海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第69回目となる今回は、「“自然派育児”の実際①~エコな子育てをしてみて思うこと」です。
たのしかった自然派子育て
麻子:今回は、「自然派育児の実際」ということで、自然志向の子育てについて思うことを話してみましょう。
雄一郎:わが家は、神奈川、海外、京都、高知と引っ越しを重ねながら、3人の子どもを育ててきました。今年で足かけ20年。
麻子:いわゆる「オーガニック」とか、「エコ」とか、“自然派”と言われるような価値観は常にベースにあった気がします。
雄一郎:その「よさ」も「たのしさ」も、そして「アンバランスさ」や「リスク」も、わが家はどちらも体験してきた感があるよね。順にお話ししていきましょう!

インドに行った頃はまだ子どもは2人。このあと3人目が生まれました
子どもが小さかった頃
雄一郎:子どもが本当に小さかった頃は、まず、「どんなものを食べさせるか」? なるべく健康的なものがいいと思って、オーガニックだったり、穀物菜食だったり、手づくりおやつだったり…。いろいろ張り切ってたよね。

思い出いっぱいの台所
麻子:おむつも普通に「布おむつ」。病気の時のお手当てなんかも、自然療法的なことを試してみたり…。色々試しておもしろかった!
雄一郎:テレビも置かなかったし、持ち物もなるべく余計なおもちゃに囲まれないように意識してみたり…。
麻子:きっと「一般的な家庭」とはいろいろずれていただろうな~。でも、赤ちゃんから未就学の段階では、それほど難しさを感じる場面はなかった気がする。子どもたちもまだ「よそと比べる」みたいな視点はないから…。
雄一郎:小さいうちは、どうしても「親が与える」「親が決める」という色合いが強くなるよね。だから、“自然派”的な親の趣味も通りやすい。現代は「あまりに消費主義的」ではあるから、そういったものの影響は少なめの「健やかな子育て」ができたらいいな…という意味では、自分たちとしてはしごく真っ当な展開ではあった。
麻子:でも、子どもたちがもう少し大きくなってくると、やっぱりそうシンプルではなくなってくるよね。

畑は最高の遊び場だった
大切にしたい「子どもの気持ち」
雄一郎:子どもたちに「意思」が出てきてからは、とにかく「(親の主義・方針は)マイルドにマイルドに…」と思い続けてきた気がするな。
麻子:子どもたち自身の「ほしい」「食べたい」「やってみたい」という気持ちを抑えつけるわけにはいかないから。「よかれ」という思いが、反発心や「いやな記憶」を生んでしまったら、なんというか、本末転倒だし。
雄一郎:その辺は“自然派育児”に限らず、あらゆる子育てに共通のテーマとも言える。やっぱり、「全部子どもの思い通り」というわけにはいかないからね。砂糖やジャンクフードを食べたいだけ食べるわけにはいかないし、ゲームを好きなだけやってよいわけでもない。ほしいものを何でも買ってもらえるわけでもない。ただ、“自然派育児”の場合は、「ほかの家ではいいのになんでうちだけ?」という部分が入ってくるのが厄介なところ。
麻子:よそのお宅ではわりに「袋菓子食べ放題」とか、「プラスチック製品当たり前」とかはあるからね。どうしても「何でうちだけダメなの!?」という構図にはなりやすい。
雄一郎:その辺りは本当にむずかしいバランス…
麻子:「みんながそうしているんだから」ではなく、自分たちなりに納得した子育てをしたい。でも、子どもには子どもの思いがあるわけで…

一緒に漬けた色とりどりの梅干し
「制約」にしない工夫
雄一郎:僕としては、せっかくわが家に生まれてきてくれた子どもたちに、「エコな家庭に生まれたのが運の尽き…」みたいになってほしくなかった(笑)。だから、とにかく子どもが「制約」と感じないように、その辺はできる範囲で工夫してきたつもり。
たとえば、オーガニック系ではあっても、なるべくジャンキーな趣向の食べ物を取り入れてみるとか。ふだんはなかなか安い使い捨て製品みたいなものを買ってあげられない代わりに、いざ買うとなったら子どもが目を輝かせそうなちょっと値の張るものを買ってあげるとか。もちろん、それで子どもが完全に満足したと言うつもりはないけど。
麻子:工夫しながら「もしかして私たち、なんだかややこしいことしてる?」と思うこともけっこうあったけど(笑)。でも、とにかく不完全で未熟な親が試行錯誤してるんだからしょうがない。そもそも「こどもが完全に満足」なんてことはありえないし、「それなりに努力する/意識する/工夫する」くらいで上々なんじゃないかな、とは思うよね。親と子供のニーズのバランス…まぁ正解は本当にない。
雄一郎:一方で、時代が変わって、ずいぶん家庭の様子も多様化したというか、親世代の時ほどには「よその家とちがう」ことがダメージにならなそうだな、と感じた部分もある。
麻子:たしかに、「テレビがない」ことは、私たちが子どもの頃は致命的なダメージだった気がするけど、もはや娯楽も多様化して、「みんなが同じ番組を観ている」という時代ではなくなったみたい。うちの子たちも特に問題なかったようで、その辺は拍子抜けだったけど。いや、もしかして本当はイヤだったのかな!?
雄一郎:どうだろう(笑)? ただ、「テレビがない」のは、変に消費欲をかき立てるような雑音にあおられないということで、個人的にはやっぱりすごくよかったような気がしてる。
麻子:バランス問題ではあるけど、多すぎる情報を減らすのも必要かな、と思うよね。たとえばショッピングモールに子どもを連れていけば、いろんなものをほしがったり食べたがったりするのは当然なわけで。連れていかなければ、まあそうならずに済む(笑)。
雄一郎:後編では、わが家がどんな部分に注意してきたのか、どんな心構えを大切にしてきたのか、より具体的に掘り下げてみましょう!
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服部雄一郎 服部麻子

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