海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第70回目となる今回は、「“自然派育児”の実際②~いちばん大切にしたいこと」です。
「長い目で見る」
麻子:前編では、わが家が“自然派育児”をしてきた中で感じたこと、難しかった面などをお話ししました。後編ではより具体的に、どんな部分にいちばん注意してきたか、どんな部分をいちばん大切に考えてきたか、ということをお話ししてみたいと思います。
雄一郎:僕の場合は、現実は理想には程遠くて、なかなか思い通りにならないことばかりという中で、とにかく「長い目で見ればいい」と思うことで乗り越えてきた、というか、「やりすごしてきた」ような感覚はあるな。
麻子:「長い目で見る」というのは、むずかしいけど大事なんだろうな、と思う。たとえばごみの話で言えば、子どもたちが「今、出すごみ」を減らすよりも、「大人になってから出すごみ」を自分で減らせるようになることの方がずっと大切、ということだよね。
雄一郎:そうそう。小さいうちは親が誘導したとしても、これから先の人生のほとんどは「自分の意思」で生きるわけだからね。重要なのは親元を離れた「その先」。

振り返れば、庭でのんびり過ごせた時間は貴重だった
子どもに「ゆだねる」
麻子:でも、実際問題、子どもたちが大人になった時、「本当にごみを減らすようなエコマインドな大人になるか?」と言ったら、そんなことはだれにもわからないし、それこそ強制はできないよね…そこは本人の人生だから。
雄一郎:親の願いとしては、もちろん「地球市民として、環境意識をしっかり持った大人になってほしい」ところだけどね。でも、そうは言っても、子どもの生き方や思想をコントロールするわけにはいかない。当たり前のことだけど、親とは別人格だもの。
麻子:とにかく「押し付けないように」というのは注意したいと思ってきた。親として、普通にしているだけで「ナチュラルに押し付けてしまう」という確信があったから。「気を付けすぎる」くらいがちょうどいいのかもしれない。
雄一郎:だけど、「子どもの人生だから」とゆだねることで、同時に親の方も「肩の荷が下りる」ような気もするよね。「不完全な現状を肯定できる」みたいな、不思議な解放感。子どもたちを「信じる」ということだよね。
麻子:親ができるのは、子どもたちに「材料を提供する」こと。まさに、“種まき”の部分だよね。これは親にとってもすべてが成長と学びのプロセスだな、と感じます。

自然が近いのは田舎の強み
本人が「知り、選べる」
雄一郎:僕にとっては、本や映画がこよなくたのしい“種まき”だった。おもしろい本や映画は、理屈抜きにおもしろいから。子どもたちは純粋に娯楽としてたのしんでくれる。親がくどくど説明するよりもずっと効果的だしね(笑)。
麻子:環境や社会について目を開かせてくれるような本や映画は最近すごく充実してると思う。しかもおもしろい!私は「子どものペースで読んだり観たりする」のがあまり得意じゃなくて、ほとんどやらなかったけど…(苦笑)。雄一郎さんが子どもたちとウキウキワクワク過ごす光景は、すばらしかったです!
雄一郎:「とりあえず観るだけ=知るだけ」というのは本当に気楽でいい。もちろん、それが「アクション」につながれば理想的だけど、親の押しつけみたいなのはやっぱりイヤだから。「本人が知り、自分で選べる」状況をつくるのが親の役割かなと思うことにして…。
麻子:けど、子どもに「こうしてほしい」「これはしないでほしい」と伝える際も、「なぜか?」という理由がきちんとある方が伝わりやすいよね。「理由を知る」のは大事。逆に子どもに反論されて、親の方が「なるほど、たしかに」となることもあって、それはそれでおもしろい。
雄一郎:納得してくれるかどうかは別問題だけど、「一応理由があるんだな」と思ってもらえるのは大きいよね。「親には親の考えがある」と知ってもらって、いろいろな見方を知って、「あとは自分自身で判断する」という風になってくれたら、それがいちばん理想だな。
とにかく「たのしむ」
麻子:私はとにかく「たのしいのがいちばん」と思っていて。たのしく料理したり、たのしくおやつを食べたり、たのしく手づくりしたり、一緒においしいお店に行ったり…。その「たのしい感じ」を一緒に体験できたらそれだけでいい。

料理のたのしさは知ってもらえた気がする
雄一郎:それ、本当に賛成! 同じことをしていても、雰囲気がポジティブだとすべてがいい循環になるよね。まちがっても「あれもこれもダメ」「がまんの連続」みたいにはなりたくない。
麻子:こちらが「盛り上げよう」と思っても、子どもが必ずしも乗ってくるわけではないから、「とりあえず親がたのしむ」。「大人って、自由でいろいろたのしいんだな」って受け取ってくれたらうれしいな。そして、自分自身も自由にたのしく生きていってほしい。
雄一郎:マイクロプラスチック汚染とか、気候変動とか、環境問題は実際深刻ではあるけど。でも、その理解とは別に、「とにかく日々を幸せに生きる」ということは親として伝えたい部分だよね。「そうしなさい」ということではなくて、「そうするとたのしいよ!」というメッセージ。
麻子:「自分にはできることがある」「いいと思うことを選べる」というポジティブな思いを持てる大人になってくれたらなぁ、というのは思うよね。それもまた親の勝手な押し付けかも…と思いつつ。
雄一郎:つくづく、子育ては一寸先は闇(笑)。正しさも、正解もなくて、試行錯誤の連続。一瞬一瞬を味わっていくよりほかないなと思います。できるだけたのしく!
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服部雄一郎 服部麻子

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