海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第64回目となる今回は、「社会はいつ変わる?~環境問題と社会の変化」です。
選挙と環境問題
麻子:注目の衆議院選挙が終わりました。
雄一郎:いろいろあったけど、そんな中ひとつ言えるのは、環境問題はほとんど争点にならなかったということ。
麻子:たしかに。裏金問題も統一教会問題も一大事だけど、その他のすべてが霞んでしまったような感すらある。
雄一郎:しかも、それらの裏金問題や統一教会問題が逆風となって、与党は大きく議席を減らして過半数を割ったわけだけど、それでも最大勢力を軽々キープ。投票率も低かったし、むしろ「これほどの問題を前にしても、大多数の有権者の投票行動はそう簡単には変わらないんだな…」と思わされてしまったところもあるな。
麻子:こんな中では、環境問題に抜本的に取り組む政治への転換がどんどん進んでいくイメージは持ちにくい…よね
雄一郎:アメリカ大統領選もだけど、環境問題はほとんど中心的な争点になってこないし、それはやっぱり「多数の有権者が求めていない」というか、抜本的な取り組みを打ち出すことが「支持を得る」どころか、むしろ変化を歓迎しない層の反発を招いて「不利に働きそう」な雰囲気さえあるから…。
「政治が変わらない」と言うけれど…
麻子:環境問題についてはよく「個人の力ではどうしようもない」「社会のシステム全体が変わらないと何もはじまらない」という言い方がされるけれど、こういう選挙の状況を見ていると、「こんな中で一体どうすればシステム全体が変わっていくんだろう?」というのは純粋に疑問だよね。
雄一郎:もちろん、国は「何もしていない」わけではないし、環境省の人たちはすごく優秀だし、政治家の中にも環境問題をきちんと考えている人はいると思う。若者の環境意識は高まっていると言われるしね。でも、レジ袋の有料化も遅かったし、全般的に遅れがちな日本の環境対策が「どうすれば急ピッチで変わっていけるのか?」と考えると、このままでは明るい展望は描いにくいのは事実だな。
麻子:選挙でも支持が広がらず、経済界からも反発があったりして、国民の多くが文句を言うばかりで協力的でないとしたら…大きな変化が生まれるはずもない。
雄一郎:そして、「それを選んでいるのは国民」という紛れもない現実…。
「影響が見えづらい」環境問題のむずかしさ
麻子:ありえるとしたら、コロナの時みたいに、「もうどうしようもないからこうします」みたいな、ああいう強制リセットみたいなパターンかな?
雄一郎:たしかに、コロナの時は通常では信じられないような規制が次々に成立して、もちろん状況が状況だったとは言え、「こんな不自由をみんな受け入れられるのか」ってある意味感心した…。
麻子:コロナ禍の経済活動の低下で、環境負荷の低減効果もあったと言われるけど。もちろん、経済的に打撃を受けた人もたくさんいるし、それを正当化していいわけではない。ただ、現状の停滞を見ていると、「あのくらいの強制力でもなければ、何も変化しないのではないか」と思わせられるところもある。
雄一郎:でも、環境問題の影響はどちらかと言うと「長期的で見えづらい」分、コロナのような「差し迫った感」が出にくいのがこれまたトリッキー。本当は先手を打ってどんどん対策を進めていかないと、特に気候変動問題なんて刻一刻と状況が深刻化して取り返しがつかなくなってしまうわけだけど、手遅れになって「本当に大変だ!」となるまでなかなかお尻に火がつきにくいというむずかしさもあるね。
「傍観者」にならないために
麻子:こうした現状を思うと、もちろん社会のシステムの変革は必要だし、政府にもがんばってもらわないといけないけど、単に「社会が変わらない」と言っている/思っているだけではしょうがない気がするね。
雄一郎:まずは「しっかり投票を」というところだけど、それもなかなか広まらない(今回の投票率は53%)。「結局は大きく変化しない現状」を国民が選んでしまっているという中、これはもう、ある意味「社会のせい」「政府のせい」とばかりも言っていられない。
麻子:「政府が変わらない」と言うと、あたかも「自分は悪くない」「責任は政府にある」みたいな図式になりがちだけど、実は「変わってくれない政府の原因は自分たち国民の側にある」という部分をもっと意識しなければ。
雄一郎:やっぱり、必ずしも「声高」でなくてもいいけど、何らかの形で「声を上げる」ことは必要だろうなぁ。そうでなければ、構造的にどうしても「傍観者」になってしまうから。
麻子:政府に「求める」ことも必要だけど、自分たちも「今のままでいい」というわけにはいかない、というところだよね。その辺りの意識がどうしたら上がっていくのか?
雄一郎:その辺りにこそ、実は「エコの本質が隠れているのでは?」という部分を後編でお話ししましょう。
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服部雄一郎 服部麻子
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