海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第49回目となる今回は、「『循環する庭』のおもしろしさ~リジェネラティブの世界観」です。
耕さない「ばらまき畑」のおもしろさ
麻子:前編で、わが家の庭は「肥料も農薬も使わない放置畑」と話しましたが、実は「ばらまき畑」でもあるんです。
雄一郎:ふつうの畑みたいに「畝(うね)」をつくらず、耕さず、種を適当にパラパラ~ッと、ばらまくんだよね。(※玉ねぎなど、ものによっては畝をつくっているものもあります)
麻子:そう、すごくたのしいの! 適当に撒くから、思いもよらない場所から野菜が育って、収穫時はまるで宝探しみたい。
雄一郎:「畑」というと、まずは土を耕して、一列に畝をつくって、きちっと作物を育てないといけないようなイメージがあるけど、特に自然農やリジェネラティブ農業系の考え方では、「耕す」は基本NG。耕すと、土中の生態系や構造が破壊されてしまい、土が乾燥して、状態が悪くなる、という考え方をするよね。
麻子:半信半疑で試してみたら、「耕さなくていい」のはとってもラク。そして、畝も作らず、種をばらまくのはとっても簡単!
雄一郎:「手間の無駄ゼロ=ゼロウェイスト」でもある。
「自然の摂理」に近づける
麻子:でも、「ばらまき畑」って、ただ単に「ラク」ということではなくて、なるべく多様に、いろいろな品種を混ぜて育てる、ということでもあって。「畝」を作るのは、その方が世話しやすいし、収穫しやすいから、などの理由があるけど、同時にそれは「単一の品種をずらっと一列育てる」ことでもある。ばらまき畑は、いろいろな種を混ぜてばらまくことで、もっと多様な混植状態にしてしまいます。
雄一郎:いわゆる「作物」だけでなく、れんげ草とか、一年草のクローバーとか、一般的には「雑草」と捉えられているようなもの(=カバークロップ)も混ぜてまいて、真に多様な混植にするといいと言われてるよね。
麻子:作物だけを特別視しない、より「自然の摂理に近い」育て方とも言える。もちろん、現代の品種改良された種が、必ずしも「自然の摂理」の中でうまく育つとは限らないんだけど。
雄一郎:きちんとした種まきと違って、発芽の確率は確実に悪くなるしね。草に負けたり。でも、そこは多めの種を播けばいい。自然は本来そういうもののはずだから。
自然に育った多様な植物をいただく
雄一郎:この「作物と雑草の境界線が薄まっていく」感じはすごくおもしろい。
麻子:人の力で「育てよう」としすぎず、むしろ、「育ちやすい/自然にうまく育った」ものを食べる感覚ね。
雄一郎:菜の花なんかは最たる例で、わざわざ小松菜を注意深く育てなくても、うちの庭では菜の花がこぼれ種から勝手に育つ。もちろん味はちがうんだけど、食べられることには変わりないわけだから、それをいただくことができれば、いろんな意味で理に適ってくる。
麻子:もちろん小松菜はおいしいし食べたい(笑)。でも、「野草」や「山菜」など「自然に育ったものをいただく」ことが現代は相当に少なくなっている気がする。少しでも暮らしに取り戻せたら、と思ってます。
雄一郎:そうなると、「栽培」という考え方も変わってくるよね。一般的には「うまく育てなきゃ」みたいな前提があるけど、「必ずしもうまく育たなくても構わない」というか。「”必ずうまく育つ”なんてむしろ変」というか。「うまくいくものだけがうまくいけばいい」というか。
麻子:思い通りにコントロールしようとしなくていい。望むほどに収穫できなかったとしてもOK。ルッコラが辛すぎて食べられなかったとしても、放っておけば花としてたのしめる。春菊も同じ。白菜がうまく巻かなくても春になったら「菜の花」として食べたりもできる。いわゆる八百屋さんには売っていないタイプの「食べ方」「たのしみ方」が発見できる。
雄一郎:すごくたのしいよね。もちろん、農家さんレベルではありえない考え方だけど。でも、家庭菜園は本来そんな気楽なあり方でも特に問題ないはずなのに、なぜかみんなが「成功しないと!」みたいな感じで、せっせと「苗を買って」「肥料をやって」というやり方に寄りがちなのはどうなのかな、と思ったりもします。結果的に環境負荷も増えると思うので。
土に還す
麻子:「肥料をやらない畑」で大事なのは、「循環」。養分の自然な循環がキープされることで、肥料をやらなくても植物が育つ、という考え方なので。だから、草木を土に敷いて、その炭素分や窒素分を土に戻していくことは必須だし、生ごみはコンポストにして、なるべく栄養分を土に還していくことを心がけてます。
雄一郎: 作物を育てて、それを単に収穫して外に持ち出してしまうだけだと、畑の土の栄養分は失われる一方なんだよね。ちゃんと「還していく」ことが大事。そういう意味では、コンポストとか、コンポストトイレとか、「本当に大事なんだなぁ」と改めて認識させられる。
麻子:「リジェネラティブ農業」の考え方では、「動物」の存在も大切なんでしょう?
雄一郎:そうそう、自然の生態系には動物は欠かせないから。動物の自然の糞尿とか、動物が歩いて草を踏む刺激とか、そういうものを大切に考えるよね。現代の日本はなかなかそこまでの自然からは遠ざかっているけど、うちも庭に多少の野鳥は来るし、昆虫たちもいるし、あとは1羽のニワトリ、そして1匹の飼い猫がそんな役割を担ってくれている気がするな。
おすすめ本、YouTubeなど
麻子:こういった自然農、リジェネラティブ系の考え方を知ったことで、わが家は本当に庭の見え方が変わって、おもしろくなりました。おすすめ情報も紹介しておきましょう!
雄一郎:まずは本から。
・『土を育てる』・・・僕の翻訳書です。アメリカのリジェネラティブ農家さんが書いたベストセラー。今回お話ししたような内容が壮大なスケールの中で書かれています。
・『1㎡からはじめる自然菜園』・・・竹内孝功さん著。「1㎡から」という気軽さが魅力。わかりやすくて、いつも繰り返し参照しています。
・『食べられる庭図鑑』・・・良原リエさん著。都会のベランダや庭でもこれほど多くの植物を育てられるのか!と驚かされる1冊。
・『地球再生型生活記』・・・パーマカルチャーデザイナーの四井真治さん著。庭や畑にとどまらない、土地全体の「循環」について記された大作。
麻子:そのほか、YouTubeで「自然農」と検索すると、おもしろいチャンネルがたくさんあるんだよね。
雄一郎:僕のお気に入りは「畑は小さな大自然 そーやん」さんのチャンネル。気軽に生かせる知恵がたくさん紹介されていて、本当におもしろいですよ。
麻子:都会などで、庭がない方は、近場の有機農家さんのオープンファームや「援農」(=農作業体験)に参加するのもおすすめです。子どもと一緒に参加できたらたのしそう。
雄一郎:神奈川や東京の方には、横須賀のsho farmさんの援農にぜひ参加していただきたいな。リジェネラティブをベースにした、本当に魅力的かつ本質的なファームを運営されています。ぜひチェックしてみてください。
【前編はこちら⬇︎】
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服部雄一郎 服部麻子
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