わが家の肉食VS菜食事情ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第38回目となる今回は、「わが家の肉食VS菜食事情」です。

なぜ肉食が問題なの?

雄一郎:今月は、わが家の「肉食事情」について話してみましょう。

麻子:大事なテーマ!ここ数年、「肉食が環境によくない」という話はだいぶ知られるようになってきたよね。

雄一郎:ごく簡単におさらいすると、まず、家畜を育てるには、家畜のエサとなる「穀物」を育てる必要がある。家畜はものすごくたくさん穀物を食べるので、「肉を食べる」というのは、つまりそれだけたくさんの「穀物を食べている」ということになる。

麻子:牛肉1キロを生産するには11キロの穀物、豚肉1キロを生産するには7キロ、鶏肉1キロには4キロの穀物が必要、といわれています。

雄一郎:「世界で生産されている大豆の7~9割を家畜が食べている」というデータもあるみたいで、びっくりだよね。家畜が食べている穀物を、もし人がそのまま食べれば、食料危機もすぐに回避可能とも言われる。

麻子:それだけたくさんの穀物を育てるために、ものすごい面積の農地が必要になって、途上国ではそれが森林伐採にもつながっているんでしょ? 

雄一郎:そうそう。「地球の陸地の4分の1が肉の生産に使われてる」なんていう話があったり…。さらに、多すぎる家畜の糞尿による環境汚染、多すぎる牛のゲップによる温室効果ガスの排出、飼育に必要な大量の水など、いろいろ重大な問題が指摘されてるよね。

麻子:あとは、工業型畜産でまさに工業製品のように家畜が扱われる倫理的な問題も。動物愛護のスピリットをそれほど持っていなくても、現状を聞くと愕然。何しろ大規模で…

雄一郎:それもこれも、「多すぎる」のが諸悪の根源。増えすぎた人口が、欲求のままに肉を食べれば、そりゃ大きな歪みが出てくるよね・・・ということなんじゃないかな…。興味を持った人はぜひ「肉食 環境問題」のキーワードで検索してみてください。

「完全菜食」だったわが家の過去

麻子:うちは以前、5年以上「ほぼ完全菜食」でした。いわゆる「玄米菜食」、マクロビオティック的な食生活。

雄一郎:なつかしい!でも、あれは「健康にいい」と思っただけで、環境負荷のことなんて、これっぽっちも考えてなかったんだよね。

麻子:当時はそんな意識のかけらもなかったから(笑)。

葉山に住んでいた頃の麻子さんの菜食料理。イベント出店やケータリングもやってました。

雄一郎:「健康にいい」の是非は諸説あると思うのでここでは踏み込まないとして、僕自身は結構よかったな~。子どもの頃から下痢がちだったのもピタッと止まったし、どうしても治らなかったイボがウソみたいに消えたり。とても「たまたま」とは思えなかった。けど、「菜食」というだけで、同僚からはいつも「また痩せた!」「栄養不足なんじゃない?」って突っ込まれて(笑)。痩せすぎはもともとなんだけどね。

麻子:すごく体調よさそうだったよね。私は当時、ぜんぜん寝ない赤ちゃんの世話で疲労困憊で…それでも肌のかゆみとかはなくなったり、一定の効果はあったと思う。菜食のおいしいメニューを考えるのが結構たのしくて、快調に何年も続けたね。

当時はまだ菜食が珍しかったので、雑誌でレシピ紹介をしたことも。

雄一郎:菜食、ほんとにおいしかったな。「我慢」なんていう感覚はちっともなくて。美食飽食の世代だから、菜食の滋味深いおいしさは衝撃的だった。「こんなにおいしいもの、知らなかった」って心から思った。

麻子:日本ではどうしても、菜食がまだマイナーだから、外食時は例外にしたり、その辺は加減しながらだったけどね。子どもたちは給食はふつうに食べたし。

雄一郎:友人宅でいただくご飯もふつうに食べてた。

麻子:ふつうに食べてたけど、私はそこがいつも微妙に心の負担だったな。友達がせっかく招待してくれる時、「肉食べれないよね?」って言われたり、何かいただき物の時も「これ、食べれないよね?」とか・・・「気をつかわせちゃってるな…」って。

雄一郎:あ、そう?僕はそんなに気にならなかったけど(笑)。でも、日本はどうしてもお気遣いの文化だから、そういう部分もあるよね。そのあとアメリカに行った2年間なんて、ほんとにラクだった。そもそもベジの人が普通にたくさんいるし。大学のパーティのビュッフェとかでも、普通に「菜食メニュー」と「普通メニュー」が2種類あったり。

麻子:インドも「ラクトベジタリアン」(=乳製品のみ食べる菜食)が一般的で、どこにでも「ベジ表記」がされていたよね。日本はその点、なかなかむずかしい。

サンフランシスコではこんな豪華なベジメニューが普通に食べられました

今は「肉少なめの雑食生活」

雄一郎:快調に菜食を続けていたわが家だけど、日本に戻ってきて、高知に移住して、徐々に「雑食」に戻っていったね。

麻子:私は、さっきも言ったとおり、社会的に「これ以上、気をつけ続ける/気をつかわせ続ける」のが負担になったっていうのが大きいかも。あとは、子どもにもあまり「制限」みたいにならずに、なるべく欲求のとおりに食べさせてあげたいなって。

雄一郎:僕はどちらかというと、高知ですごくおいしいケーキ屋さんのバターと生クリームのケーキを食べて、自分が「ああおいしいなぁ!これを食べない人生はやっぱりもったいないかな…」って思ったのが大きい(笑)。高知は食材に恵まれていて、隣町の放牧の牛乳が手に入ったり、町内の放し飼いの鶏の卵が手に入ったり。「遠くの工場から届けられる豆乳やソイミートよりも、もしかして自然に近い?」みたいな感覚もあって、徐々に。(※豆乳やソイミートを否定しているわけではなく、どちらも大好きで食べてます)

庭の鶏もそんな暮らしの変化の一部

麻子:と言っても、ふつうのお宅よりはかなり「肉少なめ」だと思うけどね。「ない日」も多いし。

雄一郎:大人だけだったら、僕はもっと菜食に近づけたいくらいだけど、今は子どもが食べたがるからね。末っ子なんて、二言目には「肉!」って(笑)。肉食の問題を暴いたネットフリックスドキュメンタリー『Cowspiracy』とか、韓国映画『オクジャ』とかも一緒に見たけど、子どもたちは「それとこれとは別問題」みたい(笑)。

麻子:子どもはふつうに食べて、大人になってから自分で判断すればいいんじゃないかな。と言っても、うちは「好きなだけ肉が食べれる」というには程遠いから、まあ子どもたちとしては「もっと肉食べたい」という感じだろうけど(笑)。でも、このご時世、「好きなだけどうぞ!」っていうほど呑気な時代とも思えないし。そんな意味でも、今のわが家のバランスはまずまずなんじゃないかと思ってます。

雄一郎後編では、そんなわが家の「肉を減らす具体的なアイディア」を紹介しましょう!

【⬇︎後編はこちら】

わが家流「雑食のまま肉をムリなく減らす術」ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola