わが家流「雑食のまま肉をムリなく減らす術」ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第39回目となる今回は、「わが家流「雑食のまま肉をムリなく減らす術」」です。

基本のスタンス

麻子前編ではわが家の「肉食・菜食遍歴」についてお話ししました。今回は、雑食に戻ったわが家が、今どんな風に肉を減らす工夫をしているのか、お話ししてみたいと思います。

雄一郎:うちは今、主に自然派の生協で、一般のスーパーより配慮された国産の肉を買っています。使う量は、1週間にせいぜい1~2パック。真ん中の娘が寮に出て、いちばん上の子も平日は寮なので、平日は3人家族、週末は4人家族。

麻子:牛肉はほぼ買わないよね。鶏肉ばっかり。

雄一郎:環境負荷の観点からも、経済的な観点からも、牛肉はほぼ買わない。いちばんよく買うのは「親鶏」のひき肉。あとは時々、鶏むね肉や豚ひき肉。その繰り返し。

親鶏のひき肉は、冷凍のものをまとめ買いしています

麻子:ふつうの鶏肉は「若鶏」で、生後わずか1か月半~2カ月でどんどん太って肉にされるブロイラーなんだけど、「親鶏」は卵を産む鶏で、2年くらいして卵の数が減ってきて処分される鶏の肉なんだよね。

雄一郎:そう、だから、肉がすごく硬くて、一般的には市場価値がとても低いみたい。でも、ひき肉にしてしまえば、硬いのは気にならないし、味わいはむしろいい。ふつうのやわらかい鶏肉よりもおいしいと思うし、「まず卵を産んでもらってから、ありがたく肉をいただく」のは、より“あるべき姿”に近い気がしてる*。

※とは言え、それで完全によしと安心できるわけでもなく、卵を産めないオスがひよこのうちにまとめて殺処分されていたり、メスもろくに身動きもできない狭い鶏舎で飼われている農場がほとんどだったり、ストレスによるつつき合いを防ぐために日本の8割以上の鶏がくちばしを切断されているという調査結果があったり・・・思わず「歪んでいるな…」と感じてしまうような実態が畜産業界にはいろいろあるようで、そういった構造への問題意識から肉食を避ける人が増えています。

麻子:では、わが家の具体的なアイディアに移りましょう!

庭で鶏を飼うことで、卵の一部自給も実現。「動物のいる暮らし」のよさも実感しています

工夫1:肉を“調味料”のように位置づける

麻子:まずはこれ。肉を「調味料」的に生かす。「肉そのものを味わう」というよりは、味わいを出してくれる「だし」のように使うイメージですね。

雄一郎:たとえば、「肉ちょっぴり、野菜たっぷりのミートソース」とか、「ベーコンほんの少しの野菜スープ」とかね。どちらも、肉が少し入っているだけでとってもおいしい。そんなにたっぷりでなくても、「ちゃんと肉料理」になる。

麻子:煮込みやスープは、肉100gにつき野菜1キロ、とか。「肉を焼いてそのまま食べる」みたいなことは、うちはほとんどしないよね。そんなことすると、ものすごくたくさん肉が必要になってしまうから。

「肉ほんのちょっぴり」の煮込み。ご飯にのせてどんぶりにしたり、パスタソースにしたり、トルティーヤ風にくるんで食べたり。

雄一郎:たまには子どものリクエストに応えて「鶏のから揚げ」とかすることもあるけどね。何カ月かに1回、めちゃくちゃ貴重なご馳走として(笑)。でも、基本は、鶏肉ならまず、ゆで鶏にして、①身の部分は割いてサラダにしたりして1~2食、②スープはほかの野菜と一緒に煮込んでさらに1~2食、みたいな感じとか。そうすると、1回の肉で何回分ものご飯になるから、とても効率的&経済的。

麻子:この前の「ソーセージを入れた煮込み」もおいしかった!4本だけ入れたソーセージは子どもたちに全部あげてしまって、大人は野菜の部分だけ食べて、翌日は全員野菜の部分だけ(笑)。

雄一郎:ちゃんとソーセージのおいしい煮込みの味になってたよね??

麻子:なってた、なってた。そして子どもたちは満足してた(笑)

工夫2:「牛より豚」「豚より鶏」「鶏より卵や親鶏」・・・

麻子:お次はこれ。肉の「種類」をなるべく「環境負荷が軽い方向」に引っ張ります。

雄一郎:「安い方向に」とも言える。だから、家計にとっても合理的。うちはとにかく鶏肉をフル活用。コロッケも「合挽き」ではなく「鶏ひき肉」で。麻婆豆腐も「鶏ひき肉」で。カレーも「鶏ひき肉」で(笑)。ふだんのご飯としては、全然おいしいよね?子どもたちも毎回大喜び。「合挽きでなくっちゃ」「豚ひきでなくっちゃ」「塊肉でなくっちゃ」っていうのは、、ただの思い込みな気がするな、僕は。

麻子:あと、これはたまたまだけど、自然派の生協で売っている冷凍食品の餃子「神山鶏のぱくぱく餃子」も、豚ひき肉ではなく鶏ひき肉なんだよね。

雄一郎:さっぱりしてて、とってもおいしい。一般的な冷凍食品と違って、素材や調味料も安心な優れものなので、実はわが家の常備品です。一度ほかの餃子も買ってみたけど、子どもたちもみんな「ぱくぱく餃子の方がいい!」って。真ん中の娘なんて、帰省中に「何の料理食べたい?」って聞いたら、「ぱくぱく餃子!」って(苦笑)。もはや「おふくろの味」状態。哀しい~。

麻子:私の最近の大ヒットは「鶏つくねの南蛮漬け」。ふつうはもちろん、アジのから揚げとか鶏のから揚げだけど、鶏ひき肉に豆腐をたっぷり混ぜたつくねでつくったら、おいしい!

鶏つくねの南蛮漬け

雄一郎:この夏のヒット料理だったよね。ちょうど先日、こちらの記事で麻子さんの「南蛮漬けのもと」のレシピが公開されているので、よかったらどうぞ!

豆腐や玉ねぎやパン粉などで倍以上にかさましした”鶏つくね”

工夫3:代わりに昆布だしや椎茸だしを入れる

雄一郎:あと、僕がよくやるのが「肉の代わりに昆布だしや椎茸だしを使う」。

麻子:たとえば、野菜スープなら、だし+オリーブオイルのスープにしても、さっぱりしてとてもおいしい。

雄一郎:肉なしの「だしカレー」とかね。

麻子:あと、玉ねぎをじっくり蒸らし炒めすると、うまみが出るので、「だしなし」でもいけたりする。

雄一郎:うちの大ヒット「肉なし肉じゃが」も、多めの玉ねぎの甘みの成せる技だね。僕がすごく気に入ってるのは、やっぱり肉の調理って、まな板が汚れたり、生肉がついたパッケージが汚かったり、衛生に気を使わないといけない部分があるけど、「肉なし料理」にはそれがないからいい。

麻子:「肉がなくてもつくれる」という気軽さもいいよね。買い置きが足りなくなっても全然大丈夫。安上がりだし。

雄一郎:「肉ならではのおいしさ」はもちろんある。そして、ソイミートとか、本格的なヴィーガン料理もとってもおいしい。でも、わざわざ身構えて「特別な菜食料理」をつくらなくても、「ちょっと量を減らす」くらいだったら、ラクラクおいしく工夫できるなぁと実感してます。

麻子:肉食問題の問題のひとつは「量が多すぎ」だと思うから、まずは量を減らすところからはじめるのが大事。「食べない」という選択も、もちろんありだけど、「食べつつ、なるべく環境負荷が低い方向に」も大いにあり。家族の好みもいろいろあるし、気軽でかんたん、だれも我慢せずに、いつの間にかそれが普通に…が気に入ってます。

【⬇︎前編はこちら】

わが家の肉食VS菜食事情ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola