほかでもっと効率的に減らせる部分に注力していく」という、ある程度の割り切りとバランス思考が求められる気がするな。

さらに深刻かもしれない「香害」問題

麻子:どちらかというと、香害の方が深刻かもね。香りが持続するタイプの柔軟剤などに入っている香料の問題。

雄一郎:そうそう! まだ知らない人も多いみたいで。あれは小さなマイクロカプセル入りの香料を配合していて、そのカプセルがどんどん弾けることで香りが持続するという・・・そのカプセルは目に見えないくらい小さいんだけど、つまりはマイクロプラスチックになるんだよね、プラ不使用のものでない限り。

麻子:このマイクロカプセルは、化学物質過敏症の人などをはじめ、強い香りによる体調不良も増えているようなので、本当にしっかり規制してほしいことのひとつ。

雄一郎:子どもの給食エプロンとか、うちの子が1週間使ったあとのものを持ち帰ってきているはずなのに、すさまじい香料のにおいがしたりするものね。あの強烈さ、化学物質過敏症でなくても正直イヤです…

麻子:私は強い香りで頭痛がすることもあって。知人には化学物質過敏症が理由で「学校にいけない」「公共交通機関も使えない」「病院にも行けない」という人もいます。だれにでも発症の可能性があるので、香害問題は急いで取り組む必要があるかと感じています。早く規制してほしいけど、個人レベルでも「強い香りの洗剤や柔軟剤を使わない」というアクションは今すぐとれるので、広まってほしいですね。

雄一郎:そういう意味では、洗濯は日常的なことだけど、社会問題にも直結している。心地いい洗濯を目指しつつも、広い視点を忘れずに、むしろ洗濯生活を「深める」ような感覚でいきたいな、と思っています。

【前編はこちら⬇︎】

なるべくサステイナブルに暮らしたいわが家の洗濯事情ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola