当連載ではエコライターの曽我 美穂が海外在住の方に、その土地ならではのゼロウェイストな試みをお聞きします。今回は、以前もレポートしていただいた、韓国の水原(スウォン)市在住の鈴木あゆみさんに、現地のごみ処理事情をレポートしていただきます!
鈴木 あゆみさんのプロフィール
2012年にパートナーの祖国である韓国に移住。日本人唯一の理事として韓国のハンサリム生活協同組合で働いている。韓国自然の友研究所国際交流委員。ナマケモノ倶楽部(日本)。二児の母。Instagram:@ayuhachidori
韓国のごみ処理事情。生ごみ回収率は90%!
実は、韓国の生ごみ回収は、世界から注目を集めています。というのも、韓国では生ごみの90%近くが回収されているのです!回収した生ゴミは堆肥化、動物用飼料、バイオマスなどに再利用されています。
よく見かけるのは、上の写真のような生ごみ回収機。高層アパートなどの集合住宅の多い韓国では、こういった生ごみ回収機が多く設置されています。私が住んでいる水原市のマンションでは、このような生ごみ回収機が棟ごとに設置されています。
各家庭から出た生ごみをこの機械に投入して、定期的に市の職員がトラックで回収しに来る、というシステムになっています。
戸建ての場合は、生ごみ専用ビニール袋を購入し、それに入れて捨てるシステムが主流でしたが、近年は集合住宅同様、町の一角に、生ごみ回収機が設置されるようになっています。
生ごみを捨てる時は、専用の「REID」カードを利用
生ごみを捨てる際に必要なのが、このRFIDカード。各家庭の情報が搭載されていて、生ごみ回収機を利用するときにカードを機械に当てると蓋が開き、生ごみの計量をし、またカードを当てると蓋が閉じるという仕組みです。機械に蓋がついており、週に2〜3度生ごみ回収車が回収に来るので、夏でもまわりに臭いが漏れることは、あまりありません。月末には各家庭の生ごみ排出量と処理費用のお知らせが市から届きます。なお、処理費用は各家庭で負担しています。
分別を徹底し燃やすごみを減らす!韓
日本の「燃やすごみ」にあたる「一般ごみ」は、近所のスーパーやコンビニで購入したごみ袋に入れて、ごみ集積所に捨てに行く仕組みです。(5、10、20、50、75リットルの袋がそれぞれ、1枚あたり150、300、600、1500、2250ウォン)
ごみ分別を徹底すると一般ごみが格段に減るので、我が家の場合だと1週間に10リットルのごみ袋を1つ出すか出さないかくらいです。
一般的な家庭では、使い捨て容器に入った出前を利用することが多く、ごみの量がかなり増えるようです。しかし、我が家では出前をほとんど利用せず、テイクアウトする際も自分たちで容器や鍋を持参し、エコバッグで持ち帰っています。このため、ごみの削減に貢献できていると思います。詳しく知りたい方は、以下の記事を読んでみてください。
【関連記事】【世界のゼロウェイスト:韓国編】韓国のゼロウェイストな暮らしのアイデアを現地レポート!
韓国のごみ処理は、とにかく分別を徹底!
分別ごみは、集合住宅の場合は常設の分別ごみ回収所があるところと、週に1度、駐車場の一角に分別ごみ回収所を設けているところ(上の写真)があります。我が家では、整理上手な夫の提案でビニール、プラスチック、紙ごみの3種類を分別する自立型タイプのバッグを購入して使っています。韓国ではこの3種類分別のバッグを使っている家庭が多いようで、回収所に行くと同じようなバッグを持ってくる人をよく見かけます。
分別ごみの主な内容は、以下のとおりです。
- ビニール
- ペットボトル
- プラスチック
- びん
- 缶、鉄屑
- ガラス、陶器の割れ物
- 発泡スチロール
- 段ボール、紙類
- 電池
- 古着
- 一般ごみ (分別ごみステーション外)
- 使用済み家電 (分別ごみステーション外)
また、私が住んでいる水原市は「2030資源循環を通した炭素中立実践」というプランをたて、市民に呼びかけています。具体的には、
- 燃やすごみ、生ごみ、リサイクルごみ、大型廃棄物の削減
- 事業所の廃棄物削減
- 下水及び糞尿の排出削減
の3つの分野で、日常的に廃棄物の減量を行い、温室効果ガスの削減、エコシティ水原を目指すとのことです。
我が家の近くのごみ分別場所
我が家の近くの分別場所は、こんな感じです。
これは、古着回収ボックスです。24時間いつでも回収しており、マンションなどの集合住宅の場合、警備室の隣や一般ごみ回収所の隣に常設されています。入れてよいのは、古着、靴、毛布、刺し縫い布団、カーテン、カーペットで、入れていけないものは、わた布団、枕、座布団、ローラースケート、車輪付きカバン、靴の片方だけ、など。 使用済み乾電池の回収ボックスも、24時間回収しています。マンション警備室横、学校の校門そば、ごみステーションのそばなどに設置されています。 使用済み家電の回収所もあり、マンションなどの集合住宅の場合、24時間回収しています。ただし、この袋に入らない大きい家電の場合は、処分するためのシールをスーパーやコンビニで購入して、付着してから廃棄する必要があります。 近所にある、新しいマンションには常設の「再活用用品保管所」があります。生ごみ回収やごみ分別が進んでいる韓国に住んでみて
韓国も以前は生ごみの分別をせず、一般ごみと一緒に捨てており、ごみの排出量も多く、汚臭がひどかったといいます。しかし、ごみ従量制、生ごみ回収システムを開始してからは、ごみ捨て場の汚臭が格段に減り、ごみ全体の排出量も減ったとのこと。また、週に1回の資源ごみ回収の時に、項目別にごみを分けることによって、以前はすべてごみとして処分されていたものが、再利用できる貴重な「資源」と「ごみ」に分けられています。
韓国の環境部の発表では、現在、韓国で回収されたごみの86%が、資源として利活用されているとのことで、国を上げてごみの回収と分別が進んでいる様子が見てとれます。
【参考サイト】Ministry of Environment(環境部)公式
しかし、最近、生ごみを再利用して作られた家畜用飼料について、臭いなどの理由から利用を拒む家畜農家が増えているそうです。再利用も大切ですが、持続可能な環境や社会を築くためには、まずごみそのものを減らすことが最も重要です。
そのためにも、ゼロウェイスト生活の第一歩として、ごみの分別をさらに強化してみませんか?
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曽我 美穂
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