なるべくサステイナブルに暮らしたいわが家の洗濯事情ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第50回目となる今回は、「なるべくサステイナブルに暮らしたいわが家の洗濯事情」です。

わが家の洗濯の「これまで」と「今」

雄一郎:今月はわが家の「洗濯」について語りましょうか?

麻子:私、洗濯は苦手…。

雄一郎:ま、僕も決して得意ではないんだけど…。けど、不得意なりに、「どうでもいい」と言うよりは、「もっとしっくり来るやり方はないか?」って、それなりに模索してきた20年間だったかな。

麻子:そうそう、いろいろ試してきた。最初は一般的な洗濯洗剤の成分が気になって、オーガニック系の液体洗剤に移行して、でも、だんだんプラスチックボトルのごみも気になってきたりして。そのあとは灰とか、マグネシウムとか、いわゆるオルタナティブなものもいろいろ試して。結構たのしかったね。

雄一郎:そして、ここ数年は、粉石鹸での洗濯に落ち着いてる。ここだけ取ると、わりにオーソドックスにも聞こえるけど。

わが家の洗濯スペースは屋外です

純石鹸の洗濯に落ち着いたワケ

麻子:ここ数年愛用しているのは、老舗の純石鹸「サンダーレッド」。水でも溶けやすいのが特徴で、使いやすい。

レトロな包装もいい雰囲気の「サンダーレッド」

雄一郎:いろいろ試したけど、子どもの服の汚れは手ごわくて、そういう点では石鹸の洗浄力は本当にたのもしい。気持ちの上では、「さらにオルタナティブな洗濯!」に憧れたりもするけど、しばらくは粉石鹸、手放せないかな…。

麻子:石鹸は生分解性にすぐれているので、そこはとても重要。

雄一郎:そうだね。最近は合成洗剤も改良されてきて、数十年前に問題となっていたような汚染は引き起こさないみたいだけど。それでも特に田舎はまだまだ下水が整備されていなくて。生活排水がそのまま川に流れる地域も多いし、都会の下水処理場も、大雨で未処理の水があふれるような仕組みのタイプもあると聞くので、生分解性はやっぱり大切に感じてる。

麻子:もちろん、石鹸も使いすぎはダメ。生分解であっても、有機物として「水の有機汚濁」につながり、その点では水の汚染につながると聞きます。だから、環境負荷を減らせる形は常に考えていきたいかな。

「石鹸生活」で気を付けていること

雄一郎:ということで、わが家は今のところ、石鹸がベースで、「必要に応じてクエン酸や重曹や酸素系漂白剤を使う」という、いわゆるナチュラルクリーニングを続けているけど、洗いあがりには満足してる?

麻子:まずまずかな。石鹸はどうしても石鹸カスが出やすいので、「まずはしっかり溶かす」、そして、「しっかりすすいで、すぐに干す」が大切だけど、私はよく、干すのを忘れて洗濯機の中に放置しちゃうから…。

雄一郎:あと、洗濯石鹸は粉っぽくて、袋を開ける際の飛び散る感じが個人的には苦手なので、ステンレスボトルに入れ替えて使ってます。これはすごく気に入っているアイデア。微妙に使いづらくて眠っていた水筒を転用した形。いわゆる「Repurpose(リパーパス)」!

使いづらかった水筒を粉石鹸入れに「リパーパス」。左の緑色のは、末っ子の保育園時代の水筒を、後述の「ホタテパウダー」入れにリパーパス。

ニューフェイスの「ホタテパウダー」

麻子:そんな中、わが家の洗濯シーンに新しく参入してきたのが「ホタテパウダー(618 scallop powder)」。これ、使いやすいね。

最近愛用しているホタテパウダー618

雄一郎:天然のホタテの貝殻を高温で焼いて白いパウダーにしたもの。強アルカリ性で、洗浄効果、消臭効果、除菌効果があるということで、洗濯だけじゃなくて、掃除などにも幅広く使える。

麻子:通常の粉石鹸にプラスして使ったり、あるいはホタテだけで洗濯してみたり、いろいろ試してみているところだけど、消臭効果もあるし、すっきり洗いあがって気分がいいなと感じてる。

雄一郎:同じく。原料も、産業廃棄物となっているホタテの貝殻のアップサイクルで、排水も汚さないというのはいいなと思うから、これからどんな風に使っていけるか、とてもたのしみ。

オルタナティブな方法のたのしさと価値

雄一郎:ホタテパウダーもそうだけど、こういうオルタナティブなやり方にはいつも「本当に効果あるの?」という懐疑的な声がつきまとう。

麻子:少し前の「マグちゃん」の騒動にもびっくりした。うちでも一時期使っていたから。

雄一郎:もちろん、「事実に反する表示」とか、「誇大広告」はダメだと思うんだけど。でも、ああいう「洗浄力が本当にあったか否か」みたいな世間の反応を見ていると、何だかモヤモヤしてしまう。「みんな、もっと自分で使ってみて、自分で判断すればいいのにな…」みたいな。

麻子:そうね。マグちゃんが「洗剤と同レベルの洗浄効果」ってことはないと思うけど、だからと言って、即「インチキだった」「悪い」みたいに決めつける反応にはたしかに違和感がある。仮にマグちゃんによって、「そんなに強い洗剤を使わなくてもいいんだな」と気づけた人がいるとしたら、それ自体が大きな気づきなわけで…。

雄一郎:オルタナティブな“洗剤”は、どれも一般の洗剤とは全然ちがうベクトルの使い心地だと思うんだよね。もちろん洗浄力はとてもマイルドなものが多い印象だけど、そもそも「市販の合成洗剤や石鹸の強い洗浄力が基準になっていること」自体がおかしいというか、むしろ、そういう基準を絶対視する感覚こそが環境汚染を引き起こしてきたんじゃない?とかね。思わず考えてしまったり…。
(※マイルドな洗浄力のものを「洗剤と同様の洗浄力」と表示して販売することを肯定しているのではありません)

麻子:オルタナティブ系のものはどれも「すすぎが1回で済む」のもメリットだし、<そういう視点>で見ると、良さがいろいろ見えてくる、というところをもっと評価してもいいんじゃないかな。

雄一郎:ホタテパウダーも、世間の一元的な視点や変な誇大広告論争に巻き込まれることなく、自分自身の価値観と感覚の中で、地に足をつけて使っていきたいな、と思ってます。

【後編はこちら⬇︎】

よりエコロジカルな洗濯考ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola