当連載では南米エクアドル在住の和田彩子さんに、現地の暮らしで見つけたゼロウェイストを綴っていただきます。遠い国の話ですが、私たちが幸せに暮らすためのヒントがあるはず。今回は「自分たちの手でストローベイルハウスを作り上げるまで」の話です。
和田彩子さんのプロフィール
ナマケモノ倶楽部および株式会社ウィンドファームのエクアドルスタッフ。1999年にエクアドルをめぐるエコツアーに参加し、現地の自然とそれを守ろうとしている人々に感銘を受け2002年より長期滞在中。エクアドルでの環境保全やフェアトレードの取り組みを伝える傍ら、家族で「有機農園クリキンディ」を営みながら、手作りの暮らしを模索中。三児の母。
ストローベイルハウスとは
こんにちは、和田彩子です。私は6年半かけて、ストローベイルハウスを自分たちの手で作りました。そして、完成した2013年から現在まで家族5人でこの家に暮らしています。今回は、この家を作るまでの話をお伝えします。
ストローベイルハウスは、直方体に圧縮したわらのブロックを積んで壁をつくり、土を塗った家です。すべて自然由来の素材でできているので、環境に負荷をかけないゼロウェイストに近い建築として世界各地に広がっています。
ストローベイルハウスは神奈川県や富山県など日本各地にもあり、ストローベイルハウスの建築を得意とする建築会社もあります。
【参照ページ】日本ストローベイルハウス研究会
我が家の敷地は1ヘクタール
ストローベイルハウスの話をする前に、我が家の敷地について簡単に説明します。
我が家の面積は1ヘクタールちょっと(=野球場1面分ほど)です。そこに、以下の建物を自分たちの手で作りました。
- 今回ご紹介するストローベイルハウス(母屋)
- 東屋(屋根をふいただけの簡素な小屋)※詳しくはこちら
- グリーンハウス
これらの建物に加え、敷地内には畑、果樹、森(と私たちが呼んでいるところ)、鶏舎、貯水池などがあります。
「ストローベイルハウス」を選んだ理由
私たちは、以下の理由から、母屋としてストローベイルハウスを作ることを決意しました。
- ストローベイルは断熱効果が高く、温度・湿度を調節する特徴があり、年間を通して少し寒いここにぴったりだから
- 近隣で村のお祭りがよく行われるので、ストローベイルハウスの遮音効果が高い点も魅力だったから
- 材料が比較的に手に入りやすい(と思い込んでいた)から
ただ、雨に弱いので軒を大きめに作る必要があり、当初の予想より屋根がずっと重く、高くなったことは想定外でした(涙)。
わらのブロックで壁づくり
最初に木材を使って、柱などを建てました。木材は近隣に生えている木を利用しました。(詳しくはこちら)
壁用のストローベイルは、大麦やオーツでできたものを近隣で買いました。重視したのは、密度の高さ。密度が低いとベイルにならず、持つとわらがバラバラになってしまうからです。当時は1個1.25ドルで、合計200個買ったのですが余りました。
なお、大変だったのはスケジュールの調整です。大麦やオーツの収穫のタイミングと、家を建てるタイミングを合わせることが大変でした。
だんだん、家の壁ができてきました。工夫したのは、軒の長さです。ストローベイルは絶対に濡らしてはいけないので、雨が当たらないように軒をかなり長めにとりました。
漆喰も地産地消で
壁のわらの表面にぬる漆喰は、全て地域で採れるものを使用。「トゥナ」の汁、灰、わら、土などを混ぜて作りました。
「トゥナ」はサボテンの一種で、水につけるとネバネバが出るので、それを接着液として使います。上の写真は、そのサボテン水を濾しているところです。
接着液を粘土質の土、灰、ストローベールの残りを切り刻んだもの、乾燥した馬糞を合わせたものに混ぜ、漆喰として壁に塗りました。
レンガも手作り!
室内のパーテーションなどで使う日干しレンガも、地下室を掘った土で自作しました。
完成!
その後家の内装を少しずつ整えて、家を完成させました。勉強しながら、試行錯誤とトライアンドエラーを繰り返しながら、住めるようになるまで、6年半かかりました。
一つひとつに長い時間がかかり、くじけそうになったこともありました。何とか住めるようになったときは本当に感無量でした。実際、ドアもちゃんとついていないのに我慢できなくて住み始めてしまうほど、待ちに待った家でした。簡単ではない道のりで、人生をかけたくらいの勢いで、取り組んだ家です。
これが最近の我が家の写真です。住み始めて10年以上経ちましたが、今も快適に暮らしています。
【関連ページ】家もトイレもDIY!南米エクアドルの村での暮らしをレポート【世界のゼロウェイスト】
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曽我 美穂
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