当連載では南米エクアドル在住の和田彩子さんに、現地の暮らしで見つけたゼロウェイストを綴っていただきます。遠い国の話ですが、私たちが幸せに暮らすためのヒントがあるはず。今回は、自分たちの手で作ったストローベイルハウスの排水システムやドライ・コンポストトイレについてお伝えします。
和田彩子さんのプロフィール
ナマケモノ倶楽部および株式会社ウィンドファームのエクアドルスタッフ。1999年にエクアドルをめぐるエコツアーに参加し、現地の自然とそれを守ろうとしている人々に感銘を受け2002年より長期滞在中。エクアドルでの環境保全やフェアトレードの取り組みを伝える傍ら、家族で「有機農園クリキンディ」を営みながら、手作りの暮らしを模索中。三児の母。
生活用水は「雑排水システム」でろ過!
生活用水は、雑排水システムでろ過して、土に還すようにしています。村の一般家庭では、排水はそのまま川に流すのですが、我が家ではとにかくそれを防ぎたかったのです。
上の写真は、雑排水システムの製造中の様子です。まず木屑や砂利が入った小さな箱型のタンクがあり、そこで油を取り除くようになっています。その後、上の写真の手前側と奥側のタンク二段階で、水をろ過します。まず奥側に排水が溜まって固形物が沈澱し、上澄みが手前側のタンクに流れます。
手前側のタンクには下から活性炭、砂、砂利、小石、石を順につめてあり、奥側のタンクから流れてきた上澄みをろ過し、土に浸透させています。汚水が完全に浄化されるわけではないですが、汚水が川へ流れるのを防ぐことができています。
水が浸透することで、タンクのまわりにはたくさんの花が咲きます。ここには私たちが食べるものは植えていませんが、在来種の花などがたくさん咲くことで、さまざまな鳥や虫たちが飛び交い、農園内の生物多様性を豊かにしています。
水を使わない、ドライ・コンポストトイレ
我が家では、水を使わないドライ・コンポストトイレを使っています。これは簡単にいうと、用を足した後、その上に土やおがくずなどの有機物をかけて堆肥を作るトイレです。それを1年以上発酵させて、最終的には木の肥料にしています。
ストローベイルハウスが完成する前に初めて作ったドライ・コンポストトイレは、匂いがどうなるか分からなかったので、お試しの意味で家の外に作りました。でも、家の外に用を足しに出るのが面倒すぎたので、ストローベイルハウスでは屋内に設置することに。
現地の一般的な水洗トイレは、流すのに1回6〜8リットルくらいの水を使っています。ただ、私たちは常に水不足に苦しむアンデスの村に住んでいるので、水を使わないトイレにしたいという思いがありました。下水道設備がない村なので、汚水が川にそのまま流れるのを避けたいという気持ちもありました。
それで選んだのがドライ・コンポストトイレです。このトイレには、水を使わない、上下水道の設備がいらない、汚水が出ない、肥料ができる、便器等の洗浄も必要ない、といった環境へのメリットがたくさんあります。途上国と言われる国々で頻繁に起こる断水の時に水の心配をしなくて済むのも、ありがたいです。
ただ、もちろん作って「はい、万事OK」というわけではありません。ドライ・コンポストトイレで一番大変なのは、常におがくずを用意すること。最初に屋外にコンポストトイレを作った時は、おかくずは材木屋に取りに行けば無料でした。ただその後、無料ではなくなり、さらに需要が上がったのか、最近は有料でもおがくずを手に入れにくくなってきました。入手できるのは、おがくずのような細かい木屑ではなく、鉋屑(かんなくず)のような大きいもの。しかも必要な時に、同じ場所で入手できるとは限りません。輸送料もかかるため、年間水道料金の50倍ものコストがかかってしまいます。おまけに、トラック一台分に鉋屑のような大きいものを自分たちで積み下ろすのも、ものすごい重労働。最近はこの作業を減らすべく、暖炉の灰を使ったり、発酵させた肥料や土を乾燥させてふりかけたりしています。そして鉋屑のような大きいものは、おがくずよりも発酵・分解に時間がかかります。また、住み始めてから10年経ち、子どもたちが成長して排泄量が増えて、溜まるスピードが早まってきまいた。ある程度計算してタンクを作ったつもりでしたが、思ってたいたよりも尿(水分)の量が多くなってきたことに加え、鉋屑や土はおがくずに比べると水を吸わないため、水分と乾燥有機物のバランスが悪くなってきています。使い始め当初は、発酵後はふかふかだった肥料が、今は泥状態です。
水分を少なくするために小と大を分けるという試みもしてみました。小を分けるろうとをつけ、それにホースを取り付けて、外に流すのです。でも私たちの場合は失敗でした。なぜなら、ろうとやホースに残った小水が使用後匂うので、水を入れて、流してやらなければならないからです。水を使わないコンポストトイレなのに、水を使って流すことに大いなる矛盾を感じたため、この方法が定着することはありませんでした。今は、小を足すときはバケツコンポストトイレ(バケツに便座をセットし、同様に乾燥有機物をかけ、バケツがいっぱいになったら、別の場所に溜め、バケツをからにして再度使う)を使っています。子どもたちは嫌がるので、使っているのは私だけですが(泣笑)。
何より今から心配しているのが、自分たちの高齢化です。コンポストトイレの運用には体力がいります。①おがくず的なものを用意する②それを家に持ってくる③排泄物にかける。④別の場所に移動するという流れになるのですが、特に①と④は、体力がないとできません。現時点でも重労働です。パーマカルチャーの専門家に、この問題について尋ねたこともあります。そうしたら「これは社会的な問題だ」と言われました。確かに昔は、農家では、発酵した糞尿を畑に使うという流れが、世代を超えて受け継がれていました。でも現代では、そうはいきません。子どもたちが同じ家に住むかどうかは分からないからです。自分の体を自分でうまく動かせなくなった時にどうなるのか、大きな不安があります。
地球1個分の暮らしを目指して
ドライ・コンポストトイレは課題もありますが、私は設置したことを後悔していません。自分たちが出す排泄物の責任を持つ。これを可視化し、体感することは「地球1個分の生活をする」上でとても大事だと感じるからです。ドライ・コンポストトイレも、雑排水システムも、試行錯誤を経て、余計なものを削ぎ落として、自分たちに合った方法を見つけていく過程があります。これが私にとって「答えを生きる」ということだと思います。そして、それを楽しんでいる私がいます。【関連ページ】家もトイレもDIY!南米エクアドルの村での暮らしをレポート【世界のゼロウェイスト】
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曽我 美穂
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