SDGs時代の制服とは?広まってほしい「リユース」と「選択化」|服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第26回目となる今回は、「制服」についてです。

まだまだ少ない「制服のリユース」

麻子前回記事では「ランドセル」についてお話ししましたが、中学高校の新入学と言えば、「制服」!

雄一郎:わが家もちょうど娘が中学進学で、先日、制服や体操着など一式を購入し、恐怖の9万円超えとなりました。

麻子:あまりの金額に絶句…。経済的にも、ゼロウェイスト的にも、中古の制服をリユースできるような仕組みが広まってほしいところだけど、全国的にはたぶん「まだまだ」なのかな。

雄一郎:ネットで「中古 制服」と検索すると、いくつか中古の制服を販売するお店が出てくるけど、まだわりに在庫が限られたり、一部のメジャーな学校に限られたり、という印象です。ニーズもあると思うし、どんどん拡大していくといいけれど。

麻子:そんな中、うちの住んでいる地域の公立中学では、何と最近、有志の保護者さんによる「むすぶpresents制服リユースプロジェクト」という取り組みがはじまって、地元の新聞やテレビでも紹介されるなど注目を集めています。

地元の中学の制服だけでなく、近隣の高校の制服も学校別に並べられていて、ちょっとしたブティックのよう。ふだんは中学の空き教室に保管してあり、マルシェなどで不定期に販売されています

どれも格安ですが、状態によって値段も違います。タグがついていてわかりやすい

麻子:すばらしい取り組み!娘はたまたま別の中学に進学するので使えなくて残念だけど、末っ子の時はぜひ利用させてほしいです。新入学時だけでなく、特に男の子は成長期だから途中でサイズアウトしてしまうこともよくあるし。リユースで安く買い換えができるのは本当に心強い。

雄一郎:そもそも中学高校はいちばん背が伸びる時期だものね。「入学時に3年間着続ける前提で制服を新調する」という設定自体が本当はおかしいのかも。子どもたちが体に合うサイズに無理なく交換できるためにも、制服をどんどん次の人に回していけるリユースは必須!

地域に数カ所「回収ボックス」が設置されていて、不要になった制服が回収されています

回収ボックスの上には丁寧な説明文

麻子:これまでも友人知人間では制服のゆずり合いはされてきたと思うけど、それがより「オープンなレベル」で行われることにはとても大きな意味があるんじゃないかな。何というか、リユースが「特殊な選択」でなく、「ふつうの選択」に近づくみたいな。

雄一郎:本当にそう。ただ、いざ実現しようとすると、ある程度数やサイズが揃わないと利便性が確保できなかったり、そうなるとまとまった数を保管・管理しなければならなくなって、お直しや手入れも必要になったり、それなりのハードルというか、労力がかかってしまう部分もありそうで。そういう意味では、全然気軽ではないというか。単に「有志」の保護者さんのボランティア精神に運営をまかせるには忍びないというか。調べてみると、地域によってはPTA主導でやっている学校もあるようなので、そういった形も含め、このすばらしき取り組みが別の地域にもどんどん広がっていくといいなと思います。

運よくお下がりをいただけた長男の高校の制服。直接の知人ではない方が、うちの長男が同じ高校に入学することを噂で聞きつけて、わざわざ連絡をくださったのでした。大感謝!

「選べる制服」への流れ

麻子:「リユース」以外のポジティブな流れとして、最近はジェンダーレス制服を導入する学校が増えているという話も耳に入ってくるよね。

雄一郎:あちこちで話を聞くので、ネットでちょっと調べてみたら、たとえば女子のスラックス制服は既に半数近くの全日制高校が導入しているという情報もあったり、思った以上に変化の動きが出てきているみたい。

麻子:これはうれしい流れですね!

雄一郎:知人からは「学校の制服がジェンダーレスに変わったので、上の子のお下がりを下の子が使えなくなってしまった…」という話も聞いたけど、これは好ましい変化のトランジションとしては仕方ないところかな…。

麻子:でも、ジェンダーレス制服を導入するからと言って、「これまでの制服はもう着てはダメ」とする必要もないんじゃない? 「両方OK」とすればいいのに。

雄一郎:たしかに(笑)。

麻子:そのあたり、率直に言えばやっぱり詰めが甘いと思う。せっかく「選択の余地」を広げているはずなのに、やっぱり根っこは「強制の域を出ない」みたいな。

雄一郎:うちの娘が進学する学校は、制服は「式典時のみの着用」で、ふだんは私服でOK。制服も、上のジャケット等のみが学校指定のもので、下のスラックスやスカート等は一応学校推奨のものも販売されているけど、完全に自由で、「他校のものでもOK」。これはすばらしいよね。ネクタイも一応学校推奨のものを販売しているけど、買わなくてもいいし、つけなくてもいいらしい。

麻子:そういう学校が増えてくるといいなと思う。上のジャケットだって「どこの学校のものでも可」にしてくれたら、制服のリユースももっと敷居が下がるはず。だいたい「全員一緒」であることの実際の必要性ってどのくらいあるのかな。

雄一郎:だけどさ、せっかく学校のルールが自由なのに、うちの娘は「下も学校推奨のスカートがいい♡ ネクタイも欲しい♡」って…。ま、思い通りにはなかなかいかないね。

麻子:ふふふ、ほんとに(笑)。「みんなと一緒がいい」という気持ちもわかります。

娘が小学校の卒業式に着用する予定のジャケット。近所の友人から回ってきて、また次の人に回します。いっそ、こういうジャケットを制服代わりにできれば…!?

「制服を着ない自由」も

麻子:「選べる制服」への動きが見られるのは好ましいことだけど、そもそも論で言えば、前回のテーマのランドセル同様、「制服、本当に必要?」という疑問にも行き着く。

雄一郎:欧米では制服がないのが主流だし、教育上「絶対に必要」ということはないはずだよね。むしろ個人的には、「みんなが同じ制服を着る」という同調の空気は、こと「出る杭が打たれる国日本」においてはネガティブな強化を生んでいそうな気もするな。ただ、ネットなどの意識調査を見ると、子どもたち自身も「制服はあった方がいい」という声が多数派みたいだし、先生たちも「制服は必要」と思い込んでいるみたいだから、そういう意味では、日本ですぐに制服がなくなることはなさそうだけど。

麻子:ランドセル同様、着たい人はもちろん着ればいい。でも「着ない自由」がもっと広がるといいのにな。LGBTQだけじゃなく、感覚過敏とか、障害とか、いろいろな理由で制服が「着づらい」子どもだっているはずだし。あと値段も高いし。洗濯もしづらいし。

雄一郎:質的に、エコ、エシカルな制服にすることも望みにくいしね。

麻子:全国規模で校則の見直しも進みつつある状況なので、この辺もより深い議論がなされていくといいですね。中高生はまだ「子ども」(=管理される立場)かもしれないけど、こういった制服や校則などの制度について「当事者として考えて行動する」ことからもすごく多くを学べるはず。勉強は授業の中身だけではないから、その辺を大事にしてほしいなと思います。後編ではより広く学用品全般についてお話ししてみましょう。

【⬇︎後編はこちら】

無駄の多い学用品~少しでも負担を減らすには?|服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola